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第十四章 天女降臨
第十四章③
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美しいと褒めながらも冷ややかな瞳の色は変わらなかった。
「瑶音、その辺にしておいてくれ。行こう。国民が待っている」
扉の向こうで大きな太鼓の音がして、わあっと外にいる人たちから歓声が上がるのが聞こえる。太鼓の音が止まったら、蒼暉が顔を上げ蓮花に手を差し出した。
「手を」
相手は大国の皇子で断ることなどもちろんできず、指先だけをそっと預ける。
蒼暉、正妃である瑶音、蓮花が姿を見せると一際大きな声が上がる。白蓮皇国の宮廷の前庭は彩鳳国のものとは比べ物にならないほど広い。そこにびっしりと人が集まっていた。
「これほどの人が天女を見に来ているんだ。蓮花、手ぐらい振ってやれ」
蓮花の喉がごくっとなる。言われたままに軽く手を振ると、わああっとさらに声が大きくなった。その迫力に圧倒される。
「ついに白蓮皇国に天人が現れた! 彼女はあいにく口を利くことができないが、その力は本物だ!」
蒼暉が話し始めると、その声を聞こうと前庭のたくさんの人たちがだんだん静かになり、しん……とする。
「その不思議な力をここで公開する!」
力強い声に集まっている人たちが大きな声を上げる。
──一体どうするつもりなの!? 私に不思議な力なんてないのに……!
蒼暉が合図をすると官吏がうやうやしく鳥籠を持ってくる。その鳥籠の中には死んだ鳥が入っていた。
目を見開いて蓮花は後ずさる。けれど、強引に蒼暉がその腕を掴んだ。
「ここにいろ」
低くて逆らえない強さを持った声だ。
集まっている群衆の方を見ると、鳥籠を掲げた。
「ここに入っているのは命を失った鳥だ」
蒼暉はその鳥籠に布をかぶせると、蓮花の手をかざすようにした。一体どうなるのか分からなくて、蓮花はされるがままになるしかできない。
そして蒼暉がその布をみんなに見えるように大きな仕草で外すと鳥は元気に羽ばたいて、開けられた籠から元気に空へと飛び立つ。その光景を見た群衆はさらに興奮状態になっていた。
笑みを浮かべ抑えるように蒼暉が片手を群衆に向ける。蓮花の服の袖を手に取り口づけた。
「天女、万歳」
天女万歳! 天女万歳! という声が前庭に満ちる。
──死んだ鳥じゃない! あの薬香!
ちょうどこの時間に目覚めるように調整された薬香を嗅がされた鳥だったのだろう。そうとは知らなければ、まるで蓮花が生き返らせたように見える。
あの薬香は市民に出回るものではない。おそらくは皇族しか扱えないはずだ。
嘘だと言いたい。こんなことは欺瞞なんだと大きな声で言いたかった。声を奪われていることが悔しく、蒼暉の読み通りに事態が進んでいくことに我慢できない。
蓮花はキッと強く蒼暉を睨みつける。気にもしないで蒼暉はふっと目元に涼し気な笑みを浮かべただけだ。睨んだって、もしも声が出ていてなじったとしても、蒼暉はきっと一切動揺なんてしないだろう。
我慢できないからといって、今の蓮花にはどうすることもできなかった。
部屋に戻ると昨日と同じように部屋に菓子が用意されていた。
女官がお茶を淹れてくれたが、蓮花は口をつけたくない。何が混ぜ込まれているか分かったものではないからだ。
女官たちはきっと悪い人たちではないだろう。だからといって蓮花を彩鳳国へ帰してくれるとは思えなかった。
「蓮花さま、お疲れになったでしょう? お茶はいかがです?」
蓮花は首を横に振る。女官は困ったように首を傾げた。
「お菓子はいかがです?」
それにもゆっくりと首を横に振る。
