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第十四章 天女降臨
第四章④
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しばらくすると、平服に着替えた蒼暉がやってくる。眉間にシワを寄せていた。
「飲食をしなかったら死ぬぞ。それが分かっていたから赫州国でもしっかり食べていたんだろう」
──だって、覇玄さまは飲み物に口を利けなくするような薬なんて入れなかったもの。
むっとして蓮花は顔を横に向ける。
「分かった。私が一旦口をつける。それなら食べるな? 飲み物くらいは飲んでくれ」
蓮花は食べることより脱水が怖いことを知っているが、蒼暉もどうやら知っているようだった。
女官が淹れたお茶を自分の口に含むと蓮花の首の後ろを掴んで、口移しで飲ませようとする。蓮花はそれに気づいて慌てて蒼暉の身体を押した。
「なんだ、いいのか? けれどこれで問題ないことは分かっただろう」
口移しさせられたのではたまらない。蓮花は急いで茶碗に残っていたお茶を飲んだ。
それを見て蒼暉が安心したように微笑む。
「こちらの都合もあったが、口が利けなくなる薬の効果は一ヶ月だ。必ず治る」
──そうでしょうね。
散々しゃべっているのを白蓮皇国に来てから聞いている。
──今日なんて国民の皆さんに大嘘までついていたんですものね。
「おい、なにか悪口を考えているだろう?」
蒼暉が軽くため息をついた。
「これからは黙って薬を飲ませるようなことはしない。私自身にかけて約束する」
こくっと蓮花はうなずいた。仮にも一国の皇子が自身にかけて約束したのだ。それは守るだろう。
蓮花がうなずくと、笑って蒼暉は頭を撫でる。
「しっかり食べるといい。料理人も張り切っていたからな」
どうやら白蓮皇国にとって天人というのは本当に特別なものらしい。誰もが優しく接してくれる。何の力もないのに、と思うと申し訳ないくらいだ。
その日の昼から蓮花は食事もきちんと食べることにした。
「ああ、よかった。蓮花さま、お食事を食べられたんですね」
女官に心配をかけてしまったのは申し訳なかった。
「蓮花さま、桃華宮のお庭はとても綺麗なんですよ。見に行きませんか?」
宮廷の前庭に集まっていた国民も解散したようで、元の静けさに戻っている。せっかくだから、少し外の様子を見ておくのもいいかもしれない。
──本当に登って逃げられる木がないのか、確認もしなくちゃいけないしね。
蓮花が立つと周りに女官がさっと来て服を整えたり、手を取ったりする。
扉を出ると回廊の先に曲線を描く白石の小径があった。それが庭に通じているらしい。足を進めると微かに玉砂利が音を立てる。
急に目の前が開けて美しい庭が目に入った。池には澄んだ水面に蓮の花が静かに浮かんでいる。
刈り整えられた桂花の木はきっと花が咲く季節になれば、風が甘い香りを運ぶのだろう。
池の奥には象牙色の四阿がある。控えめに花文様が彫られていた。桃華宮と同じだ。
四阿にあった陶器の小さな椅子に腰かけ、池を眺めていると、彩鳳国の芙蓉宮を思い出す。
そういえば、桜綾は白蓮皇国の出身で第七皇女だったはずだ。
──桜綾さまは蒼暉さまがお兄さまになるのね。
夜衡だったとき、蒼暉は桜綾の姿を見ただろうか。
さらりと通る風を感じながら、考えていると、鳥が足元で遊び出す。
──おいで。
黒い頭に白い体、尾は青い小鳥だ。キャキャッと鳴いて蓮花が差し出した指先に止まる。
──私もお前みたいに羽が生えていたら、煌月さまのところへ飛んでいきたいな。
実際はこの鳥は一つの場所に好んで住むから、渡り鳥のように多くへ行くわけではない。それでも翼があることをうらやましく思った。
ぽかぽかと暖かい昼下がり、気づくと蓮花はうとうとしてしまったようだ。
夢を見ていた。
ふわりと身体が軽くなった蓮花は鳥になっていた。翼を羽ばたかせると、ふわりと空に舞い上がることができる。
鳥となった蓮花は桃華宮の輝く屋根を上から見た。上から見ても美しい宮だ。
彩鳳国は南の方角……。
