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何度も恋をする
何度も恋をする①
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「珠月……」
甘く、自分を呼ぶ声と、温かい手が髪に触れる感覚。
ゆるりと、自分の意識が戻る気配。ふわっと、頬に指が触れた。
「ん……」
珠月はゆっくり目を開ける。
「圭さ……ん?」
「うん。おはよ珠月」
今日も綺麗な圭一郎がベッドの端に座り、柔らかく微笑んでいる。
今日は、濃紺のシャツと、オフホワイトのパンツで、その長い足を組んで片手をベッドについて、首を傾げていた。
珠月は、ぱっ!と布団の中に潜り込む。
「珠月? どうしたの?」
「だって! 寝起きなんだもの!」
布団の中から珠月は答えた。
だって寝顔とか寝起きとか、すっごく見られた!恥ずかしい!
大丈夫かな。口とか開けてなかったかな。なんで朝から圭一郎さん、あんなに素敵なの⁉︎
「それはそうだよ、俺が起こしに来たんだから。みーつき、ほら顔見せてよ」
ミノムシのように布団の中に潜り込んでしまっている上から、つんつん、とつつかれているのが分かる。珠月は小さな声で伝えた。
「寝起きなんて恥ずかしい……」
「今まで何度も見ているんだけどなぁ」
圭一郎がそっと布団をめくるので、珠月は顔の半分くらいを布団から覗かせる。
「何で、朝からそんなに素敵なの」
圭一郎はきょとん、としている。
「誰が?」
「圭さんです」
「はーっ、もう珠月こそなんで朝からそんなに可愛いの。俺が聞きたいよそれは」
布団ごときゅうっと抱きしめられると、圭一郎のつけているフレグランスが珠月の鼻をくすぐって、ますます胸の鼓動を大きくさせる。
「俺の珠月は朝からすごく可愛い。だから寝起きも可愛い。それに……」
胸の中に包まれて話をされているので、少しくぐもった声すら落ち着く。
「もう遅いよ。ずっと見てたから。珠月の寝顔。堪能しきってから声をかけたんだ」
「圭さん、ひどいーっ」
「あはは! ほーら、起きなさい。お腹空いただろう。下にご飯を用意したから」
起きなさいと腕を引いてくれたので、珠月はベッドから身体を起こした。
ずっと寝顔まで見られていたのでは、仕方ないと観念して、ベッドから出ようといつものように足をつく。
「痛っ……」
「珠月!」
ケガをしたのをすっかり忘れていて、つい、いつも通りにしてしまったら捻った方の足を床に付いてしまったようだった。
思ったより強い痛みがあって、珠月が声を上げてしまうと、圭一郎がすごい勢いで珠月の足元に駆け寄ってくる。
「まだ、負荷をかけてはいけないと言ったのに」
「ん、ごめんなさい」
珠月はその場で圭一郎に、抱き上げられた。
「……っ! 圭一郎さん! 重いからだめです!」
「たいした事ないよ。珠月は軽い。それに安静って言う主治医の指示を聞かないから」
ダメとか降ろしてとか言っても、一切聞いてもらえず
「暴れたら、階段から落ちるかも」
と笑顔で言われてしまったので、珠月は圭一郎の首にぎゅっと抱きついた。
「そうそう。そうして。いい子だね」
甘い圭一郎の声。とんとん、と階段を降りる気配。
階段を降りると1階はリビングとダイニングとキッチンがひとつになっている、広い空間だった。
圭一郎はダイニングの椅子に、そっと珠月を降ろす。
大きなダイニングテーブルには、朝食が用意されていた。
ランチョンマットの上に、白い大きなお皿と、その上には、彩り良くサラダやスクランブルエッグ、パンが置かれている。
「美味しそう」
昨日のおじやも美味しかったし、圭一郎は料理が得意のようだ。
「今、コーヒーを持っていくから、食べていていいよ」
「え、一緒に食べましょう」
圭一郎が冷蔵庫のドアを閉めながら、ダイニングにいる珠月に笑顔を向ける。
「じゃあ、すぐ行くから」
圭一郎の片手にコーヒーのマグが二個ある。
もう片方の手には、ミルクピッチャーだ。
「はい」
と目の前にコーヒーを置かれて、珠月はミルクをコーヒーに入れる。
圭一郎は、ふっと目を細めた。
「どうしたの?」
甘く、自分を呼ぶ声と、温かい手が髪に触れる感覚。
ゆるりと、自分の意識が戻る気配。ふわっと、頬に指が触れた。
「ん……」
珠月はゆっくり目を開ける。
「圭さ……ん?」
「うん。おはよ珠月」
今日も綺麗な圭一郎がベッドの端に座り、柔らかく微笑んでいる。
今日は、濃紺のシャツと、オフホワイトのパンツで、その長い足を組んで片手をベッドについて、首を傾げていた。
珠月は、ぱっ!と布団の中に潜り込む。
「珠月? どうしたの?」
「だって! 寝起きなんだもの!」
布団の中から珠月は答えた。
だって寝顔とか寝起きとか、すっごく見られた!恥ずかしい!
