君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

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月が綺麗ですね

月が綺麗ですね①

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しかし正式にお付き合いしましょう!とはなったものの、シフト制の結衣と、とにかく忙しい蓮根とではなかなか時間を合わせることが出来なかった。
主にメールアプリの連絡ばかりで、声を聞くこともままならない日々だ。

『結衣さんが、切れてきた気がします』
電話口で、低い声を出す蓮根である。
「えーと、蓮根先生?」

『涼真と呼んでください。お付き合いしているんだし』
「……そうでしたね」

『会えないからって、他人行儀にはならないで下さい。寂しすぎる』
確かに。

「ごめんなさい」
『謝らないで。責めているわけではないんです』
はあ、とため息。

受話器から聞こえる息の音に、結衣はどきんとする。
「来週は週末、土曜日が早上がりで日曜日がお休みですから」
結衣がスケジュールを伝えると蓮根からは即座に返事がくる。
『万難排して、休みにします』

万難……いや、そこまでの気合いって……。
『結衣さん、今、おうちなんですよね?』
「はい。涼真さんは会社?」
『そう』
苦笑を含んだ声だ。

『食事は食べましたか?』
「帰りに食べて来ちゃいました。もう、帰って作るのもめんどくて」

『ああ、そういう時、ありますよね。僕も会社で済ませてしまって、家では寝るだけになってしまうこともあるしな』

聞いているだけで忙しそうなのだが、まだ会社にいてこんな風に話していていいのだろうかと結衣は心配になってきた。

「今、話してて大丈夫なんですか?」
『ん? ああ、話しながらでも仕事は出来ますから。むしろ結衣さんの声を聞きながらなんて逆に捗るくらいです』
たしかに、キーボードを打つ音が聞こえている。

『やっと、声聞けたんです。本当は声を聞くことだけに集中したいくらいです』
「あはは……」
相変わらずだ……。

『シャワーは浴びた?』
「はい。もう、寝るだけですね」

『何着て寝ているの?』
「パジャマ? うーん、部屋着? 部屋着兼用の寝巻きです」

『どういうの?』
普通だと思うのだけれど、そんなに食い下がって聞きたいだろうか。

「ジャージ素材の膝下くらいの丈のかぶるやつかな。色気ないですよね」
えへへっと結衣は笑う。
『いや? そんなこと思ってくれるの? そうだなあ……どういうのなら色気があると思うんですか?』
その質問にも結衣は一生懸命考えて回答する。

「レース素材のキャミソール、とか……」
『持ってる?』
「え……ないかも」
『僕も見たいな。レース素材のキャミソール姿の結衣さん。今度プレゼントしますよ』

「……っ」
斜め上の答えが返ってきた。プレゼント……とは。持ってなければプレゼントすればいいってその考え。
『想像した?』
したけども。
なんで、分かるんだろう。

『ね、その部屋着でもいいから、あとで写メ送ってください』
「えー? 本当に普通ですよー」

『じゃあ、脱いでるやつにしますか?』
    
「それはいいです! 涼真さん、言ってること意味分かりませんけど」
脱いだ写メとか、絶対送るわけないしね!

『見たいなあ』
「本当に普通です」
『会ってないから寂しいんですよ。本当は会って抱きしめたりキスしたり、あなたの身体を触ったりしたいんです』
「え……と、私も寂しい……かも」
『少しは会えなくて寂しいって思ってくれるんだ?』
急に声が甘くなる。

結衣はくすぐったいような気持ちになって、けれど、
「そうですよ」
と正直に答えた。

『はぁ……あなたを抱きしめたい。結衣さんの声好きですけど、人って欲張りですよね。始めはあなたの声をもう一度聞ければ良かった。次に一目会えたらって。で、次は同じ時間を共有したくなって、あなたを独り占めしたくなって……』

その低くて時折掠れるセクシーな声は、結衣だって好きだ。

いつも蓮根が、結衣さん話して?と言うが、その気持ちも分かる気がする。

仕事も充実しているので、いつもいつも考えるわけではないけれど、会社の休憩中に綺麗な夕焼けとか見てしまったら、見せてあげたいなとか、涼真さんは今、何しているのかなとは思う。
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