君の声を聴かせて~声フェチの人には聞かせたくないんですけどっ!~

如月 そら

文字の大きさ
36 / 70
あの時のこちら側

あの時のこちら側③

しおりを挟む
しかし子供と違うのは、近いですと照れている様子がこちらの劣情を煽るところと、抱き合う程に近い距離だと何だかいい匂いがする事だろう。

いい匂いがすると言っても本人は何もつけていない、とくんくんしているだけだ。

ではシャンプーか柔軟剤か、そのようなものだとは思うが、結衣のいいところはそれだけではない。

今日の服も表情もとても良くて、素直に褒めたら、褒めすぎだと照れてしまう。

でも褒められて嬉しそうだったので、ご褒美下さいと言ってみた。
「なんですか、それ」
結衣がくすくす笑っている。

「耳を貸して?」
少しだけ迷った様子はあったけれど、結衣は素直に首を傾げた。

ちょっと距離を縮めたい。
けれど、それだけではなくて、いちばんは聞いてみたいのだ。

結衣のその声で自分の名前を呼んで欲しい。

「名前で、呼んで?」
結衣の身体がぴくっと揺れる。

蓮根の呼んでほしい、に少なからず官能の匂いを感じ取ったのかもしれない。

声フェチの蓮根に、人の声を聞くプロフェッショナルである結衣。

気付いたかもなとは思ったけれど、無邪気を装って、ん?と結衣に向かって首を傾げて見せる。

とても、とても戸惑っているし、それが越えてもいいラインなのかどうか、非常に慎重に判断している様子だ。

その警戒心は正しい。
けれど、蓮根は結衣が優しいことも知っている。

「涼真って、言って?」
蓮根にとってはそれだけでも前戯のようなものだ。

「涼真さん……」
恥じらいながらのそれは、下半身にくる。
「は……あっ、すごくいい」
つい、熱い息が漏れてしまった。

大好きな人が大好きな声で自分の名前を恥じらい気味に呼ぶ。

良すぎるだろう。

「結衣さん、お願いです。もう1回」
「なんか、やだ」
「お願いします。もう1回だけ!」

そこで蓮根は逃がさない、とばかりに結衣をぎゅうっと抱きしめた。
ふと気付くと、腕の中の結衣が赤くなっている。

蓮根としては特に照れてしまうような要素はなかったと思っていたので、体調が悪いのかと一瞬心配になった。

「変なんです、私。声フェチとかじゃないのに蓮根先生の声にはどきどきします。それにあんなふうにぎゅってしたら、先生こそいい香りなんです!」

おや……?
「結衣さん……僕の声好きなんですか?」

「分かりません。今までそんなこと考えたことないから。でも……どきどきするんです」

何を言っているのか、分かっているのだろうか。

思い当たることがあるとすれば、結衣の感応性の高さだ。
どういう環境で身についたものか分からないが、結衣は相手の言葉や、それ以外のものから相手の状況を察することに長けている。

相手のことを自分の事のように、感じて察する能力が非常に高い。
だからこそ、非常時に対応する保険会社に向いているのだとは思うが。

蓮根が結衣を分析して思うのは、さらに感受性が豊かということだ。

おそらく最初の電話の時、蓮根が結衣の何を聞いていたのか、自然に汲み取っていたのではないかと思う。

『声』を聞いていた蓮根。
その『声』を聞かれているということに反応した結衣。

だから急に蓮根が発する声を聞こうとしている自分が訳分からなくて、こんなことを言い出しているのではないのか。

もちろん蓮根自身は意識的に、結衣を落とすことに全力を傾けている。
発している雰囲気も、声も動きも意識下でも無意識下でも結衣を落とそうとしている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・

希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!? 『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』 小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。 ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。 しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。 彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!? 過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。 *導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。 <表紙イラスト> 男女:わかめサロンパス様 背景:アート宇都宮様

氷の上司に、好きがバレたら終わりや

naomikoryo
恋愛
──地方から本社に異動してきた29歳独身OL・舞子。 お調子者で明るく、ちょっとおせっかいな彼女の前に現れたのは、 “氷のように冷たい”と社内で噂される40歳のイケメン上司・本庄誠。 最初は「怖い」としか思えなかったはずのその人が、 実は誰よりもまっすぐで、優しくて、不器用な人だと知ったとき―― 舞子の中で、恋が芽生えはじめる。 でも、彼には誰も知らない過去があった。 そして舞子は、自分の恋心を隠しながら、ゆっくりとその心の氷を溶かしていく。 ◆恋って、“バレたら終わり”なんやろか? ◆それとも、“言わな、始まらへん”んやろか? そんな揺れる想いを抱えながら、仕事も恋も全力投球。 笑って、泣いて、つまずいて――それでも、前を向く彼女の姿に、きっとあなたも自分を重ねたくなる。 関西出身のヒロイン×無口な年上上司の、20話で完結するライト文芸ラブストーリー。 仕事に恋に揺れるすべてのOLさんたちへ。 「この恋、うちのことかも」と思わず呟きたくなる、等身大の恋を、ぜひ読んでみてください。

【書籍化】Good day ! 2

葉月 まい
恋愛
『Good day ! 』シリーズVol.2 人一倍真面目で努力家のコーパイ 恵真と イケメンのエリートキャプテン 大和 結ばれた二人のその後は? 伊沢、ごずえ、野中キャプテン… 二人を取り巻く人達の新たな恋の行方は? ꙳⋆ ˖𓂃܀✈* 登場人物 *☆܀𓂃˖ ⋆꙳ 日本ウイング航空(Japan Wing Airline) 副操縦士 藤崎 恵真(28歳) Fujisaki Ema 機長 佐倉 大和(36歳) Sakura Yamato

恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~

泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の 元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳  ×  敏腕だけど冷徹と噂されている 俺様部長 木沢彰吾34歳  ある朝、花梨が出社すると  異動の辞令が張り出されていた。  異動先は木沢部長率いる 〝ブランディング戦略部〟    なんでこんな時期に……  あまりの〝異例〟の辞令に  戸惑いを隠せない花梨。  しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!  花梨の前途多難な日々が、今始まる…… *** 元気いっぱい、はりきりガール花梨と ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

そういう目で見ています

如月 そら
恋愛
プロ派遣社員の月蔵詩乃。 今の派遣先である会社社長は 詩乃の『ツボ』なのです。 つい、目がいってしまう。 なぜって……❤️ (11/1にお話を追記しました💖)

処理中です...