大丈夫かな。口とか開けてなかったかな。なんで朝から圭一郎さん、あんなに素敵なの⁉︎
「それはそうだよ、俺が起こしに来たんだから。みーつき、ほら顔見せてよ」
ミノムシのように布団の中に潜り込んでしまっている上から、つんつん、とつつかれているのが分かる。珠月は小さな声で伝えた。
「寝起きなんて恥ずかしい……」
「今まで何度も見ているんだけどなぁ」
圭一郎がそっと布団をめくるので、珠月は顔の半分くらいを布団から覗かせる。
「何で、朝からそんなに素敵なの」
圭一郎はきょとん、としている。
「誰が?」
「圭さんです」
「はーっ、もう珠月こそなんで朝からそんなに可愛いの。俺が聞きたいよそれは」
布団ごときゅうっと抱きしめられると、圭一郎のつけているフレグランスが珠月の鼻をくすぐって、ますます胸の鼓動を大きくさせる。
「俺の珠月は朝からすごく可愛い。だから寝起きも可愛い。それに……」
胸の中に包まれて話をされているので、少しくぐもった声すら落ち着く。
「もう遅いよ。ずっと見てたから。珠月の寝顔。堪能しきってから声をかけたんだ」
「圭さん、ひどいーっ」
「あはは! ほーら、起きなさい。お腹空いただろう。下にご飯を用意したから」
起きなさいと腕を引いてくれたので、珠月はベッドから身体を起こした。
ずっと寝顔まで見られていたのでは、仕方ないと観念して、ベッドから出ようといつものように足をつく。
「痛っ……」
「珠月!」
ケガをしたのをすっかり忘れていて、つい、いつも通りにしてしまったら捻った方の足を床に付いてしまったようだった。
思ったより強い痛みがあって、珠月が声を上げてしまうと、圭一郎がすごい勢いで珠月の足元に駆け寄ってくる。
「まだ、負荷をかけてはいけないと言ったのに」
「ん、ごめんなさい」
珠月はその場で圭一郎に、抱き上げられた。
「……っ! 圭一郎さん! 重いからだめです!」
「たいした事ないよ。珠月は軽い。それに安静って言う主治医の指示を聞かないから」
ダメとか降ろしてとか言っても、一切聞いてもらえず
「暴れたら、階段から落ちるかも」
と笑顔で言われてしまったので、珠月は圭一郎の首にぎゅっと抱きついた。
「そうそう。そうして。いい子だね」
甘い圭一郎の声。とんとん、と階段を降りる気配。
階段を降りると1階はリビングとダイニングとキッチンがひとつになっている、広い空間だった。
圭一郎はダイニングの椅子に、そっと珠月を降ろす。
大きなダイニングテーブルには、朝食が用意されていた。
ランチョンマットの上に、白い大きなお皿と、その上には、彩り良くサラダやスクランブルエッグ、パンが置かれている。
「美味しそう」
昨日のおじやも美味しかったし、圭一郎は料理が得意のようだ。
「今、コーヒーを持っていくから、食べていていいよ」
「え、一緒に食べましょう」
圭一郎が冷蔵庫のドアを閉めながら、ダイニングにいる珠月に笑顔を向ける。
「じゃあ、すぐ行くから」
圭一郎の片手にコーヒーのマグが二個ある。
もう片方の手には、ミルクピッチャーだ。
「はい」
と目の前にコーヒーを置かれて、珠月はミルクをコーヒーに入れる。
圭一郎は、ふっと目を細めた。
「どうしたの?」
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