敏腕CEOは初心な書道家を溺愛して離さない

如月 そら

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15.雨降って地固まる

雨降って地固まる②

 思わず香澄は両手で顔を隠す。瞬間湯沸かし器のようにいきなり真っ赤になった自覚がある。
 ──いきなり目を開けるなんてずるい!
「あはは、本当に可愛いですね」
 起き上がった神代にそっと抱きしめられて、赤くなった耳にも軽くキスをされる。神代は半裸の状態でも全然平気のようだ。香澄は触れ合う肌が恥ずかしくて、胸元をそっと布団で隠した。

「恥ずかしい?」
「はい……」
 こくっと頷く。
「恥じらっているのもたまらないんですよね」
 布団の上からぎゅうっと抱きしめられた。とても甘い時間だ。ちゅ、と頬にキスを贈られて「ここでいつまでもだらっとしていたいんですけど、そろそろ起きましょうか」と囁かれる。
「そうしましょう」
 香澄は優しい感触に酔いながら同意した。


 シャワーを浴びた香澄がリビングで髪を乾かしていると神代がやってきて、手からドライヤーをそっと取り上げる。
「俺が乾かしてもいいですか?」
「お手間じゃないですか?」
「大好きな人の髪をリビングで、俺の膝の間に置いて乾かすのが憧れだったんですと言ったら?」
 そんな憧れがあるのかは分からないけれど神代がとても幸せそうなので、香澄はお願いすることにした。
「では、お願いいたします」

 神代はソファに座り香澄がふわふわのラグの上にぺたんと座ると、後ろからドライヤーで髪に触れながら神代が乾かしてくれる。
 他人に髪を乾かしてもらうのは美容院くらいだと思っていたけれど、憧れだと神代が言うのも香澄には分かった。
 とても幸せな時間なのだ。

「今度、私にも神代さんの髪を乾かさせてくださいね」
 つい緩んでしまう口元を香澄は隠すこともしなかった。神代の前では隠す必要がないと知っているからだ。
「俺のも乾かしてくれるんですか? それは嬉しいな。楽しみにしていますね」

 ──雨降って地固まる。
 一般的に言われることはどうやら本当のことらしい。
「香澄さん、にこにこしていますね。嬉しい?」
「はい! とっても幸せなので」
 口ではそう言ったけれど、それだけではなかった。本当に心の中にある輝きは、それが本物なら小さくなってもなくなることはないと実感したからだ。
 今ならあの書は違う気持ちで書けるような気がした。
(むしろ『雨降って地固まる』にしようかしら?)
 いろんなアイデアがあふれるように出てくるのは気持ちにゆとりがあるからだろう。香澄にとって神代は本当に輝きそのものなのだった。

 香澄の髪をすっかり綺麗に乾かしてしまい神代がドライヤーを片付けて「食事にしましょうか?」と二人でキッチンに立った時、インターフォンが鳴った。
 神代がインターフォンに向かう。

「はい、どうぞ」
 マンションの入り口のオートロックを開けたのだろう。その後また、インターフォンが鳴る。
「はい。今行きます」
 荷物かなにか届いたようだが神代自身が頼んだもののようで、驚いたようすはなかった。
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