28 / 86
6.ボジティブとネガティブの間に
ボジティブとネガティブの間に②
しおりを挟む
自己紹介はいらないと言ったら、反発するかと思ったのだが香澄は戸惑ったような表情を見せただけだった。その時は政略的なものだから顔を合わせればそれで十分だと思っていたのに、その香澄の戸惑ったような顔が頼りなく、神代の心に引っかかったのだ。
食事をしている間も神代はそのようすをつぶさに見ていた。
結婚したら一緒に過ごすうえで食事の仕方というのは、合う合わないが大きいと神代は思っている。
品のない食事の仕方やペースが合わないようなことがあればそれもストレスとなる。そういった意味で香澄の食事の仕方は好ましいものだった。
店の人への対応は丁寧でこちらが客だからと高飛車になることもない。食事が自分の前に運ばれてきた時は素直に嬉しそうな表情をする。食事をする店は神代が選択したものだったので、喜んでもらえればこちらも嬉しいし、気が合うなと感じる。
香澄が前菜を口に入れた時、その顔からは『おいしい!』と言葉にされていなくても表情からこぼれ出ていて微笑ましいものだった。
香澄に対して可愛いな、と思ったのはそれが最初だ。
ぱくぱくと嬉しそうに食事を進めていく姿は本当に可愛らしく小動物のようだ。写真の気の強そうな印象など、どこかに行ってしまった。
──榛色……と。
色素が薄く、彫りの深い顔立ちなので「ハーフなの?」と聞かれることはたまにあるが、その瞳や髪の色を榛色と称されたことはなかった。
その表現が神代はとても気に入ってしまったのだ。
だから、適当に顔合わせを済ませたら帰るつもりにしていたのに、香澄をお気に入りの噴水パフォーマンスに誘ってしまった。瞳をきらきらと輝かせながら噴水を見ている香澄の横顔を見つめ、胸がぎゅっと絞られるような気持ちになったものだ。
もしもここでこのお見合いを断ったら、この彼女はまた誰か他の人とお見合いをして、誰か他の人のものになってしまうのかもしれない。そんなことを考えるとそれが許せないような心地になった。
「ご趣味は? とか聞くものなんですかね?」
そういうと「まあ……」と言ってくすくす笑う。その笑い顔が可愛くてぽろっと可愛いといってもお上手なんですねとさらりと流されてしまって、少し神代は焦った。
本当にそう心から思っているのに、そんな風に流されてはかなわない。帰ってきたのは「書道が好きなんです」という言葉だった。正直、そこで初めてあの写真の彼女だろうかという気持ちが刺のように心に引っかかったことも間違いはない。
その後書道についていろいろ教えてくれた。正直今まであまり関わりのないことで興味もなかったが、香澄が瞳を輝かせながら話をするから、とても興味をひかれたのだ。
詳しく聞くと教室で教えているというので「柚木先生」と呼んだらふわりと頬を染める。そのピンクに染まった頬に思わず触れてしまっても、仕方のないことなのではないだろうか。
食事をしている間も神代はそのようすをつぶさに見ていた。
結婚したら一緒に過ごすうえで食事の仕方というのは、合う合わないが大きいと神代は思っている。
品のない食事の仕方やペースが合わないようなことがあればそれもストレスとなる。そういった意味で香澄の食事の仕方は好ましいものだった。
店の人への対応は丁寧でこちらが客だからと高飛車になることもない。食事が自分の前に運ばれてきた時は素直に嬉しそうな表情をする。食事をする店は神代が選択したものだったので、喜んでもらえればこちらも嬉しいし、気が合うなと感じる。
香澄が前菜を口に入れた時、その顔からは『おいしい!』と言葉にされていなくても表情からこぼれ出ていて微笑ましいものだった。
香澄に対して可愛いな、と思ったのはそれが最初だ。
ぱくぱくと嬉しそうに食事を進めていく姿は本当に可愛らしく小動物のようだ。写真の気の強そうな印象など、どこかに行ってしまった。
──榛色……と。
色素が薄く、彫りの深い顔立ちなので「ハーフなの?」と聞かれることはたまにあるが、その瞳や髪の色を榛色と称されたことはなかった。
その表現が神代はとても気に入ってしまったのだ。
だから、適当に顔合わせを済ませたら帰るつもりにしていたのに、香澄をお気に入りの噴水パフォーマンスに誘ってしまった。瞳をきらきらと輝かせながら噴水を見ている香澄の横顔を見つめ、胸がぎゅっと絞られるような気持ちになったものだ。
もしもここでこのお見合いを断ったら、この彼女はまた誰か他の人とお見合いをして、誰か他の人のものになってしまうのかもしれない。そんなことを考えるとそれが許せないような心地になった。
「ご趣味は? とか聞くものなんですかね?」
そういうと「まあ……」と言ってくすくす笑う。その笑い顔が可愛くてぽろっと可愛いといってもお上手なんですねとさらりと流されてしまって、少し神代は焦った。
本当にそう心から思っているのに、そんな風に流されてはかなわない。帰ってきたのは「書道が好きなんです」という言葉だった。正直、そこで初めてあの写真の彼女だろうかという気持ちが刺のように心に引っかかったことも間違いはない。
その後書道についていろいろ教えてくれた。正直今まであまり関わりのないことで興味もなかったが、香澄が瞳を輝かせながら話をするから、とても興味をひかれたのだ。
詳しく聞くと教室で教えているというので「柚木先生」と呼んだらふわりと頬を染める。そのピンクに染まった頬に思わず触れてしまっても、仕方のないことなのではないだろうか。
170
あなたにおすすめの小説
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる