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14.はじめてのお泊まり
はじめてのお泊まり①
* * *
──できる!
あの時はそう思ったのだ。パフォーマンスが終わってすぐのあの時は……。
(……きっとできる、はず多分……?)
パフォーマンス直後は気持ちが高揚していたが、今はだいぶ落ち着いている。
あんなに高揚していて、できる! と思ったはずなのに落ち着いた気持ちになってしまっているのが香澄には謎だった。アドレナリンというものをあまり意識したことがないからだろう。
あのパフォーマンスが終わった直後はアドレナリンの過剰分泌によりできる! と思ってしまっていたのだと香澄は気づいていない。
(電話ってどうやってかけるんでしたっけ?)
お風呂も入った。スキンケアもした。明日の準備もできている。あとは電話して、仲直りして寝るだけ……なのだが。
画面に神代の名前を出してはみるものの、香澄はなかなか通話ボタンを押せずにいた。その時だ。着信を知らせる振動があって、香澄の心臓は止まりそうになった。
「は……はい!」
『香澄さん? なんか電話に出るの、早くないです?』
「あ……」
電話の向こうから聞こえてきたのはまさに神代の穏やかな声で、香澄はぎゅうっとスマートフォンを握りしめてしまった。
「実は、ちょうどかけようとしていました」
『それは気が合いますね』
優しい声。いつもの神代だ。
『ちょっとご連絡できなくてすみませんでした。いろいろと事情があって……』
「いいです」
もう、そんなことはよかった。こうして今声が聞ければそれでいい。
『うーん。でも誤解されたくないので、言い訳したいです』
その言い方が可愛らしくて笑ってしまった。
「いいんです。こうして今お元気で声が聞けたらそれだけで……」
『ははっ、まるで遠くにでもいっていたようだな。え……? ちょっと香澄さん、もしかして気持ち的に距離を置いていたとかじゃないですよね? 俺、婚約は解消しませんよ』
いつでも神代の意志は固い。そんなところにどれほど助けられてきただろう。最初から、香澄を見つけ出した時から神代は真っすぐに香澄のことを見つめてくれていた。
香澄は胸がきゅっとして、くすぐったいような嬉しいような気持ちになり、軽く笑みを漏らす。
「うふふっ、不思議ですね。声を聞けるだけでもいいって思っていたのに、こうして声を聞いたら会いたくなっちゃいました」
『香澄さん……。俺も会いたいです。お迎えに行ってもいいですか?』
「え、でも私メイクも落としてしまって」
『構いません。泊まれる準備をしてきませんか?』
どきん、とした。
最後の一言は願うような囁き声だった。けれど会いたい。そう心から思ったのだ。
「会います」
決意を込めて言うとそれが伝わったのか、電話からも伝わる優しい声で『はい。お迎えに行きます』と返ってきたのだった。
香澄は泊まるための準備をしてリビングを覗く。リビングには母がいた。
「あら、香澄ちゃん? どうしたの?」
「え……っと、おでかけしてきます」
「こんな時間に?」
母は驚いている。
──できる!
あの時はそう思ったのだ。パフォーマンスが終わってすぐのあの時は……。
(……きっとできる、はず多分……?)
パフォーマンス直後は気持ちが高揚していたが、今はだいぶ落ち着いている。
あんなに高揚していて、できる! と思ったはずなのに落ち着いた気持ちになってしまっているのが香澄には謎だった。アドレナリンというものをあまり意識したことがないからだろう。
あのパフォーマンスが終わった直後はアドレナリンの過剰分泌によりできる! と思ってしまっていたのだと香澄は気づいていない。
(電話ってどうやってかけるんでしたっけ?)
お風呂も入った。スキンケアもした。明日の準備もできている。あとは電話して、仲直りして寝るだけ……なのだが。
画面に神代の名前を出してはみるものの、香澄はなかなか通話ボタンを押せずにいた。その時だ。着信を知らせる振動があって、香澄の心臓は止まりそうになった。
「は……はい!」
『香澄さん? なんか電話に出るの、早くないです?』
「あ……」
電話の向こうから聞こえてきたのはまさに神代の穏やかな声で、香澄はぎゅうっとスマートフォンを握りしめてしまった。
「実は、ちょうどかけようとしていました」
『それは気が合いますね』
優しい声。いつもの神代だ。
『ちょっとご連絡できなくてすみませんでした。いろいろと事情があって……』
「いいです」
もう、そんなことはよかった。こうして今声が聞ければそれでいい。
『うーん。でも誤解されたくないので、言い訳したいです』
その言い方が可愛らしくて笑ってしまった。
「いいんです。こうして今お元気で声が聞けたらそれだけで……」
『ははっ、まるで遠くにでもいっていたようだな。え……? ちょっと香澄さん、もしかして気持ち的に距離を置いていたとかじゃないですよね? 俺、婚約は解消しませんよ』
いつでも神代の意志は固い。そんなところにどれほど助けられてきただろう。最初から、香澄を見つけ出した時から神代は真っすぐに香澄のことを見つめてくれていた。
香澄は胸がきゅっとして、くすぐったいような嬉しいような気持ちになり、軽く笑みを漏らす。
「うふふっ、不思議ですね。声を聞けるだけでもいいって思っていたのに、こうして声を聞いたら会いたくなっちゃいました」
『香澄さん……。俺も会いたいです。お迎えに行ってもいいですか?』
「え、でも私メイクも落としてしまって」
『構いません。泊まれる準備をしてきませんか?』
どきん、とした。
最後の一言は願うような囁き声だった。けれど会いたい。そう心から思ったのだ。
「会います」
決意を込めて言うとそれが伝わったのか、電話からも伝わる優しい声で『はい。お迎えに行きます』と返ってきたのだった。
香澄は泊まるための準備をしてリビングを覗く。リビングには母がいた。
「あら、香澄ちゃん? どうしたの?」
「え……っと、おでかけしてきます」
「こんな時間に?」
母は驚いている。
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