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5.書道家の仕事
書道家の仕事④
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「夜景の綺麗な公園です。少し高台にあるので街の灯りがとても綺麗に見える場所ですよ」
「夜景ですか? わざわざ見に行ったりしたことはないです」
行ったことがないので香澄はわくわくしてしまう。
「見に行く価値がありますから楽しみにしていて下さいね」
にこにこと神代が言うので香澄も楽しみになってくる。今まで自分が知らないことを神代はたくさん教えてくれているのだ。
それが交際というものだとしたら、なんて素敵なものなのだろうか。
車が公園の入口に差し掛かった時だ。
「香澄さん、目を閉じていてください。目を開けた時に綺麗な夜景を見せたいから」
早く早くと神代に急かされて香澄は慌てて目を閉じる。
「閉じました!」
「そのままですよ」
しばらく走って車が停まるような感覚があった。
「開けていいですよ」
香澄が目を開くと、目の前には街の夜景と川を繋ぐ橋のライトアップまでもが飛び込んできた。
キラキラとしていてまるで宝石をバラバラと撒いて広げたかのようだ。
「すごく……綺麗です」
「この夜景をあなたに見せたかったんです」
とても嬉しそうな神代の声には香澄も笑顔で返したくなってしまう。
「とても嬉しい! 綺麗です。ありがとうございます」
目の前に広がる夜景に香澄は気をとられてしまっていたが、神代がじっと香澄の横顔を見つめていることに気がついて、香澄は顔が赤くなってしまった。
「神代さん……そんな風に見つめられたらどきどきしてしまいます」
「いいですね。どきどきして俺のことしか考えられないようになったらいいな」
「なにを、考えていたんですか?」
「香澄さんが可愛いなあって考えていました」
「綺麗な夜景を見てください」
赤くなった香澄は車の窓の外を指差す。
「うーん、せっかく会えたのに景色ばかり見ていてもなあ。でも、香澄さんばかり見ていてもつい、不埒なことを考えてしまいそうだ」
「不埒?」
香澄が首を傾げると神代は頬にそっと手を触れた。
(本当に綺麗だわこの人……)
榛色の瞳に目が吸い込まれるように香澄はじっと見つめてしまう。その神代の目が愛おしいものを見るように細まって、ふっと軽く何かが唇に触れた。
それが神代の唇だと気づいたのは神代が離れてからだ。
「あなたの唇をこんな風に奪ったことのある人がいたらと想像すると妬けてしまうな」
こんなロマンティックな口づけをしておいて、低く耳元で神代は香澄に囁く。感じたことのないぞくりと背中を何かが走り抜けるような感覚がして香澄は思わず目の前の神代の胸にもたれてしまう。
「そんな人、いません」
「本当に? こんなに可愛い香澄さんに今まで交際相手がいなかったなんて信じられないんだけど?」
そんな風に疑われて、顔を上げた香澄は一生懸命神代に訴える。
「本当にいません。だって、今までは男性が苦手だったから」
「苦手?」
「夜景ですか? わざわざ見に行ったりしたことはないです」
行ったことがないので香澄はわくわくしてしまう。
「見に行く価値がありますから楽しみにしていて下さいね」
にこにこと神代が言うので香澄も楽しみになってくる。今まで自分が知らないことを神代はたくさん教えてくれているのだ。
それが交際というものだとしたら、なんて素敵なものなのだろうか。
車が公園の入口に差し掛かった時だ。
「香澄さん、目を閉じていてください。目を開けた時に綺麗な夜景を見せたいから」
早く早くと神代に急かされて香澄は慌てて目を閉じる。
「閉じました!」
「そのままですよ」
しばらく走って車が停まるような感覚があった。
「開けていいですよ」
香澄が目を開くと、目の前には街の夜景と川を繋ぐ橋のライトアップまでもが飛び込んできた。
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「すごく……綺麗です」
「この夜景をあなたに見せたかったんです」
とても嬉しそうな神代の声には香澄も笑顔で返したくなってしまう。
「とても嬉しい! 綺麗です。ありがとうございます」
目の前に広がる夜景に香澄は気をとられてしまっていたが、神代がじっと香澄の横顔を見つめていることに気がついて、香澄は顔が赤くなってしまった。
「神代さん……そんな風に見つめられたらどきどきしてしまいます」
「いいですね。どきどきして俺のことしか考えられないようになったらいいな」
「なにを、考えていたんですか?」
「香澄さんが可愛いなあって考えていました」
「綺麗な夜景を見てください」
赤くなった香澄は車の窓の外を指差す。
「うーん、せっかく会えたのに景色ばかり見ていてもなあ。でも、香澄さんばかり見ていてもつい、不埒なことを考えてしまいそうだ」
「不埒?」
香澄が首を傾げると神代は頬にそっと手を触れた。
(本当に綺麗だわこの人……)
榛色の瞳に目が吸い込まれるように香澄はじっと見つめてしまう。その神代の目が愛おしいものを見るように細まって、ふっと軽く何かが唇に触れた。
それが神代の唇だと気づいたのは神代が離れてからだ。
「あなたの唇をこんな風に奪ったことのある人がいたらと想像すると妬けてしまうな」
こんなロマンティックな口づけをしておいて、低く耳元で神代は香澄に囁く。感じたことのないぞくりと背中を何かが走り抜けるような感覚がして香澄は思わず目の前の神代の胸にもたれてしまう。
「そんな人、いません」
「本当に? こんなに可愛い香澄さんに今まで交際相手がいなかったなんて信じられないんだけど?」
そんな風に疑われて、顔を上げた香澄は一生懸命神代に訴える。
「本当にいません。だって、今までは男性が苦手だったから」
「苦手?」
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