24 / 61
End of confinement
End of confinement①
しおりを挟む
圭一郎は、腕の中の珠月を見つめる。
そうして珠月の頬をそうっと撫でた。
ここ一日二日、珠月がもの言いたげにしているのは分かっている。
昨夜の珠月は妙に積極的だった。
けれど積極的だからと言って安心した気持ちになれないのは、なにかを言いたげにしている珠月を見て自分が不安だからだ。
自分の腕の中で目を閉じている珠月は本当に愛おしいし、なくしたくないと思う。
ずっと見守ってきただけの珠月が、自分を見て名前を呼んで、肌を重ねる。
『ヤったら飽きるだろ?』
そんな事を言っていた、友人もいた。
けれど珠月に対して、飽きるなどということは有り得ない。
何度触れても何度キスをしても、何度名前を呼ばれても、そして何度肌を重ねても飽きるなどということはないだろう。
むしろもっと欲しいと思う。
寝る時間すら惜しい。
間違いだと分かっていても、それを選ぶことしか出来なかったし、同じ時点に戻ったら何度でも同じことをするだろう。
「かわいそうな珠月……。俺みたいなのに捕まっちゃって……」
まだ空けきらない夜の中で、圭一郎は腕の中の珠月のその白い顔にそっと指を滑らせた。
「それでも逃さないけどね」
もう離さないと決めたから。
どんなことをしてでも。
別荘は森の中で、朝起きると鳥のさえずりが聞こえる。
圭一郎もそのさえずりの声で目を覚ました。
いつもなら隣にいるはずの珠月がいない。
「珠月!」
2階の客間から階段を駆け下りて、1階のリビングを見回す。
まさか、外に1人で出るような事はないとは思うが。
今まで外に出ていない珠月は、道路までの出方も分からないはずだ。
別荘は敷地の奥に建っているので、敷地から出るのにも道が分からなければ、森の中で迷うことになる。
それよりも……珠月の姿が見えない、というその事に圭一郎は言い知れない恐怖を覚えたのだ。
「珠月!」
もう一度、名前を呼ぶと、
「はぁい」
と返事があり、リビングの外のウッドデッキを降りたところに珠月がいた事が分かった。
「珠月……」
「もう! 圭一郎さんてば、そんなに大きな声を出したら、リスが逃げちゃうわ」
圭一郎はリビングから外に続くガラス戸を、そっと開けた。
朝の光の中で緑に囲まれて微笑む珠月は、このまま切り取って絵にでもしたいくらいに綺麗だ。
珠月は爽やかな白とブルーのストライプのワンピースを身に纏っていて、光の中から圭一郎に笑いかける。
圭一郎はゆっくり珠月に歩み寄って、そっと抱きしめた。
珠月の手が背中に回るのを感じる。
「起きたら君がいないから……」
「リスにご飯をあげていただけ。けれど……」
「けれど?」
緑の中で2人はしっかり抱き締め合う。
誰もここにはいない。
「きっといつまでも、こうしている事はできないのよね?」
「珠月!?」
珠月の細い声を聞いて、圭一郎は自分から珠月を引き離し、珠月の肩を掴む。
「ど、どうしたの?」
急に肩を掴まれて、珠月は驚いたように圭一郎を見ていた。
「珠月、そんな事言わないでくれ。君がいないだけでも不安になるのに、そんな風にこうしていることは出来ないなんて」
圭一郎はぎゅうっと珠月を抱きしめた。
「ここで、こうしていてはいけない?」
「私もここでずうっとこうしていたいわ。でも圭一郎さんは……」
何かを言おうとした珠月の言葉を押し込めるように、圭一郎は言葉を返す。
「珠月もそうしたいなら、なぜこうしていることは出来ないなんて言うんだ?」
珠月は圭一郎を抱き返した。
動揺してひたすらに珠月を抱きしめる圭一郎のその背中を、珠月はそっと抱きしめる。
そうして珠月の頬をそうっと撫でた。
ここ一日二日、珠月がもの言いたげにしているのは分かっている。
昨夜の珠月は妙に積極的だった。
けれど積極的だからと言って安心した気持ちになれないのは、なにかを言いたげにしている珠月を見て自分が不安だからだ。
自分の腕の中で目を閉じている珠月は本当に愛おしいし、なくしたくないと思う。
ずっと見守ってきただけの珠月が、自分を見て名前を呼んで、肌を重ねる。
『ヤったら飽きるだろ?』
そんな事を言っていた、友人もいた。
けれど珠月に対して、飽きるなどということは有り得ない。