「仕方ないわ。蒼暉さまをお呼びして」
蓮花は必死で首を横に振るが、女官のひとりは外へ呼びに出てしまった。
「瑶音、その辺にしておいてくれ。行こう。国民が待っている」
扉の向こうで大きな太鼓の音がして、わあっと外にいる人たちから歓声が上がるのが聞こえる。太鼓の音が止まったら、蒼暉が顔を上げ蓮花に手を差し出した。
「手を」
相手は大国の皇子で断ることなどもちろんできず、指先だけをそっと預ける。
蒼暉、正妃である瑶音、蓮花が姿を見せると一際大きな声が上がる。白蓮皇国の宮廷の前庭は彩鳳国のものとは比べ物にならないほど広い。そこにびっしりと人が集まっていた。
「これほどの人が天女を見に来ているんだ。蓮花、手ぐらい振ってやれ」
蓮花の喉がごくっとなる。言われたままに軽く手を振ると、わああっとさらに声が大きくなった。その迫力に圧倒される。
「ついに白蓮皇国に天人が現れた! 彼女はあいにく口を利くことができないが、その力は本物だ!」
蒼暉が話し始めると、その声を聞こうと前庭のたくさんの人たちがだんだん静かになり、しん……とする。
「その不思議な力をここで公開する!」
力強い声に集まっている人たちが大きな声を上げる。
──一体どうするつもりなの!? 私に不思議な力なんてないのに……!
蒼暉が合図をすると官吏がうやうやしく鳥籠を持ってくる。その鳥籠の中には死んだ鳥が入っていた。
目を見開いて蓮花は後ずさる。けれど、強引に蒼暉がその腕を掴んだ。
「ここにいろ」
低くて逆らえない強さを持った声だ。
集まっている群衆の方を見ると、鳥籠を掲げた。
「ここに入っているのは命を失った鳥だ」
蒼暉はその鳥籠に布をかぶせると、蓮花の手をかざすようにした。一体どうなるのか分からなくて、蓮花はされるがままになるしかできない。
そして蒼暉がその布をみんなに見えるように大きな仕草で外すと鳥は元気に羽ばたいて、開けられた籠から元気に空へと飛び立つ。その光景を見た群衆はさらに興奮状態になっていた。
笑みを浮かべ抑えるように蒼暉が片手を群衆に向ける。蓮花の服の袖を手に取り口づけた。
「天女、万歳」
天女万歳! 天女万歳! という声が前庭に満ちる。
──死んだ鳥じゃない! あの薬香!
ちょうどこの時間に目覚めるように調整された薬香を嗅がされた鳥だったのだろう。そうとは知らなければ、まるで蓮花が生き返らせたように見える。
あの薬香は市民に出回るものではない。おそらくは皇族しか扱えないはずだ。
嘘だと言いたい。こんなことは欺瞞なんだと大きな声で言いたかった。声を奪われていることが悔しく、蒼暉の読み通りに事態が進んでいくことに我慢できない。
蓮花はキッと強く蒼暉を睨みつける。気にもしないで蒼暉はふっと目元に涼し気な笑みを浮かべただけだ。睨んだって、もしも声が出ていてなじったとしても、蒼暉はきっと一切動揺なんてしないだろう。
我慢できないからといって、今の蓮花にはどうすることもできなかった。
部屋に戻ると昨日と同じように部屋に菓子が用意されていた。
女官がお茶を淹れてくれたが、蓮花は口をつけたくない。何が混ぜ込まれているか分かったものではないからだ。
女官たちはきっと悪い人たちではないだろう。だからといって蓮花を彩鳳国へ帰してくれるとは思えなかった。
「蓮花さま、お疲れになったでしょう? お茶はいかがです?」
蓮花は首を横に振る。女官は困ったように首を傾げた。
「お菓子はいかがです?」
それにもゆっくりと首を横に振る。
「仕方ないわ。蒼暉さまをお呼びして」
蓮花は必死で首を横に振るが、女官のひとりは外へ呼びに出てしまった。
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