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15.雨降って地固まる
雨降って地固まる⑤
実際に審査員もしている会派の重鎮である泰山にお手本を頂けるとはとてもありがたいことだった。
「よろしくお願いいたします!」
目の前で憧れである泰山が香澄の書を書いてくれる。今度は香澄は高揚で胸をどきどきとさせながら、その一挙手一投足を見つめる。香澄が書道を始めたのは小学校の低学年の頃だ。それから清柊の父を師匠としてずっと続けてきて、展覧会では何度も泰山の書を見てきたのだ。いつもその言葉の選択や、美しい墨跡、勢いと生命力を感じる筆致に憧れの気持ちを持っていた。
確かにお手本で書いてもらった文字は同じ文字でありながら、さらに洗練されたものとなっている。
「ありがとうございます! 練習いたします」
「うん。あとでまた見ましょう」
「はい!」
瞳をキラキラとさせて泰山を見ている香澄を離れたところで見ていた清柊は(その表情を神代さんが見ていたらどんな顔をするんでしょうね?)と苦笑しながら見ていた。
泰山はもうおじいちゃん先生だが、この道では高名な書家であり、日本の名だたる展覧会の審査員もしている人物だ。
その書については泰山に書いてもらえば今、どれほどの価値があるか分からない。
けれど香澄にとってはきっと価値なんかではないのだろうと喜んでいる表情を見て清柊は微笑ましかった。
指輪をもらって一か月経ち、最近は時間のある時は神代の家に立ち寄ることの多い香澄は、ダイニングテーブルの向かいにいる神代に話しかけていた。
「清柊先生に言われて、初めて気づいたんですよね。泰山先生に書をいただくってことの価値に」
今日の香澄は錬成会のあと自宅に一旦戻って母と一緒に食事を作り、それをダイニングテーブルに並べていた。
豚肉の生姜焼きとか茄子の煮びたしとか胡麻和えとか、普通の家庭料理なのだが外食が多い神代からするとそういうものがとても美味しく感じるらしいのだ。
「価値……ですか?」
いんげんの胡麻和えを箸でつかんで神代が驚いたような声を出している。
「そうです。高名な先生ですからね。ホテルとかの壁画として飾られることもあります」
「ホテルのロビーなんかにあったら、確かにモダンでかっこいいですね。そうか、高名な先生ならばそういうことも有り得ますね」
ね? と香澄は首を傾げる。神代も香澄に言われると身近に書が思いがけなくたくさんあることに気づいていつも驚かされるのだ。
「高名な書家の先生の書をいただくってなると、大きなものなら何百万とするんじゃないですか? 今回のものも綺麗に表装したらお高くなるのかもしれませんけど、そういうものじゃないんです!」
「よろしくお願いいたします!」
目の前で憧れである泰山が香澄の書を書いてくれる。今度は香澄は高揚で胸をどきどきとさせながら、その一挙手一投足を見つめる。香澄が書道を始めたのは小学校の低学年の頃だ。それから清柊の父を師匠としてずっと続けてきて、展覧会では何度も泰山の書を見てきたのだ。いつもその言葉の選択や、美しい墨跡、勢いと生命力を感じる筆致に憧れの気持ちを持っていた。
確かにお手本で書いてもらった文字は同じ文字でありながら、さらに洗練されたものとなっている。
「ありがとうございます! 練習いたします」
「うん。あとでまた見ましょう」
「はい!」
瞳をキラキラとさせて泰山を見ている香澄を離れたところで見ていた清柊は(その表情を神代さんが見ていたらどんな顔をするんでしょうね?)と苦笑しながら見ていた。
泰山はもうおじいちゃん先生だが、この道では高名な書家であり、日本の名だたる展覧会の審査員もしている人物だ。
その書については泰山に書いてもらえば今、どれほどの価値があるか分からない。
けれど香澄にとってはきっと価値なんかではないのだろうと喜んでいる表情を見て清柊は微笑ましかった。
指輪をもらって一か月経ち、最近は時間のある時は神代の家に立ち寄ることの多い香澄は、ダイニングテーブルの向かいにいる神代に話しかけていた。
「清柊先生に言われて、初めて気づいたんですよね。泰山先生に書をいただくってことの価値に」
今日の香澄は錬成会のあと自宅に一旦戻って母と一緒に食事を作り、それをダイニングテーブルに並べていた。
豚肉の生姜焼きとか茄子の煮びたしとか胡麻和えとか、普通の家庭料理なのだが外食が多い神代からするとそういうものがとても美味しく感じるらしいのだ。
「価値……ですか?」
いんげんの胡麻和えを箸でつかんで神代が驚いたような声を出している。
「そうです。高名な先生ですからね。ホテルとかの壁画として飾られることもあります」
「ホテルのロビーなんかにあったら、確かにモダンでかっこいいですね。そうか、高名な先生ならばそういうことも有り得ますね」
ね? と香澄は首を傾げる。神代も香澄に言われると身近に書が思いがけなくたくさんあることに気づいていつも驚かされるのだ。
「高名な書家の先生の書をいただくってなると、大きなものなら何百万とするんじゃないですか? 今回のものも綺麗に表装したらお高くなるのかもしれませんけど、そういうものじゃないんです!」
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