Re Do 〜やり直しの祝福を授かった俺は英雄を目指す人生を歩みたい。あわよくば勇者より先に魔王を倒したい〜

アキレサンタ

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025 練術の存在

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「ドラゴン退治に新しい力なんか必要ないわよ。今のアンタが正しく能力を発揮すれば倒せない敵じゃない」
「そうだねえ……」

 俺は二人に使い走らされて飲み物を持ってきていた。ソリスは紅茶を飲み干すと俺に告げた。ルーンも同じく紅茶を飲みながら静かに呟いた。
 戻ってきた直後、俺は二人に頼んだ。ルーンが使えるもう一つの力を教えてほしい、と。

「ドラゴン退治には使うつもりはないんだ。道中助けたい人がいて、その為に俺は新しい力を覚えたくて」
「道中も何も、アンタ今出て戻ったところでしょ」
「うぐ……そうだった」

 ポットから新しく注いだ紅茶を、ソリスはまた飲み干す。呆れたような表情で俺に向けてカップを振る。

「焦らないの。アンタは確かに強いんだから、ちゃんと依頼をこなすように情報しっかり集めていけば大丈夫だから」

 その言葉は嬉しいのだが、今は事情が違う。俺は二人にやり直しの力のことを言っていない。この力が強大なことは俺もわかっている。もしかすると二人の方がより上手くこの力を使えるのかもしれないが、その強大さ故に他言することは憚られた。万一があるかもしれない。
 その後もソリスの説教が続きそうだったが、意外にもルーンがそれを遮った。

「――リドゥ。君は何のために新しい力が欲しいんだい」
「……」

 ルーンはじっと俺を見つめる。その表情からはいつものように穏やかなやさしさが読み取れない。口の端を結び、少しひそめられた眉は、彼にしては厳しい表情を浮かべさせていた。

「ソリスも言っていたよね。何のために戦うのか、何を思えば君は戦えるのか。君は先般自覚したはずだ、ソリスのようになりたいという強烈な憧れを。そして同時に思い知ったはずだ。その道は決して近道などないと」
「それは――」

 俺は思う。何のために力を欲するのか。ステラと言う旧友の父親を助けたいと思うのは何故なのか。
 ドラゴン退治の為に防具が欲しいから。その為の信頼を得たいから。その方法が父親を助けることだから。歴史を捻じ曲げてでも俺はランク3になりたいのか――
 ――違うだろ。

「二人には理解できない話だけど、子供が目の前で親を亡くす瞬間を何度も見てしまった。あの絶望と悲痛に満ちた表情を、何度も何度も見てしまった。見てしまったからにはどうにかしたいと思った。でもその時の俺では力が足りないことを知っていた。魔法の素質もなければ、剣もろくに扱えない、世間からの信頼もない俺ではどうしようもなかった」

 幼いステラの表情が脳内に焼き付いて離れない。
 あんな顔を浮かべたままの歴史では、俺が納得できない。彼女を笑顔にしなければ、俺は俺の人生を満足に歩めない。

「お願いだ、ルーン、ソリス。あの子を救わせてくれ。その力を俺に授けてくれ――!」

 頭を下げる。直前、ソリスが俺の額に手を当ててそれを阻害する。ルーンを見ると微笑んでいる。ソリスもだ。

「アンタが扉を開けて外へ出て、何を見たのかはわからない。でも大変なことが起きたのは表情で理解していたわ。そしてそこに我欲なんて微塵もないことも」
「確信したかったんだ。どんな荒唐無稽なことでもいい、君が誰かの為に戦いたいと思っていることをその口から聞きたかった。ソリスのようになりたいという思い以外に、君が頑張る根源を知りたかった」
「で、ルーン。アンタは満足したの?」

 ソリスが訊くと、ルーンはゆっくりと頷いた。

「もちろん。だけどごめんねリドゥ、新しい力は君では間に合わないかもしれない」
「……間に合わない?」

 白髪の少年は申し訳なさそうに続ける。

「僕は魔法の素質に恵まれている。主に魔術で戦うけれど、それ以外の力も扱えた。その力こそが、練術」
「れん、じゅつ……」
「魔力と違う法則で――というか、魔力の方が異質なんだけど――世界が持つ生命エネルギー。自身の持つエネルギーに自然のエネルギーが融合した時に扱える力なんだ」

 ルーン曰く。
 自然の中にそのエネルギーはあり、人はそれを気と呼んだり、オーラと呼んだりするらしい。それを扱う技術も気功だったり様々な呼び名があるらしいが、主に練術と呼ばれる。
 その技術は自然と一体になり、地脈だったり、木だったり、空気だったりと様々なところから力を借りるらしい。そうして借りた力は弱った体を治癒したり、強化したり、魔法に似たある程度の攻撃も放てるようになるそうだ。

「ここで重要なのは自然と一体になることなんだ。君は今15歳だよね」
「うん」
「修行自体は大人になってからでもいいんだけど、練術の第一関門は自然のエネルギーと波長を合わせることにあるんだ。……実は大人になればなる程それが出来なくなっていく」
「え」

 申し訳なさそうに彼は紅茶を飲む。ソリスは俺の隣でポットの中の紅茶を飲み干していた。その辺りの冒険者を呼びつけておかわりまで用意させている。

「リミットは18歳。だけどそれもかなり稀有な例で、大抵は10歳を過ぎればもう不可能になる」

 練術。強大な力にはその分制限もあるわけか……。15歳の俺の肉体で間に合わない可能性がかなり高いようだ、

「僕の師匠の居場所をメモしてあげる。ドラゴン退治の前にそこに行ってみると良い」
「……わかった」

 俺は彼からメモを受け取る。ソリスがいつの間にかギルドメンバーと喧嘩大会を開催しているのを横目に見つつ、俺はギルドを出発した。




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