Re Do 〜やり直しの祝福を授かった俺は英雄を目指す人生を歩みたい。あわよくば勇者より先に魔王を倒したい〜

アキレサンタ

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054 変異体マージベア

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「考えろ。アイツの正体を探れ。あの魔物……恐らくマージベアと思われる魔物が、なぜあんな姿になっているか」

 ジベと違いあの変異したマージベアは目が繰り抜かれたように無くなっており、だらりと開いた口からは溶け始めた牙が生えていた。今はまた他の魔物を体に纏ってしまい、その姿を確認できない。
 変異マージベアはこちらに気付いた様子はなかったように思う。あれだけ派手に体を吹き飛ばしたのに、だ。意識が既にないのか、はたまた感知する器官に俺が見つかっていないだけなのか。
 とにかく行動を起こす。俺はまたも距離を詰め、練術を拳に使用する。

「金剛拳!!」

 黄金に輝く拳は魔物たちを爆散させつつ、変異体の元へ飛び込んでいく。
 何かに気付いたらしい変異体は、鉱石のついた手で頭部を守る。俺の拳は鉱石を殴りつけた。

「イデェ!」

 なんてことはない。壁を思いきり殴った時のような痛みが俺の拳を襲っただけだった。
 しかし、今の俺は練術を使用している。ただの壁や鉱石なんて弾け飛んでもおかしくないはずなのに。

「グ……ルァ……!」

 変異マージベアが低く唸る。そのまま俺の方へ爪を向けてくるが、俺は既に距離を開けていてそこにいない。
 と、そこに更に周囲の魔物が引き寄せられていく。一瞬露出していた頭部はまたも他の魔物によって覆われてしまう。
 いくら攻撃しても効かず、新たに魔物を補充されてしまう。これでは埒が明かない。
 俺は一度鱗纏うろこまといを解く。そして変異体から距離を取ると、座禅を組んで地面に座る。

「すぅー……」

 深く、深く呼吸をする。今俺が許容できるギリギリの量の気を取り込む。
 許容量はいつかに無茶をした時に十分理解した。自暴自棄になった戦い方だったが、あの時の無茶が今俺の許容値の尺度になっている。
 大量の気を練り込むと、俺の体はいつかのように輝き始める。香水によって俺から距離を取っていた魔物たちが、その光を忌避するように更に距離を取る。
 練術はここの魔物たちにかなり効果があるようだ。生存本能によってその危険度を理解したらしい彼らは、一目散に走りだし、洞窟の出口の方へ駆けていく。
 俺は静かに立ち上がり、両手を前に突き出す。

「練術、煌々練波!!」

 光線を繰り出す。今度は両手から放ち、より多くの魔物たちを殲滅していく。
 生存本能の高まりによって逃げる魔物もいれば、自棄になって飛び出してくるのも生存本能か。

「けど、焼くだけだ!」

 飛び出してきた魔物が一瞬で消滅する。まだ変異体に触れていない魔物の体液には毒性はない。俺はそれを浴びてしまったが、構わず周囲に光を放つ。
 そう。今の魔物は生存本能により俺を襲った。ならばもっと巨大でよりその力の強い奴はどうするだろうか。

「グル……ルァア!」

 変異体のマージベアが俺の方へ飛び込んできた。難なくかわすが、今までと様子が違うことに気付く。明らかに俺の存在に気付いている。
 今まで俺が接近しても無視していたマージベアが、今度はあちらから攻撃を仕掛けてきた。この事実に俺は少し焦る。
 落ち着け。状況はいつもと変わらない。さっきまでが余裕があり過ぎたんだ。

「グルロロロロ」

 変異体の唸り声と思わしき声が響く。喉が上手く鳴らせないのか、液体の混じったような音になっている。
 そいつが足を蓄え、飛び込む体勢を取った。こちらに飛び込んでくる気だ。急いで逃げろ。
 俺は練術を使用したまま走り出す。洞窟の出口まで逃げるには少し時間がかかるが、道中気を付ければ大丈夫なはずだ。森の中に進めば障害物も多く、練術による戦法も増える。
 だが、次の瞬間こちらに飛び出すもう一つの影に俺は思わず身を固めた。

「ぐッ!」

 練術で覆った腕で攻撃を止める。襲ってきたのは今まで俺から逃げていた魔物だ。
 香水で俺には近づかないはずなのに、と思った次の瞬間。
 変異体マージベアが俺へと向けてそのドロドロの体を突っ込ませてきていた。

「鱗纏!!」

 体が遥か後方に吹き飛ばされる。壁にめり込んだらしく、かなり動き辛い体勢になっている。
 痛みは無視できる程度だ。ギリギリで練術を使用して毒も受けずに済んだ。だが、周囲を魔物に囲まれている状況はマズイ。この状態で変異体からは逃げきれない。
 どろ、と頭部から液体が流れてきたので手で拭って気付く。そうだ、俺はさっき魔物の体液を浴びたんだ。これで匂いがなくなってしまったんだ。
 俺は壁から何とか抜け出し、剣を抜く。練術を使用すると剣が黄金に輝く。こいつらの相手は出来ない。変異体マージベアが俺を狙ってきているのも、退路を塞ぐ魔物もマズイ。今まで以上に手加減不要な状況に、俺は深い息を一つする。

「いくぞ!!!」

 俺は飛び出す。
 魔物は剣に触れるだけで爆散する。その体液は鱗纏が防ぐ。変異体マージベアにまとわりつく魔物たちを切り裂くが、数秒で他の魔物が補充される。
 どういう仕組みか全くわからない。何故こいつは他の魔物を纏っているのか。何故俺の位置が急にわかるようになったのか。
 そもそもマージベアがこうなった原因は……。

「鉱石を食った……のか?」

 俺は思い出す。
 ジベが口の中を見せてきていた時、その牙に何がついていたか。動物の肉片、植物の繊維、そして石の破片。
 マージベアはただの熊じゃない。魔力を持って産まれ生きる、魔物だ。その食事内容が通常の動物なんかと一緒なわけがない。
 ジベの口の中にあった石の破片は、たまたま口に入ったんじゃない。あいつも石を食ったんだ。つまり、このマージベアも鉱石を食らった。

「それで今、こうなってんのか……!?」
「ゲルォッ! グロロロロロロ!!」

 変異体マージベアが叫ぶ。次の瞬間、魔法陣が周囲に現れる。

「!? こ、これは!!」

 そしてその魔法陣から氷の槍が多数飛び出し、周囲の魔物ごと俺に襲い掛かる。

「小ドラゴンの技と似てる……!」

 更に魔法陣が増え、そこから先程よりも大量の槍が俺を襲った。
 俺はすかさず練術で地面を殴り、巻き上がった土で防ぐ。それでも全部は防ぎきれないので、俺は自分で開けた穴に飛び込んだ。

「……し尽くせ。炎撃魔法、ギガフレア!!」

 直後、誰かの声が響き。俺の上を炎が通っていった。詠唱を唱えていたようだが、そこまでは聞き取れなかった。
 今一瞬でも穴に飛び込むのが遅ければ焼かれて死んでいたかもしれない。跳ねる心臓がやけにうるさい。
 炎が止み、俺はそっと顔を出す。
 そこにいたのは。

「おや? 先程のギルドの方。貴方もこの魔物から魔炎を回収に来たのですか?」
「な、なんだと!?」

 魔の導き、と呼ばれる黒い集団だった。
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