鳥になった蓮花は南に向かって羽ばたいた。
「飲食をしなかったら死ぬぞ。それが分かっていたから赫州国でもしっかり食べていたんだろう」
──だって、覇玄さまは飲み物に口を利けなくするような薬なんて入れなかったもの。
むっとして蓮花は顔を横に向ける。
「分かった。私が一旦口をつける。それなら食べるな? 飲み物くらいは飲んでくれ」
蓮花は食べることより脱水が怖いことを知っているが、蒼暉もどうやら知っているようだった。
女官が淹れたお茶を自分の口に含むと蓮花の首の後ろを掴んで、口移しで飲ませようとする。蓮花はそれに気づいて慌てて蒼暉の身体を押した。
「なんだ、いいのか? けれどこれで問題ないことは分かっただろう」
口移しさせられたのではたまらない。蓮花は急いで茶碗に残っていたお茶を飲んだ。
それを見て蒼暉が安心したように微笑む。
「こちらの都合もあったが、口が利けなくなる薬の効果は一ヶ月だ。必ず治る」
──そうでしょうね。
散々しゃべっているのを白蓮皇国に来てから聞いている。
──今日なんて国民の皆さんに大嘘までついていたんですものね。
「おい、なにか悪口を考えているだろう?」
蒼暉が軽くため息をついた。
「これからは黙って薬を飲ませるようなことはしない。私自身にかけて約束する」
こくっと蓮花はうなずいた。仮にも一国の皇子が自身にかけて約束したのだ。それは守るだろう。
蓮花がうなずくと、笑って蒼暉は頭を撫でる。
「しっかり食べるといい。料理人も張り切っていたからな」
どうやら白蓮皇国にとって天人というのは本当に特別なものらしい。誰もが優しく接してくれる。何の力もないのに、と思うと申し訳ないくらいだ。
その日の昼から蓮花は食事もきちんと食べることにした。
「ああ、よかった。蓮花さま、お食事を食べられたんですね」
女官に心配をかけてしまったのは申し訳なかった。
「蓮花さま、桃華宮のお庭はとても綺麗なんですよ。見に行きませんか?」
宮廷の前庭に集まっていた国民も解散したようで、元の静けさに戻っている。せっかくだから、少し外の様子を見ておくのもいいかもしれない。
──本当に登って逃げられる木がないのか、確認もしなくちゃいけないしね。
蓮花が立つと周りに女官がさっと来て服を整えたり、手を取ったりする。
扉を出ると回廊の先に曲線を描く白石の小径があった。それが庭に通じているらしい。足を進めると微かに玉砂利が音を立てる。
急に目の前が開けて美しい庭が目に入った。池には澄んだ水面に蓮の花が静かに浮かんでいる。
刈り整えられた桂花の木はきっと花が咲く季節になれば、風が甘い香りを運ぶのだろう。
池の奥には象牙色の四阿がある。控えめに花文様が彫られていた。桃華宮と同じだ。
四阿にあった陶器の小さな椅子に腰かけ、池を眺めていると、彩鳳国の芙蓉宮を思い出す。
そういえば、桜綾は白蓮皇国の出身で第七皇女だったはずだ。
──桜綾さまは蒼暉さまがお兄さまになるのね。
夜衡だったとき、蒼暉は桜綾の姿を見ただろうか。
さらりと通る風を感じながら、考えていると、鳥が足元で遊び出す。
──おいで。
黒い頭に白い体、尾は青い小鳥だ。キャキャッと鳴いて蓮花が差し出した指先に止まる。
──私もお前みたいに羽が生えていたら、煌月さまのところへ飛んでいきたいな。
実際はこの鳥は一つの場所に好んで住むから、渡り鳥のように多くへ行くわけではない。それでも翼があることをうらやましく思った。
ぽかぽかと暖かい昼下がり、気づくと蓮花はうとうとしてしまったようだ。
夢を見ていた。
ふわりと身体が軽くなった蓮花は鳥になっていた。翼を羽ばたかせると、ふわりと空に舞い上がることができる。
鳥となった蓮花は桃華宮の輝く屋根を上から見た。上から見ても美しい宮だ。
彩鳳国は南の方角……。
鳥になった蓮花は南に向かって羽ばたいた。
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ゆずさん🩵いつもありがとうございます!
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