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024 届かない力
しおりを挟む「皆隠れろ! 山賊だ!」
「なに?」
俺は山賊が現れる直前にキャンプに飛び込み、叫ぶ。商人たちが怪訝な表情でこちらを見る。
「坊や、あの村の子じゃないか。こんなところでなにを」
「とにかく逃げろ! 急いで!」
俺の手を掴んだのはステラの父親だった。好機とばかりに、俺はその手を引いて物陰に隠れさせる。
「何者だお前たち!!」
背後で商人の怒声が響いた。山賊が現れたのだ。
「おじさん、ステラを守って隠れていてほしい」
「君はなにを言って……?」
「いいから!」
山賊たちがサーベルを振り回している。俺が不意打ちをして棍棒で山賊の手を打つとサーベルを落とす。すかさず俺はそれを拾い上げた。
「俺が相手だ」
サーベルを構えて俺は告げた。
「……あ? ガキが? 相手だと? 俺たちの……?」
山賊一同がぽかんとする。一瞬の沈黙はすぐに破られる。
「ギャハハハハ!! おいおい坊主、大人の話に入って来るんじゃねえよ!」
「おじさんが遊んでやるから剣を置きな、子供じゃ怪我するぜ? なーんてなあ!」
7歳。当然体も小さい。サーベルがやたらと重い。どこまで出来るかわからない。とにかく場をかき乱してステラの父親だけでも助けなければならない。
大丈夫だ。俺にはソリス直伝の剣術がある――と言っても一日しか習っていないが――多少は山賊を怯ませられるはずだ。
「おらあああ!」
剣を引きずりながら走る。山賊の間合いの内側に入ると、俺は全身を捻って剣を振り回した。
「あぶねえなクソガキ!」
しかし攻撃は当たらない。やり直すべきか? いや、まだだ。
山賊の一人に狙いを定めて攻撃を繰り返すが、そもそも体のサイズのせいでチャンスすら見えない。これではやり直したところで同じことの繰り返しになる。
「ぐああああ!!」
「お父さん!」
突如耳に届く叫び声。振り向くと、ステラの前でその父親が剣で貫かれていた。絶望に満ちた少女の顔。俺は指を振る。
光が溢れる。
「おじさん、とにかく逃げよう! ステラを守って!!」
山賊は既に現れている。俺はステラの父親の手を引くが、彼は俺の手を振りほどいた。
「私たちは商人だ。全てを投げ出して逃げることはできない」
そう言うと彼は山賊たちに向かっていく。ステラがテントから出てきてその様子を見守っている。直に彼はその命を落とす。山賊たちは金品を漁り始める。
ダメだ。この方法じゃ彼らを救えない。
光が溢れる。
「ダメだ……!」
この後、俺は何度もやり直した。しかし結果は変わらない。7歳の体では戦えないし、大人を説得することも出来ない。もし山賊の情報を伝えても、事件が起きる日が少しずれるだけで結果は変わらなかった。山賊は諦めてくれない。
何度もステラの目の前で父親が死んだ。彼女自身に危害が及ぶことはなかったが、その心には深い傷を負ったことだろうと思う。
俺はステラと別れた直後の時間に戻ってきていた。何度も作戦を立てた。だが今の俺ではどうすることも出来ない。
魔法でも使えれば年齢差なんて関係ないのに……と考えたところで俺は一つ思い出す。ルーンは魔術以外の何かを使えると言っていなかったか。
そうでなくてもこの件は俺一人では何も思いつかない。彼らの知恵を借りるべきではないだろうか。俺は青い画面を表示させ、15歳の頃までスクロールバーを進める。
光が溢れる。
「おや、リドゥ。どうしたんだい?」
場所はギルドの前からやり直した。彼らが親指を立てて俺を見送った直後、俺は扉を開けて戻ってきたことになる。
俺の様子が違うことに二人は気付いたらしかった。
「二人とも、お願いだ。助けてくれ」
二人の座る机を叩き、俺は頭を下げた。
ルーンとソリスは困惑したように目を合わせて、首を傾げていた。
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