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【桜ノつぼみ】甘くて苦いチョコレート
しおりを挟む外から聞こえる甘い甘い幸せそうな声。
それをBGMに冷蔵庫から板チョコレートを取り出す。
彼は甘いのが苦手だって言っていたから。チョコレートはあまり好きじゃないって言っていたから。
70%のチョコレートを細かく刻み湯煎に掛ける。
チョコレートがトロトロに溶けたら今度は型に注ぎ込んで。一滴、二滴と愛を注ぐ。
一滴、二滴、三滴。お菓子作りは分量が命だから。決してズレない様に。一滴、二滴、三滴。
ゴムベラで切る様に緩く混ぜて型に注ぎ込み、冷やす。
固まるのに数時間。その間ただ待つだけ何て事はせずパソコンを起動。autumnイチ ゼロ ゼロ ハチ……何て簡単なパスワード。こんな簡単なパスワードで大丈夫かな?何てちょっと心配になったり。
クリック、クリック、クリック。いつもと変わらない手順でいつもと同じ画面。……ビシッ、と、身体が硬直。「え……?」って声が口から漏れた。
画面は確かにいつもと同じ。いつもと変わらない。でも───……。
「何であの子の名前を口にしてるの……?」
彼が声に、口にしてる名前は私じゃない。
ねぇ、何で?何であの子の名前を口にするの?何で今も尚あの子の事を考えてるの?何で私じゃないの?
此処迄して、あれ程迄貴男に私を刻み込んだのに。ねぇ、何で……?
数多の疑問が、想像が頭を過る。こうしちゃいられない、いてはいけないと勢い良く席から立った。
バタバタと先程入れたばかりのチョコレートを冷蔵庫から取り出して。まだ足りなかったんだと反省。
ツーッ、と、ナイフで手首に切り目を入れる。赤い朱い血液が溢れ出て。
入れて、淹れて、注いで。
黒かった物が赤黒くなったら再度冷蔵庫へ。
───ねぇ、今日は何の日か知ってる?
今日はね、恋人同士が愛を伝える日なんだよ?
だから貴男は私しか見ちゃいけないし、考えちゃいけないの。口にする何て以ての外だよ。
……あぁでも、私にも非があるのかな?最近忙しくて貴男の中に私の部位を渡せなかったもんね?
ねぇ、見て?今迄貴男に渡した部位を。
最近やっと片目に慣れたんだよ?指だって、2本位無くても何とかなるのが判ったの。歯だって1つ無い位どうって事ないの。
だって……ね?貴男の中に私の部位が、私が存在出来るって思ったら何て事ない……足りない代償でしょ?
……でも、それだけじゃ足りなかったんだね、だから貴男はそうやって私の気を引こうとするんだもんね?
……仕方ないから、私の中の物を貴男にあげるよ。ごめんね?今迄気付かなくって。
───ねぇ、りぶら。……これでつぼみだけを見てくれるよね──……?
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