Re Do 〜やり直しの祝福を授かった俺は英雄を目指す人生を歩みたい。あわよくば勇者より先に魔王を倒したい〜

アキレサンタ

文字の大きさ
5 / 92

005 生誕以前のルール

しおりを挟む
「これどこまで戻れるんだ……?」

 俺は画面をスクロールし続ける。彼これ数分めくり続けているが、恐らく去年までしかまだ戻れていない。
 年単位で戻れるということらしいが、これでは時間がいくらあっても足りない。
 軽く絶望しかけた時、画面の下に細い棒のような表示を見付けた。

「スクロールバー……?」

 触れると名称が表示された。それをスクロールすると、大幅に年月が飛んだ。恐らく十代の頃の自分が映っている。
 なるほど、これを使えばいいのか。

「なんだこの赤いの」

 調子よく巻き戻っていると、赤い仕切りのような画像が表示される。軽く撫でると説明書きが浮かんできた。

「『これ以上遡る際は、肉体がない為霊体として遡ります』……?」

 つまり。
 この赤いのは母の胎内か何かだろうか。そしてそれ以前からやり直す際は霊体、つまり幽霊かなにかで過去に戻れるのか……。しかもそれよりも更に以前の過去に行けるようだ。
 それ、やり直しの力超越してないか?? こんな時間に飛んでしまったら俺はどうなるんだ……? また三十年近くやり直すのは流石に嫌だ。

「あ……」

 手が触れる。触ってはいけないと思っているとき程、こういうことが起きてしまうものだ。
 運悪く俺は生まれる以前の画像をタッチしてしまう。
 光が溢れる。

「……ここは」

 呟くと、何故か頭の中で自分の声が響くような気がした。
 足元を見ると、そこにあるはずの地面がない。

「うわ!? 浮いてる!!」

 俺は見慣れた村の、上空にいた。パニックになってしまい、一通り騒いだが、村人は頭上を見上げることはなかった。
 どうやら本当に幽霊として存在しているらしい。
 画面を出してみたところ、無事に出せたので一先ず安堵する。

「これ、未来にもいけるんだな」

 いつもとは逆にスクロールしてみると、今よりは未来の、つまり俺が生まれた以降の画像があった。スクロールバーで大幅に飛ばして最後の画面を見ると、先程までいた部屋が映っていた。
 未来は俺が過ごした日までが最後となるらしい。つまり30歳まで。とりあえず元の時間へ帰ろうと思い、画面を選択しようとすると、『警告』と表示された画面に切り替わった。

「『大幅に時間を進める際は、世界へ及ぼした行動から未来への影響が懸念されます。現在の世界への影響値0.00%』……『バタフライエフェクトの強度を変更する』……? なんだこれ」

 画面には見慣れない言葉が表示されている。バタフライエフェクトとは……? 現在の強度は『普通』ということらしい。
 タッチしてみると更に選択肢が現れ、上から順に、強、普通、弱、無と書かれている。
 一度そのまま普通に設定し、現在へ帰ると、相も変わらぬ俺の部屋。村を軽く見て回ったが世界への影響とやらはありそうになかった。
 安心した俺はまた霊体になる時間まで戻る。

「スクロールバーを見た感じ、多分俺を妊娠した頃くらいだと思うんだよなぁ」

 呟きつつ、俺は村を見て回る。勿論空から。歩くという概念が通じなかったが、行きたい方向へ進む意思を持つと自然に体が動いて行った。
 そして俺は幾分綺麗な我が家を見付けた。

「母さん若っ!」

 丁度家から出てきたのは母だった。面影は当時のまま残っているので簡単にわかったが、思った以上に若い。
 少し腹が出ているのか、服装がゆったりしたものになっている。それとなくついていくと、行く先々で体に気を遣うように労られていた。
 間違いない。あの中に俺がいる。

「今の母さんに食べ物とか気を付けるように言えば、俺の体が強く生まれたりしないものか……」

 どうしようもない願望を呟いてみる。そんな食事だけで体が変わるほど世の中単純でもないだろう。しかも今の俺は霊体だ。誰も俺を見ることすらできない。
 と、思っていたが。

「おや、あんた霊に憑かれとるね」
「え、霊ですか?」
「ええ!?」

 村の老婆が俺の目を真っすぐ見ながら母に告げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...