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11.心の中に在って失われないもの
心の中に在って失われないもの②
高村のこういうところが秘書として素晴らしい。いつも神代のことを最優先に考えて、そのベストな環境を整えてくれる。本当に優秀な秘書だ。
「よし、現物は写真に撮っておいていつでも見られるようにしておけばいいか」
たかが手紙にここまでされていると香澄は思っていないだろうと高村は推測する。
(重いんじゃ……?)
けど、神代が香澄を溺愛していることは本当によく分かった高村なのだった。
『神代佳祐様 先日お話していた書道展の招待状をお送りいたします。もちろんご一緒にお伺いさせていただけたらと思うのですが、念のために招待状をお送りいたします。当日、お会いできるのを楽しみにしております』
文章としては短い文章だが、香澄が文字を書いている姿を神代は一度目にしているので、あのように真剣に書いてくれていたものを粗雑に扱うことなどできなかった。
香澄のことを知れば知るほど惹かれていく自分を神代は理解している。
あの菜々美のところに迎えに行った日、本当は神代は香澄の全てを奪いたい衝動に駆られたのだ。
男性が苦手なのだという話を聞いていなかったらきっと奪っていただろう。
けれど、最後までしなかったのは、香澄を大事にしたかったからだ。その身体だけではなく、気持ちも。
神代は心の中から香澄の全てが欲しいと切に願っていたのだった。
今回訪問する書道展は香澄が所属する会派が違うため、出品できなかったものだ。書道には会派と呼ばれる流派のようなものがある。展覧会は会派を指定していたり、また会派が主催しているものもあるので全ての展覧会に好き放題に出せるわけではない。
また会派の中でも細かく系列が分かれているものなのだ。
出品するには最低限の資格ももちろん必要だ。資格を得るには何度もその書道展で入賞し、入賞ごとにランクが上がってゆく仕組みとなっている。しかし、この入賞に目を取られてしまうと本来の書に向かうという目的からは外れてしまい、それが非常に難しい。
入賞しなくては実績にならないし、入賞ばかりに目をやっていて自分らしさを失っても意味がない。
芸術を極めるというのは非常に難しいことなのだ。どこに自分の目的を置くかによっても変わってくる。
香澄は同じ会派の流れの中で三つほどの資格を取得していた。そのため最低でも三つの書道展に出品することができる。その度、毎回出品料というものもかかってくるのだ。
無料で出品できるわけでもなく、芸術にお金がかかるというのは物理的な筆や紙などだけではなくこういったものにもお金がかかるのはどこも同じだ。
香澄自身、書である程度稼ぎもあるので出品料を払っても出品できるものはするようにしていた。
その中で今日招待してくれたのは、別の会派ながら年齢が近くて仲の良い書道家のうちの一人だった。
「よし、現物は写真に撮っておいていつでも見られるようにしておけばいいか」
たかが手紙にここまでされていると香澄は思っていないだろうと高村は推測する。
(重いんじゃ……?)
けど、神代が香澄を溺愛していることは本当によく分かった高村なのだった。
『神代佳祐様 先日お話していた書道展の招待状をお送りいたします。もちろんご一緒にお伺いさせていただけたらと思うのですが、念のために招待状をお送りいたします。当日、お会いできるのを楽しみにしております』
文章としては短い文章だが、香澄が文字を書いている姿を神代は一度目にしているので、あのように真剣に書いてくれていたものを粗雑に扱うことなどできなかった。
香澄のことを知れば知るほど惹かれていく自分を神代は理解している。
あの菜々美のところに迎えに行った日、本当は神代は香澄の全てを奪いたい衝動に駆られたのだ。
男性が苦手なのだという話を聞いていなかったらきっと奪っていただろう。
けれど、最後までしなかったのは、香澄を大事にしたかったからだ。その身体だけではなく、気持ちも。
神代は心の中から香澄の全てが欲しいと切に願っていたのだった。
今回訪問する書道展は香澄が所属する会派が違うため、出品できなかったものだ。書道には会派と呼ばれる流派のようなものがある。展覧会は会派を指定していたり、また会派が主催しているものもあるので全ての展覧会に好き放題に出せるわけではない。
また会派の中でも細かく系列が分かれているものなのだ。
出品するには最低限の資格ももちろん必要だ。資格を得るには何度もその書道展で入賞し、入賞ごとにランクが上がってゆく仕組みとなっている。しかし、この入賞に目を取られてしまうと本来の書に向かうという目的からは外れてしまい、それが非常に難しい。
入賞しなくては実績にならないし、入賞ばかりに目をやっていて自分らしさを失っても意味がない。
芸術を極めるというのは非常に難しいことなのだ。どこに自分の目的を置くかによっても変わってくる。
香澄は同じ会派の流れの中で三つほどの資格を取得していた。そのため最低でも三つの書道展に出品することができる。その度、毎回出品料というものもかかってくるのだ。
無料で出品できるわけでもなく、芸術にお金がかかるというのは物理的な筆や紙などだけではなくこういったものにもお金がかかるのはどこも同じだ。
香澄自身、書である程度稼ぎもあるので出品料を払っても出品できるものはするようにしていた。
その中で今日招待してくれたのは、別の会派ながら年齢が近くて仲の良い書道家のうちの一人だった。
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