何度触れても何度キスをしても、何度名前を呼ばれても、そして何度肌を重ねても飽きるなどということはないだろう。
むしろもっと欲しいと思う。
寝る時間すら惜しい。
間違いだと分かっていても、それを選ぶことしか出来なかったし、同じ時点に戻ったら何度でも同じことをするだろう。
「かわいそうな珠月……。俺みたいなのに捕まっちゃって……」
まだ空けきらない夜の中で、圭一郎は腕の中の珠月のその白い顔にそっと指を滑らせた。
「それでも逃さないけどね」
もう離さないと決めたから。
どんなことをしてでも。
別荘は森の中で、朝起きると鳥のさえずりが聞こえる。
圭一郎もそのさえずりの声で目を覚ました。
いつもなら隣にいるはずの珠月がいない。
「珠月!」
2階の客間から階段を駆け下りて、1階のリビングを見回す。
まさか、外に1人で出るような事はないとは思うが。
今まで外に出ていない珠月は、道路までの出方も分からないはずだ。
別荘は敷地の奥に建っているので、敷地から出るのにも道が分からなければ、森の中で迷うことになる。
それよりも……珠月の姿が見えない、というその事に圭一郎は言い知れない恐怖を覚えたのだ。
「珠月!」
もう一度、名前を呼ぶと、
「はぁい」
と返事があり、リビングの外のウッドデッキを降りたところに珠月がいた事が分かった。
「珠月……」
「もう! 圭一郎さんてば、そんなに大きな声を出したら、リスが逃げちゃうわ」
圭一郎はリビングから外に続くガラス戸を、そっと開けた。
朝の光の中で緑に囲まれて微笑む珠月は、このまま切り取って絵にでもしたいくらいに綺麗だ。
珠月は爽やかな白とブルーのストライプのワンピースを身に纏っていて、光の中から圭一郎に笑いかける。
圭一郎はゆっくり珠月に歩み寄って、そっと抱きしめた。
珠月の手が背中に回るのを感じる。
「起きたら君がいないから……」
「リスにご飯をあげていただけ。けれど……」
「けれど?」
緑の中で2人はしっかり抱き締め合う。
誰もここにはいない。
「きっといつまでも、こうしている事はできないのよね?」
「珠月!?」
珠月の細い声を聞いて、圭一郎は自分から珠月を引き離し、珠月の肩を掴む。
「ど、どうしたの?」
急に肩を掴まれて、珠月は驚いたように圭一郎を見ていた。
「珠月、そんな事言わないでくれ。君がいないだけでも不安になるのに、そんな風にこうしていることは出来ないなんて」
圭一郎はぎゅうっと珠月を抱きしめた。
「ここで、こうしていてはいけない?」
「私もここでずうっとこうしていたいわ。でも圭一郎さんは……」
何かを言おうとした珠月の言葉を押し込めるように、圭一郎は言葉を返す。
「珠月もそうしたいなら、なぜこうしていることは出来ないなんて言うんだ?」
珠月は圭一郎を抱き返した。
動揺してひたすらに珠月を抱きしめる圭一郎のその背中を、珠月はそっと抱きしめる。
0
あなたにおすすめの小説
財閥御曹司は左遷された彼女を秘めた愛で取り戻す
花里 美佐
恋愛
榊原財閥に勤める香月菜々は日傘専務の秘書をしていた。
専務は御曹司の元上司。
その専務が社内政争に巻き込まれ退任。
菜々は同じ秘書の彼氏にもフラれてしまう。
居場所がなくなった彼女は退職を希望したが
支社への転勤(左遷)を命じられてしまう。
ところが、ようやく落ち着いた彼女の元に
海外にいたはずの御曹司が現れて?!
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
お見合いから本気の恋をしてもいいですか
濘-NEI-
恋愛
元カレと破局して半年が経った頃、母から勧められたお見合いを受けることにした涼葉を待っていたのは、あの日出逢った彼でした。
高橋涼葉、28歳。
元カレとは彼の転勤を機に破局。
恋が苦手な涼葉は人恋しさから出逢いを求めてバーに来たものの、人生で初めてのナンパはやっぱり怖くて逃げ出したくなる。そんな危機から救ってくれたのはうっとりするようなイケメンだった。 優しい彼と意気投合して飲み直すことになったけれど、名前も知らない彼に惹かれてしまう気がするのにブレーキはかけられない。
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる