【R18】吐息で狂うアルゴリズム

春宮ともみ

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吐息で狂うアルゴリズム

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「あ゛~っ! またゲージ割れたぁっ」

 オレンジ色のゲージメーターが乾いた音を鳴らしながらパリンと割れる。と同時に、『ウデマエキープ!』という文字がゲーミングモニターのディスプレイに鮮やかに流れていく。コントローラーを持ったままの真衣まいは悲痛な声をあげてPCデスクに身体を預け、がっくりと項垂れた。

「ドンマイ。まぁ、今のは真衣のエイムの無さが敗因だな。試合後半、落とせる敵を落とせてなかったしな」

 リビングのテーブルを仕事の資料で占領している拓海たくみは真衣が明らかにしょぼくれた様子を認識し、手元のレジュメを眺めながら淡々と返答をする。
 真衣が現在プレイしているのは、イカになって高速移動が出来るキャラクターを操作し、設定された目的ゴールに従って4対4にわかれて試合をするというオンライン対戦型のシューティングゲームだ。
 拓海と真衣が結婚したてのころに発売されたこのソフトに先にはまったのは、根っからのゲーム好きである拓海だった。彼がゲームに熱中している間、真衣は結婚前からの趣味である読書に没頭することが多かったのだが、このゲームに登場するキャラクターは『ヒト型になれるイカたち』で、『イカたちはオシャレ好き』という特性をもっていた。試合を重ねることで操作するイカたちを着飾ることができるというシステム、そしてゲームの勝利画面やホーム画面でのイカたちの愛くるしいモーションに、可愛いもの好きである真衣が興味をそそられないはずもなかった。また、『床を塗って自分のチームの色の範囲が多い方が勝ち』という初心者にも入りやすい簡単なルール設定も相まって、真衣もたちまちはまってしまったのだ。
 真衣はこれまでの人生でゲームなど触れたことなく、ゲーム機本体すらも自分で購入したことがなかった。が、外国人留学生が多く通う日本語学校の講師である拓海の卓越した『教える技術』によって、真衣もあっという間に拓海と肩を並べるレベルまで上達した。学生時代に卓球部だった真衣は動体視力が高く、それゆえにシューティングゲーム特有の早いゲームスピードにもなんなくついていけたのだろうが、やはりほかのゲームで培った経験値もあってゲームセンスや、対戦する敵に照準を正確に合わせることができるエイム能力という観点でいけば拓海のほうが上だった。

「わかってる……後半エイムが無さすぎたのもわかってる、けど」
「ちゃんとエイム練習やらねぇとエックスにはなれねぇぞ~」

 テーブルに広げたレジュメをトントンと整えた拓海が楽し気に口元に笑みを浮かべ、椅子の上でくんっと背伸びをした。
 このゲームでは『ウデマエ』というランクが存在するオンライン対戦モード、『ガチマッチ』がある。試合に勝てばランクポイントが増え、負けたら減るという至極単純なもの。それらのポイントの増減によって『ウデマエ』がランクアップ、またはランクダウンしていき、試合を重ねることでこの『ウデマエ』を高めるという構造だ。最初はCたいからはじまり、B帯、A帯、S帯、そして最上位のX帯へとランクアップしていく。
 拓海は一月ひとつき前にX帯に到達したので、それ以降はしばらくオンライン対戦モードから離れており、たまにワーキングホリデー仲間とフレンドでチームを組んで参加する『リーグマッチ』というフレンド対戦モードに入るくらいだ。
 一方の真衣は、現在S帯で停滞中。今の真衣に足りないのはエイムの精度だ。拓海はそれをわかっているので、真衣がX帯に昇格するまでは一緒にチームを組んで遊ぶことをやめると宣言した。一緒にチームを組むと真衣は無意識のうちに拓海を頼るため、それが彼女のエイム精度の低さに直結している――試合中の真衣の動きを見た拓海はそう感じたからだ。
 真衣は拓海とチームを組んで遊びたい感情と、拓海と同じランクになりたい感情を同居させている。そのため、こうして休日になるとさみしさを抱えながら自身を奮起させつつひとりでコントローラーを握り締める日々を過ごしていた。

「じゃぁエイム練習付き合って! タイマンで鍛えてよぅ」
「やだ。試し撃ち場での練習法教えたろ? あれやっとけよ」
「あれひとりで黙々とやらなきゃいけないじゃん、さみしいんだもん」
「だ~か~ら~。あのひとりでやる単純な繰り返し練習が基礎なんだっつの。なんでも基本は大事だろ? 英会話だって実際に聞いて喋る単純な繰り返しが基礎なんだって、真衣もわかってっだろ」
「う~~~」

 ワーキングホリデー先が一緒だった同い年のふたりは異国の地であっという間に意気投合。日本人同士というアドバンテージもあり少しずつ距離が近づき、自然と恋仲となっていった。英語に携わる仕事がしたいという将来の夢が一緒だったので、ふたりでカナダやオーストラリアなどを転々とした三年間の留学期間をともに過ごし、帰国後に拓海は日本語学校に就職、真衣は在宅ワークが主の翻訳の仕事に就いた。留学期間中もほぼ同棲状態だったため、帰国後も生活をともにし、社会人としての生活基盤が整ってすぐに拓海がプロポーズした。
 互いに全部が初めてだった。愛情表現に関しては一等不器用な拓海は、これまで真衣に甘い言葉などまともに囁けたことがない。だが、真衣が自宅で翻訳の仕事を行っている日は必ず帰り道でちょっとした差し入れを買って帰宅するなど、気遣いを忘れたことがないのだ。日常のひとつひとつの出来事が愛おしい、と、真衣は日々実感している。
 ふたりで婚姻届を提出してもうそろそろ季節が一回りする。拓海と真衣の新婚生活は、前述のようにただただ幸福に満ちてあふれていた。穏やかで平坦な日常ではあるが、それがなによりの幸福であるのだということは、ふたりの共通認識であった。拓海がゲーム初心者である真衣に手取り足取り、根気強くゲームのことを教えたりして面倒を見るのも、真衣と一緒に過ごす何気ない時間を大切に思っているからこそ。真衣自身も拓海の一見厳しい言動を愛情の裏返しと感じているので、もっと上達して拓海と肩を並べるX帯に昇格し、早く一緒にリーグマッチで遊びたいと考えているのだ。

「じゃぁ。負けた方が勝った方の言うこと聞くっていうルールでタイマン、どう?」

 リーグマッチであれば拓海とふたりで同じ試合に挑めるが、ガチマッチはオンライン上で無作為に繋がった4人でチームを組む。ひとりで取り組むガチマッチは思っている以上に孤独な時間だ。拓海も真衣と同じようにガチマッチに臨んでいるのならまだしも、現状そうではない。真衣としては募るさみしさに心が折れそうだった。
 プライベートモードで行う1対1のタイマン勝負も断られてしまった。一緒にリーグマッチに入るのは一月前から宣言されているので、はなから無理な選択肢だ。ならば、タイマン勝負ならば――負けず嫌いで、真衣に対しては意地の悪い拓海の性格を考えれば、きっとこれには乗ってくれるだろう。そんな苦肉の策を絞り出した真衣は瞳を輝かせながら背後を振り返る。
 賭けごとつきのタイマン勝負。その言葉に、拓海はぴくりと身体を震わせた。

「……わかった。受けて立とう」

 真衣自身が望んでいるように、拓海が彼女に上達して欲しいと思っている感情は本物だ。だが、ここ1ヶ月の休日は真衣がガチマッチに集中しており、わずかばかりのが拓海の感情の奥底にあることも、消せない事実だった。

「プラベの部屋立てとく!」
「はいよ~」

 拓海の思惑はつゆ知らず、真衣はさきほどのガチマッチの敗北で手放したコントローラーを嬉々として握り締める。彼女の弾んだ嬉し気な声色に、拓海は顔に苦笑いを貼り付けながら――仄暗い薄闇をまとって膨らむ感情をひた隠し、内心で小さくほくそ笑んだ。
 椅子から立ち上がった拓海はリビングの隅にL字型に配置したPCデスクに歩み寄る。角を挟んだ真衣の右隣に腰かけ、自分のゲーム機を起動させた。ソフトを立ち上げ、ゆっくりとコントローラーを握る。
『負けたら勝った側の言うことを聞く』という、根っからの加虐嗜好者サディストである拓海の嗜虐心を大いに刺激する条件つきの勝負だ。しかもそれは真衣からの提案。存分に楽しませてもらおうではないか――そう心の中で独り言ちた拓海は、彼女に気が付かれぬようそっと種を蒔くことにした。
 ゲーミングモニターに表示されたカスタマイズ画面を操作し、拓海はコントローラーの感度を上げる。感度とはコントローラーを動かしたときのカメラワークの速度のことだ。感度が低ければ画面の揺れが少なくなるので敵を倒しやすくなるが、相対的に機敏な動きが難しくなる。逆に、感度が高ければ少しの動きでも画面が大きく揺れるので敵を倒すときに不利になるが、キャラクターを俊敏に操作できる。自分に合った感度を探すのもゲームセンスのひとつだ。

「俺も久しぶりだからなぁ。エイムねぇかもしれん」

 エイムを鍛えるためのタイマン勝負では『チャージャー』という武器を使用するのがふたりの間での暗黙のルールになっていた。チャージャーはスナイパーライフルのような構造をしており、エイム精度が高ければ高いほど敵を一発で倒すことができる武器だ。このため、コントローラーの感度はが有利に働く。真衣は自分のコントローラーの感度を低く設定し、待機画面へと移動した。

「なにそれ、負けた時の予防線?」
「さぁて、どうだろうなぁ。俺はこれでもXだからな~、Sの真衣には負けられねぇなぁ」

 拓海の小さな呟きを拾った真衣は揶揄うように言葉を返したが、拓海はニヤリと口元を歪め、真衣を挑発するように意地の悪い笑みを浮かべる。その表情に真衣は不満げに口の先を尖らせ肘で拓海の身体を軽く押すが、拓海はどうということはないというようにくっと喉を鳴らしていく。

「ほら、始めんぞー」
「わかってる! ちょー久しぶりの拓海になんか負けないんだから!」

 拓海のその言葉とともに1試合目が始まった。ステージ中央に置かれた遮蔽物の角で互いに斜線を隠しながら、時にフェイントをかけながら互いを狙い倒しあっていく。

「やった~!」
「くっそ~……まじかよ……やっぱエイム鈍ってんな……」

 1クールの5分が経過し、真衣が拓海を倒した回数が5回、反対に拓海が真衣を倒した回数が3回。このため、1試合目は真衣の勝利。拓海はがっくりと肩を落とすをしながらコントローラーをPCデスクの上に投げ出した。
 演技をしているとはいいながらも、拓海は手加減してわざと負けたわけではない。コントローラーの感度が高かったため、照準がなのだから。

「んで? なにやりゃいいんだ、俺は」

 ガシガシと頭を掻きながら拓海は真衣に向き直った。『負けたら勝った側の言うことを聞く』、というのがこのタイマン勝負のルール。

「ん~、じゃぁねぇ、下のコンビニでハーゲンダッツ買ってきて!」

 勝利した真衣は上機嫌にカスタマイズ画面を操作していく。どうやら拓海は真衣が思っていたよりもエイムが鈍っているようで、この調子であれば全勝も目ではないという嬉しさから真衣は鼻歌まじりに拓海に声をかけた。
 音符が飛んでいるような真衣の笑顔を横目に、「はいよ」と返答した拓海はにやついた笑いを深くした。自身が仕掛けた罠に気づかず堕ちかけている愛おしい妻の姿は、拓海の歪んだ感情に拍車をかけていく。

「ほい。買ってきたぞ」

 帰宅した拓海の手によって自身の好みのフレーバーを目の前に差し出された真衣は驚いてぱちりと目を瞬かせる。

「これっ……! 期間限定のピスタチオ!」

 買い物にでた拓海は真衣が一番好きなフレーバーのカップを持ち帰ってきた。こうした賭けごとの最中であっても拓海は素知らぬふりをしながらも真衣の好物を選んで買ってくる。彼のこうした小さな行動で、真衣は拓海に深く愛されていることをひたひたと実感していく。ゆっくりと相好を崩した真衣は視線を上に向け、わずかに赤らんだ拓海のむくれたような表情を含んだ笑みで見つめた。

「ありがと、拓海」
「……次は俺が勝つからな」
「ふっふ~ん。エイム絶好調な真衣ちゃんに勝てるといいわね」
「はいはい、言ってろ言ってろ」

 真衣の要望の通りにハーゲンダッツを持ち帰った拓海はコントローラーの感度を操作し、上機嫌の真衣をさらりといなしてどっかりと椅子に座り込む。
 そうして始まった2試合目。この試合は拓海の宣言通り、5対4で拓海の勝利となった。

「あ゛~っ、あと10秒あったら絶対同点だった! 悔しいぃい!」

 惜しくも敗北してしまった真衣は地団駄を踏む。拓海はニヤニヤと愉しげに笑みを浮かべ、優雅にひらひらと手を振った。

「じゃ、俺にもハーゲンダッツ買ってきて。カップじゃなくてサンドしてある方のキャラメル味な」
「……わかりましたよーっ! 次は私が勝つんだから!」

 拓海の挑発するような笑みにプリプリと頬を膨らませた真衣は玄関を出てエレベーターに乗り、コンビニに向かう。目的のものを購入して足早に自宅に戻ると、拓海は相変わらず意地の悪い笑みを浮かべて帰宅した真衣に飄々と声をかけた。

「おかえり。そんな急がねぇでもよかったのに」
「だって、なんかムカつくんだもん! 次は私が勝つからねっ!」
「はいはい」

 こうして余裕ぶった演技をし、真衣を挑発するのも拓海の思惑のひとつであるのだが、頭に血がのぼり始めている真衣は気がつかない。
 もう1試合、真衣に花を持たせるほうがよりになりそうだ――そう確信した拓海はむすくれたままカスタマイズ画面を操作している真衣を横目に陶然とうぜんと口の端を歪め、真衣と同じように画面を操作した。
 3試合目は真衣の勝利に落ち着いた。ふたたび上機嫌になった真衣は、このマンションの入り口に設置してある自動販売機で拓海にジュースを買ってくるように言い、拓海はしぶしぶながらという表情を作りつつそれに従った。
 続く4試合目は、コントローラーの感度を通常の状態に戻した拓海の圧勝だった。不機嫌に眉を顰めた真衣がむくれたまま拓海に視線を向けた。

「俺の勝ちだな」
「…………今度はなに買ってきたらいいのよ」

 さっきまで拓海のエイムはあんなに鈍かったが、今の試合は真衣は拓海に手も足も出なかった。納得がいかない真衣はそれでも自分をなんとか納得させる方向へと思考を巡らせる。試合を重ねるごとに拓海のエイム精度が戻ってきているのだ、というように。あながち間違ってもいないのだが、真実は拓海が押し隠したまま。

「ん~? 買い物には行かねぇでいいぞ?」
「え、」

 拓海の考えが読めないでいる真衣は、拓海が席を立つのをコントローラーを持ったままきょとんと眺めた。一方、洗面所に向かった拓海は真衣が所持する女性向けの電気シェーバーとコームのついた小さな眉ハサミを手に取り、PCデスクへと戻る。

「……?」

 締りのない顔をした真衣を見遣った拓海は愉悦交じりの嗤いを一層深くし、揶揄うように真衣の耳元で低く囁いた。

「コレで下の毛、剃ってきな」

 拓海の薄い唇から放たれた言葉に、一瞬、真衣の思考回路が止まる。ギシ、と、椅子が小さく軋む音がリビングに響いた。

「あぁ、そうか。『剃らせろ』のほうがぜってぇ面白れぇな。よし、変更」
「ッ、」

 鼓膜に直接注ぎ込まれるような蠱惑的な拓海の低音が真衣の全身に火を灯す。なにを言われたのかようやく理解した真衣はひゅっと呼吸を止めた。
 ここ1ヶ月、真衣は休みになればゲームに熱中していた。真衣が挑んでいるガチマッチは勝つための行動を意識することが重要視される。そのためには敵味方の生存人数を把握することだったり、試合の流れを掌握することだったり、打開と抑えのターンを意識することだったりと、とにかく頭を使うのだ。ゲームに没頭した日は思考を酷使した疲れから真衣は早めに就寝してしまうので、――の方がずいぶんと、なのだ。
 結婚して以降の拓海は、焦らすようなねちっこいセックスを好むようになった。そもそも、その要因は真衣にあるのだが、拓海がその理由を口にすることはないので真衣はそれを知らない。そのうえに拓海が底なしの体力で絶倫を誇るため、真衣は一度身体を重ねるとヘトヘトになってしまう。それを嫌だと真衣は感じたことはないものの、拓海の性急なスイッチの入り具合、そして突きつけられた度肝を抜くような要求に顔を赤くして激しく狼狽えていた。

「そっ、そんなのっ、」
「真衣が言ったんだからな。負けた方が勝った方のいうことを聞く、って」

 獣欲の焔を宿した拓海が舌なめずりをするように真衣の瞳を捕らえた。確かにその条件を提示して拓海をゲームに誘ったのは真衣自身だが、彼女としては1試合目のようになにかを買ってくるだとか、面倒な家事をやるだとか、そういった類のことを想定していたためにこんな事態になるとは予測すらしていなかったのだ。
 剃らせろ、ということは否応なしに秘部を拓海の視界に晒すということと同意義。拓海の角ばった指先が自分の下生えに触れ、恥部を眺めながら作業をする――そんな生々しい妄想をしてしまった真衣はとろりと蜜がショーツの内側を汚す感覚にギュッと視界を遮断した。羞恥に支配され眦に涙を浮かべる彼女の表情に、拓海の加虐心が緩やかに刺激されていく。

「ほら。脱げよ。それとも俺に脱がせてほしいって?」
「ちっ、ちがっ、ひゃぁっ!?」

 悪魔のように甘く囁いた拓海は真衣の部屋着のスエットに手をかける。慌てた真衣は必死に抵抗しようと後ろに後ずさるものの、椅子の上なので逃げ場はない。

「抵抗すんなって。勝った方の言うことを聞く――だろ?」
「う……」

 まるで幼子に噛んで含めるかのように拓海は言い、口の端を釣り上げた。自分が定めたルールをひっくり返すこともできず、真衣は唇を噛むことで白旗をあげる。
 拓海の鮮やかな手つきによって真衣のスエットはショーツごとあっという間に剥ぎ取られていく。言葉にならない悲鳴じみた嗚咽が真衣の喉から漏れた。

「濡れてるけど」
「ッ……!!」

 椅子の上で強制的に開脚させられた真衣は涙ながらに唇を震わせる。頬を上気させた彼女を見遣り意地悪く微笑んだ拓海は、指先で真衣の秘毛を弄びながら真衣を言葉で嬲っていく。

「なに、剃られるって想像だけで感じてんの?」
「~~~っ、」

 ふるふると羞恥に悶える真衣は今にも泣き出しそうな表情を浮かべている。真衣を煽るように口角を上げた拓海は目の前の真衣の表情にうっとりと酔いしれた。
 セックス時の真衣は拓海に翻弄されながらも「いや」「だめ」と言いながら快感に堕ちていく。そして、羞恥に乱れると次第に快楽に素直になっていくのだ。羞恥に激しい快感を覚える真衣の性質が、数年をかけて拓海の劣情を大きく歪ませていった。
 拓海にとってそれはほんの出来心だった。互いに初めてだったこともあるのだろうが、真衣は拓海から見れば無垢で、そして無知であった。拓海の小さな要求に真衣は懸命に応えたし、拓海もそれを返すように真衣を愛でた。拓海が真衣を欲する感情は底なし沼のように増していき、狂気的な執愛に変わった。自分無しでは生きていけなくなってしまえばいい――拓海は真衣に対して真剣にそう思い始めていた。
 剃毛もその一環だ。照れ性な真衣の和毛を生まれたての子どものように剃り上げてしまえば、おいそれと身体を晒すような事態にはならないはずだ。友人たちと温泉に行ったりすることも難しくなるだろうし、もちろん――――ほかの男に目を向けることさえも。これが醜い感情であることは拓海も理解しているが、顔を赤くして恥辱に震える真衣を前にふつふつと膨らむ情動を制御することなど出来るはずもなかった。
 恥丘に当てられた冷えた金属の感触に、真衣は言葉なくただただびくりと身体を震わせた。さらりとしたやわらかな絨毛を摘んだ拓海はなんの躊躇いもなくそこに眉ハサミを入れていく。秘毛が切り落とされていくたびに真衣は息を詰め、羞恥に堪えきれずに顔を背ける。

「こんなやって見られるの、好きなんだな? 初めて知った」
「ち、違うっ……」
「違わねぇって。めちゃくちゃ濡らしてるくせに」
「あ、ぅ……」

 拓海の手によってさまざまに乱されてきた彼女の身体は、この先に待ち受けているはずの快楽に淫らに反応する。羞恥と屈辱で瞳を湿らせた真衣はあられもなく蜜を零してしまう自分を恥じながらも、こうして言葉でいたぶられるシチュエーションにすら昂揚してしまう自分を止められない。恥裂の奥に溜まっていくじくじくとした疼きが真衣の理性をゆっくりと塗りつぶしていく。

「危ねぇからな。動くなよ」

 まるで誘うようにひくひくと戦慄く蜜穴を認識した拓海の背筋を、ぞくりと欣悦が走っていく。真衣に気が付かれぬようそっと生唾を飲み込んだ拓海はシェービングジェルを手のひらであたため、和毛が短く切り揃えられた真衣の恥丘にそれを擦り付けた。淡いピンク色の電動シェーバーを当て、少し剃ってはティッシュで恥丘を拭いまた剃りだす。何度も角度を変えながら粘膜の内側まで、余すところなく丹念にやわらかな絨毛を剃り落としていく。

「……ん。完璧」

 つるりとした裂け目に拓海が満足そうに呟いた。安全ガードが付けられているとはいえ、刃物を当てられている恐怖と視姦にも近い恥辱に震え続けた真衣は大きく息を吐き、無意識のうちに強ばらせていた全身をゆっくりと弛緩させる。

「おし。じゃ、またタイマンやるか」
「……え?」

 椅子の上に落ちた和毛を足元のゴミ箱に集め、何事もなかったかのように拓海はからりとした声色でシェーバーなどをPCデスクの隅に置いた。今日はこのままセックスになだれ込むのだろうと想像していた真衣は呆気にとられ、ぽかんと口を開いてしまう。

「ん? 勝負の続き、やらねぇの?」

 もちろん、ここで前戯の手を緩める拓海ではない。はその時ではないだけだ。ずいぶんとご無沙汰だったので、真衣を存分に焦らして愉しみたいという欲望に駆られた拓海の脳内では早くも次の手を考えだしていた。

「っ……や、やる。次は私が勝つんだからっ……」

 眦に涙を滲ませた真衣が言葉を探し、口元を歪めたままの拓海を恨めしげにめつける。顎でショーツとスエットを差した拓海の指示に従い、真衣はそれらを手早く身に着けた。次は絶対に勝って、逆に拓海を辱めるような要求をしてやる――そんな真衣の想いは、1試合目から種を蒔いていた拓海の罠により当然のことながら脆くも崩れ去る。

「よし! 俺の勝ちだな」
「……な、んで……?」

 5試合目も拓海の圧勝だった。呆然とゲーミングモニターに映し出された結果画面を眺める真衣はなにかがおかしいと気が付きはじめる。が、歪んだ笑みを精悍な顔に貼り付けた拓海に射抜かれ、一瞬にして身体がじんと痺れた真衣は考えがうまく纏められないでいた。

「次はなぁ。ん~、下の自販機でコーラ買ってきて。服はこの前買ってたデニムのロンスカにノーパンで、な」
「なっ……!」

 いくらなんでも悪質だ、そんな露出狂のような――喉元まで出かかった真衣の考えを瞬時に読んだ拓海は、仄暗い笑みを浮かべ真衣の口元に人差し指を当てる。

「勝った方の言うことを聞く、だろ?」
「ううっ……」

 先手を打ってきた拓海に発言を制止され、心の葛藤を表すように唇を震わせていた真衣はしばらく逡巡し、観念したように目を瞑った。椅子から立ち上がり、ふらふらとクローゼットを開き適当なトップスを身に纏う。拓海が指定したロングスカートを身に着けた真衣は羞恥に塗れながらショーツを脱ぎ捨て、PCデスクの前で腕と足を組んで愉し気に笑みを浮かべたままの拓海に視線を向ける。

「つ、次からっ……5回連続勝った方、ってことに……しない?」

 このままでは負けるたびに拓海から破廉恥な要求を突きつけられてしまう。先ほど真衣は2回連続負けてしまったが、久方ぶりにコントローラーを握っている拓海に5回連続敗北する、ということはさすがにないだろうと踏んだ。屈辱的な危機感を覚えた真衣は纏まらない思考を必死に回転させ、涙目で拓海に訴える。

「ん? あぁ、俺は構わねぇけど」

 含んだ笑みを湛えたままの拓海は意外にも、不自然なほどにあっさりと真衣の提案を了承した。その事実に真衣は安堵し、こみ上げてくる羞恥心を堪えながら玄関の扉を開いていく。
 真衣が今身につけているのはデニム地のロングスカートだ。人魚の尾ひれのような形のスカートのため、『履いていない』ことが周囲にバレることは絶対にない。だが、歩くたびにスカートの中が冷え、真衣は自宅から離れるごとに強烈な心細さを刻まれていく。恥部を守るための下生えすら剃り落とされているので、真衣は一歩進むごとに無防備さが増していくような感覚に襲われていった。

(……コー、ラ)

 ガタンと落ちてきたペットボトルに手を伸ばし、真衣はその場にしゃがみ周囲を見回した。エントランスの一歩先に出たこの場所は曲がりなりにも野外のため、真衣は誰かが自分を見ているのではという強烈な不安に駆られてしまったのだ。誰かにバレてしまったのではという焦燥感が真衣の精神を侵蝕し、背筋を走るぞくぞくとした戦慄にぶるりと身を震わせた。
 ふたたび周りを確認した真衣は、ロングスカートなのだから絶対に誰にもバレやしないと自分に言い聞かせる。そんな焦る真衣の感情とは裏腹に――無情にも、帰宅時のエレベーターに、ひとりの同乗者がいた。

「……」
「…………」

 乗り込んだエレベーターが上昇する無機質な音が真衣の心を乱す。不気味なほどの沈黙がこの場を支配していた。先ほどから隣に立つスーツ姿の男性の視線がこちらに向いているようで、その焦燥感が真衣の思考を支配する。
 そんなはずはない――そう思っても壊れそうなほど音をたて始めた真衣の心臓は正直だ。全身に火がついたような熱を感じたまま真衣は自分を守るように胸元にコーラのボトルを引き寄せ、自らの身体をかき抱く。
 次の瞬間、蜜壷からとぷりと溢れ、内ももを伝って落ちていく粘液の感触に真衣は小さく息を飲んだ。

「っ……!」

 気が付かれるという焦りから真衣は咄嗟に唇を噛むが、それでも抑えきれずに息がもれていく。その直後、独特の浮遊感が真衣の身体を包みエレベーターが目的の階で止まった。足早にエレベーターを降りた真衣は小刻みに震える身体を内廊下の壁に寄りかからせ、大きく安堵の息を吐く。時間にして数十秒のことだったが、真衣にとっては永遠と思えるような出来事だった。

「ぁ……、ふっ……」

 天を仰いだ真衣の身体からがくりと力が抜けた。小さな薄い布でも身につけているのといないとでは全く違う。それを痛感した真衣はしばらく全力疾走をしたあとのような心臓を宥め、眦に浮かぶ涙を振りきって足早に自宅へと向かった。

「おかえり」
「た……だ、いま」

 のんびりと掴みどころのない表情を浮かべた拓海に真衣は持ち帰ったコーラを差し出した。羞恥に高められた真衣の身体は情欲を募らすばかり。色欲に塗れた彼女の表情を見遣った拓海はそれでも素知らぬ顔をして「次は5回連続だよな?」と意味深に笑った。

「……わっ、わかってるっ」

 拓海の含み笑いに煽られた真衣は頬を上気させたまま、先ほどクローゼットの前で自らが脱ぎ捨てたショーツに手を伸ばす。その挙動を視認した拓海は待っていたと言わんばかりに鋭く言葉を放った。

「誰が履いていいっつった?」
「ッ!」

 瞳に仄暗い光を宿した拓海の強い言葉に真衣はびくりと全身を揺らし、呼吸を止めた。身体の芯まで轟くような重い言葉で縛られれば、身も心も拓海に篭絡している真衣はそれに従うしかない。伸ばした手をゆるゆると引っ込めた真衣は顔を伏せながら歪んだ笑みを湛えたままの拓海の横に腰を落ち着ける。
 6試合目から連続した5試合はもちろんすべて拓海の圧勝だった。ショーツを履いていないことで試合に集中できなかった真衣のメンタルが原因なのか、はたまた『勝負』を持ちかけられた瞬間から種を蒔き続けてきた拓海の策略によるものなのか、それは神のみぞ知るといったところだろう。

「さて、と」

 手に持ったコントローラーをことりとPCデスクに置いた満面の笑みの拓海に、視界いっぱいに涙を浮かべた真衣は身構える。今度はどんな淫らな命令を下されるのだろうかと妄想に駆られた不安げな真衣の表情を見つめ、一人悦に入った拓海はにこりと優し気に微笑んだ。

「もう3時だし、そろそろ晩飯の買い物いくか。ついでに俺、本屋にも行きてぇんだよな。明後日の授業で使う資料が足んねぇんだよ」
「ぇ……?」

 あんなにもダイレクトに醸していた獣欲を消し去った目の前の夫の思惑を推し測ることができず、真衣は当惑した。彼女が視線で問うように数度瞬きをしても拓海のさらりとした微笑みは変わらない。
 眉を顰めた真衣の表情にくつりと笑った拓海は、身を屈めて愛おしい妻の耳元に息を吹き込んだ。



 * * *



「あとは……ん、この文献が欲しいから、ビジネス新書のコーナーに寄ったら終わりだな」
「……っん、う、ん……」

 メモを片手に少し前を歩く拓海の背中を追う真衣がわずかに身じろぐと、下着のクロッチ部分のパールが食い込んだ。熱の篭った吐息を真衣は唇を噛むことで必死に堪える。一歩を踏み出すごとにパールが真衣の脚の裂け目により一層食い込んで、蕩けた淫層の間に埋め込まれていく。
 薄笑いを浮かべた拓海とともに買い物に出ることとなった彼女が身につけているショーツは、クロッチの部分が布ではなく大小さまざま大きさのパールが通された紐だけになっている、いわゆるセクシーランジェリーというもの。肉ひだの周辺は小粒のパールがぴったりと密着し、敏感な肉粒の付近は拓海の親指の爪ほどもある大きなパールが通されて、動くたびに恥部に擦れる仕様になっている。
 周囲の人間にバレないようにと必死に平静を装う真衣だったが、お昼ごろからふたりの間で繰り広げている『負けたら勝った方のいうことを聞く』というゲームにより散々高められた真衣の身体はどうしても身体の芯から湧き上がる疼きを無視することができないでいた。

「……っ」

 足を動かすたびにコリコリと擦られる肉芽の刺激に真衣の膝が震える。だが、真衣が足を遅くしたり立ち止まろうとするたびに拓海が真衣の腰や背中に手をあて、真衣を急かすように強制的に前進させていく。

『お、おねが……せめて、下だけは、履かせて』

 タイマン勝負をやめ、買い物のためふたりで外出することととなった真衣は先ほどコーラを買いに行った時の切羽詰まった感覚に怯えていた。拓海の用意した落とし穴が待ち受けているとはつゆ知らず、真衣は涙ながらに唇を震わせ拓海に懇願する。完璧だ――彼女が落とし穴に堕ちたことを確信し、加虐心を大きく刺激された拓海は淫靡な笑みを浮かべたまま冷酷に宣告を下す。

『ん? ん~、まぁいーけど。……さっき脱いだのじゃねぇで、こっち履けよ?』

 拓海がクローゼットの奥から引っ張りだしたランジェリーを指先で広げ、より一層の卑猥さを演出しながら真衣に見せつける。

『なっ……! そんなの、パンツでもなんでもないじゃないっ……!』
『でもなぁ。なんか履きたいっつったのは真衣だろ?』

 顔を真っ赤にして途切れ途切れの抗議をする愛おしい妻に、拓海はわざとらしく口の端を歪めた。
 拓海が用意していたのはセクシーランジェリーの中でもオープンクロッチの形をした際どいものだ。紐とレース、そしてパールで構成され、もはや恥部を隠すことなどできるはずもない代物。ただでさえ官能を刺激するようなランジェリーだが、和毛を剃り落としているほうがなおのこと煽情的に映るうえに――真衣の羞恥心を一段と煽ることができるのだ。

『嫌なら別に履かなくてもいいぜ? その代わり、ロンスカからミニスカに履き替えてな。そっちの方が周りから見えちまうかもしれねぇけどさ?』
『……っ、』
『どーする? 俺はどっちでもいいぜ?』

 これも勝負の一環といわれてしまえばこの勝負の提案者である真衣は従わざるを得ない。なんとかしてこの状況を回避できないかと必死に考えを巡らせる真衣だったが、これに従わずにいればもっと辱められてしまうという考えに行きついた。ミニスカートであれば少し屈めば誰かに気が付かれてしまうかもしれないが、ロングスカートであればこんな破廉恥なものを着ていても誰かにバレたりすることはないのでは――そう結論づけた真衣は、こんないやらしい格好をするなんてと葛藤しながらも、震える手を伸ばしにやついた嗤いを深くした拓海からランジェリーを受け取った。
 拓海と一緒にマンションの内廊下を歩くだけでも紐が真衣の割れ目に食い込み、パールが彼女の敏感な部分を刺激していく。その刺激はじりじりと焦らすような感覚だったが、絶妙な刺激だけが断続的に与えられ続けた真衣の下腹の最奥に大きく広がっていく強い疼きは止めることなどできない。
 自動販売機のあるエントランスを抜けてすぐそばの商業施設に足を運び、夫婦ふたりで買い物をする。時を経るごとに真衣の粘膜の狭間にあるパールの動きが滑らかになっていく。ぬちりとした感覚が真衣の羞恥に拍車をかけていった。自身の鼓膜に幻聴のように響く、くちくちという粘着質な水音がスーパーの店内の騒めきに掻き消されていることを願いつつ――真衣は全身が心臓になってしまったかのような感覚を必死に堪えていた。逐一与えられる刺激に外界で上擦った声を出すことも出来ず、覚束無い足取りで必死に書店までやってきたのだった。

「あった。じゃ、これ買ってくる」
「……ん……」

 蚊の鳴くような声で返答する真衣を拓海は高揚感を持って見つめている。自らが用意した舞台に悶える真衣の痴態を存分に愉しんでいる拓海は、買い物袋を全て持つという献身的な夫を演じながら目を細めた。彼女が繰り返す浅い吐息にむしろ嗜虐心を煽られ、もっと追い込みたいという強い激情に駆り立てられていく。愛おしい妻を自分の欲望のままに凌辱し、露出のようなこの行為に緊張と興奮を覚えた彼女を快楽に打ち震わせ、支配してしまいたいという欲求に思考が埋めつくされていった。

「……真衣」

 周囲の人間にバレないようにと顔を伏せたままの真衣の耳元で、拓海は低く囁いた。

「真衣があんなえっろい下着着てるって、ぜってぇ誰も思わないよなぁ」
「っ……!」
「紐とパールだけだからつるっつるなのがすぐわかるし? これから行くレジのひとにバレちゃったらどうなるんだろうな。それも面白そうだけど」

 嘲笑うかのような言葉だというのに、拓海の声色は蕩けるような低く甘いテノールをしていた。それが真衣の脳髄に侵入しぞくりと背筋を震わせる。身を捩ろうとした瞬間、限界まで張り詰めた肉莢がパールに擦れ、真衣の下腹からずくんと大きな疼きが広がっていく。

「ぁっ……!」
「バレるかもって思いながらどろどろにしてるんだろ?」
「ち、がっ……ちがうっ」
「うーそ。あとでちゃ~んと確認すっからな?」

 書店の店内は心地よいジャズミュージックが流れ、静かな空間だ。だからこそ拓海が真衣の耳元で小さく囁いていても周囲はなんの違和感も感じないのだが、全身を這いずり回るような疼きに思考を埋めつくされている真衣に客観的なそれらの情報が届くはずもない。

「さっきからえっろいパールにクリぐりぐりされまくってて、イキたいって顔してんもんな」
「あ、ぅっ……」

 快楽に飢えてひくつく窄まりからこぽりと蜜が滴り落ちていく。もっともっとと求めている本能から真衣は無理やり意識を背けるものの、身体を動かすたびに敏感な淫芽に自動的に施される甘く鋭い快感に彼女の理性はあっけなく崩壊した。

「……も……おかしくなる、からっ……おねが……」
「…………」

 今にも消えそうな声で真衣は拓海に縋った。想像もしていなかった展開に息を止めた拓海は、ゆっくりと瞠目する。

「じっ……焦らされすぎてっ……も、もぉ……おかしくなっちゃう、って……言ったらっ……拓海の、箍、外れるっ……?」

 拓海が立てていた計略は、底が見えない快楽の沼に足を取られ、羞恥に塗れながらも淫態を晒し、嫌がる真衣を陵辱するという結果にたどり着くためのアルゴリズムだった。自ら欲した真衣の吐息に狂わされたそれらが――拓海の思考を黒く征服していく。



 * * *



 玄関の鍵を乱暴にガチャリと閉めるや否や、拓海は噛みつくように真衣の唇を塞いだ。拓海の熱い舌がぬるりと入り込む深い口付けに真衣は喉の奥で淫らな悲鳴を噛み殺す。自らの胸元に縋りつく真衣に愛しさが込み上げた拓海は唇を離した。寸分の余裕すら存在しない自分を隠すように真衣の耳元で卑猥に囁き、火箸のように熱を持った自身の腰を真衣に押し付ける。

「やっば。さっきの、めっちゃ箍外れたわ。責任取ってくれんだよな?」
「……ん……おねが、はやくっ……」

 真衣は拓海にせがむようにこくこくと首を振る。帰宅するまでの道中でも身に着けたセクシーランジェリーの影響で真衣の性感は極限まで高められていた。期待に満ちひくひくと蠢く真衣の蜜壺からは熱い雫が溢れでて、彼女の内ももをじっとりと濡らしている。

「ねぇっ……もう、無理、だからっ……ちょうだいっ……!」

 自らロングスカートをたくし上げて背を向け、切羽詰まった表情で真衣は背後の拓海を見上げる。その腰はゆらゆらと揺れているようにも見えるが、昼ごろから数時間かけて焦らされ、快楽が欲しいと限界まで飢えた真衣に理性など一欠けらも残ってはいなかった。
 紐とレースで彩られた真衣の臀部はなにも隠せておらず、天井の照明を浴びてヌラヌラと真衣の内ももが淫猥に光を放っている。その光景は拓海の脳を焦がすには強烈すぎた。一気に膨張した自身をジーンズから解き放ち、拓海は真衣が震える指先で持ち上げたスカートを腰まで捲り上げ、ランジェリーの隙間から昂った肉槍を一息に突き立てた。

「~~~~っ!!」

 飢餓感すら覚えるほどに欲していた強い快感を与えられ、身体の奥底で燻ぶっていた感覚が勢いよく弾けた真衣は天を仰ぎ、声なき喘ぎを漏らした。拓海の膨張した雄槍に収斂しながらねっとりと絡む膣壁はやっとの思いで手に入れた歓喜を表すかのようにきつく狭窄する。搾り取ろうとするかのようなその動きに、拓海は眉根を寄せてぐっと奥歯を噛み締めた。

「っ、く、挿入れただけでイくな、っつの」
「だっ、てぇっ……!」

 耳元で揶揄うように囁かれ、絶頂の余韻に浸る真衣の隘路は本能的に反応してしまう。引くことのない快感に満たされた真衣の身体は快楽を拓海に訴えるかのように小刻みに痙攣を繰り返す。

「……前からさぁ。服着たまんまの真衣を、っ、こーして後ろから犯してみたかったんだよなぁ」
「あぁっ……そ、んなっ……あっ、奥、だめぇっ!」

 拓海は真衣の汗ばんだ首筋やうなじに熱い唇を押しつけ、ざらりとした舌でゆっくりと舐め上げて彼女の羞恥心をことさらに煽る言葉を吐き出した。直接的な言葉で嬲ると真衣は嫌がりながらも盛大に反応を示すからだ。意図して真衣の羞恥心を煽る拓海の指先と肉棒は淫らな愛撫を続けていく。

「~~~っ! あっ、ふぁんっ、やだあッ!」

 腰を前後させた拓海がぬちゃぬちゃと粘着音を盛大に鳴らしながらやわらかな媚肉を擦る。トップスの下から手を差し入れた拓海は真衣のなだらかな膨らみへと指先を滑らせ、ブラジャーの隙間から尖った乳嘴にゅうしをくりくりと刺激する。蜜路を往復するたびに拓海の剛直が肉壁を掻き分け、剥き出しの雁首が最奥を小突き、絶え間ない快楽を真衣に押し付ける。容赦のないストロークに真衣は何処にもしがみつけず、ここが玄関であることも忘れて壁紙を掻きむしった。
 淫茎が出し入れされるたびにパールが通された紐もその動きに合わせて鋭敏な肉粒が擦れ、真衣自身も驚くような速度で繰り返し高みに押し上げられていく。理性という箍が外れたまま、真衣は苦痛を感じるほどの快感にあっという間に溺れていった。

「ッ、あああっ、もぉっ、もぉうごいちゃ、やだっ、ぁあっ!」
「おまっ……く、こんだけ煽っといて、動くなって、ふ、無理にきまってんだろっ……」

 度重なる絶頂のうねりに飲まれたままの真衣の腰を鷲掴みし、拓海は激しく戦慄く恥肉を大きく穿っていく。もっともっと真衣をよがらせようとするかのように、拓海の手が真衣の身体の前に回る。

「やだぁっ……!! だめだめだめっ、もおっ、もぉおかしくっ、なっちゃ、うっ……!!」
「はっ……、ヤらねぇと、おかしくなるっつったのは真衣、じゃねぇ、かっ……」

 その思惑を察していやいやと頭を振る真衣に拓海は愉悦交じりに言葉を落とし、真衣が身に着けているランジェリーの紐部分をくいくいと絶妙な力加減で引っ張った。

「やっ、あぁぁんっ!」
「っ、く……すっげー、締め付け……」

 強くもなく、かといって弱くもない力で、拓海は紐を引きパールが接している敏感な真衣の淫芽を弄ぶ。ぐりぐりとした無機質な刺激に視界が白んだ真衣が喉を晒し、大きくのけぞった。身体を捩った真衣はその刺激から必死に逃げようとするが、拓海の手でしっかり押さえ込まれており逃げられるはずもない。

「こーら……俺から逃げんな」

 真衣の逃げようとする行為を咎めるように、拓海は断続的に強弱をつけて紐を引っ張っては緩める行為を繰り返す。もちろん蜜窟の最奥に向かって腰を叩きつけることも拓海は忘れない。充血した若芽と蕩け切った肉窟に与えられ続け、逃げられない悦楽の波が真衣を襲う。2箇所に与えられる刺激に真衣の思考に強い眩暈に似た感覚が生まれ、酸素をもとめてはくはくと口を開閉させた彼女は更に甘い啼き声をあげた。無機質なそれに延々と苛まれ続けた真衣の嬌声は砂糖蜜よりも甘く、拓海の余裕を急速に失わせていく。

「く……俺も、イきそ」

 額に汗を浮かべながら、拓海は淫らな水音をさせ直線的な突き上げを繰り返した。無遠慮に揺さぶられ続け収縮する淫壺は吸い付くように怒張にまとわりつき、拓海の思考を侵蝕していく。こちらに突き出されたような真っ白な真衣の臀部が視覚に飛び込んでくるという堪らなく刺激的な光景が、拓海の昂ぶった神経を更に押し上げていった。

「あ、あぁっ、たく、み、もお、もぉむりっ、イ、きすぎて、むりぃっ!」

 眦から幾重にも涙を落とし、髪を振り乱して甘く狂い啼く真衣に拓海は正気を失いかけた。

「っく、まだイけんだろっ……!!」
「ひ、あ、あぁぁっ!!」

 既に何を口走っているのかさえあやふやな真衣だが、それでも拓海からはばかることなく叩き込まれる狂った快楽になす術も無い。普段、セックス時ですらも飄々とし、余裕ぶった態度を取る拓海からは想像すらできない激しさに押し上げられ、真衣は意識さえも途切れ途切れになっていく。

「あああっ、あ、もっ、――――ッ!!」
「……ぐ、っ……!!」

 一際高い嬌声を上げた真衣の身体が弓なりに反って硬直した。と同時に真衣の隘路が吐きだされるはずの白濁を惜しみなく搾り取るような淫らな蠕動を繰り返し、拓海も堪えきれず凶暴なまでの欲望を真衣の最奥に吐き出した。



 * * *



「え……え、ちょっと……待って……?」
「久しぶりだったからなぁ。コントローラーの感度、いろいろいじくってたんだよ」

 呼吸を整えた真衣を横抱きにした拓海によって、今日の出来事はすべて拓海が仕組んだことだと知った真衣は惚けたように意地悪く笑う拓海の表情を見つめ続ける。
 それは拓海にとって取り立てて重要なことではなかった。試合前の拓海はコントローラーの感度を調整しただけなのだから。拓海にとって『今日はエイムがない』は、『嘘』でもなんでもないことだった。

「~~~っ、拓海の、バカっ!! バカバカバカっ……!!」

 嵌められていたと知った真衣は拓海の腕の中で顔を真っ赤にしじたばたと暴れる。くくっと、目を細めた拓海の喉の奥が鳴る音がリビングに響いて――ふたりはそのままゆっくりと寝室に消えていった。
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