幸せになれますか

よしたけ たけこ

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side A ジュリアの物語

第6話

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「ふう。」

メイドのナナが入れてくれたお茶を飲んで、一息つく。

「お疲れ様でございました。まだこちらに来られたばかりなのに、お疲れなのではありませんか?」

「ううん。公爵家の養女となったのだもの。しっかりと教養を身につけないとね。田舎娘は早く卒業しなきゃ。」

公爵家に来てから1週間が経とうとしている。
その間にお義父様と話し合って、公爵家の令嬢として相応しい教養を身につけるために家庭教師をつけてもらった。

お義父様には無理をしなくて良いって言ってもらったけれど、養女とは言え公爵家の一員となったのだもの。
公爵家の恥とならないように、相応しい振る舞いくらいは身につけなければね。
将来は政略結婚で嫁ぐ事になるかもしれないもの。

「ですが・・・ジュリアお嬢様にはそのままで居て欲しいです。」

ナナが小さく呟いた。

「え?どういうこと?」

「あ!いえ!あの、ジュリアお嬢様はお優しくて、ふんわりした雰囲気がとても素敵なので、そのままで居て欲しいな・・・なんて、出過ぎたことを申しました!!」

慌てて早口になるナナに思わず笑ってしまう。

「ふふふ。そんなに堅くならないで?ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい。」

「お、恐れ多い事でございます!」

優しくて、ふんわり・・・。
お母様のことを思い出すなぁ。
いつもニコニコ微笑んでいたお母様が思い浮かぶ。

『ジュリアとブリジットの笑った顔は、本当にそっくりだな~。』

『ほんと!?私、お母様みたい!?』

『あぁ!そっくりだ!お父様は、二人のその笑顔が大好きだから、見ているだけで幸せな気持ちになれるぞ!!』

そんな幼い日の父とのやりとりを思い出す。
幸せそうに私を抱き上げて話す父と、喜ぶ私のことを母は微笑みながら見てくれていた。
私と両親の、幸せな記憶。


湧き上がる涙は溢れる前にそっと拭った。


○○○


朝食はいつもお義父様とお義兄様と3人でとっているけれど、それ以外は日によって変わる。
昼食は1人が基本だが、夕食はその日によって様々だ。

今日の夕食はというと、お義兄様と2人きり。
一番緊張するパターンだから、待っている時間もすごく緊張している。

「待たせてしまってすまない。」

そう言って食堂へ入ってこられたお義兄様。

「とんでもありません!」

私は慌てて立ち上がる。

「そんなに緊張しなくていい。家族になったのだから。」

そうは言ってくださるけれど、正直に言うと顔が怖い・・・。

「あ、ありがとうございます。」

なんとか笑顔でそう答えるのが精一杯だった。

とても綺麗な顔をされているけれど、表情を崩すことのない冷たい美形ってこんなに怖いのだと、この家に来てから知った。

緊張しつつも食事を勧めていると、ふとお義兄様のお皿に目がとまる。
チキンソテーに添えられている緑豆が一向に減っていないような気がする。
なんなら端の方に避けられているような気がしなくも無い。

もしかして、お嫌いなのかしら?

「ふふっ」

涼しい顔をして緑豆がお嫌いだなんて。
なんだか小さな子どもみたい。

「どうした?」

ついつい小さく笑ってしまった私を見て、お義兄様が不思議そうにしている。

「いえ、あの、もしかして・・・緑豆がお嫌いなのですか?」

少し勇気を出して聞いてみる。

「・・・。」

どうしよう、黙ってしまわれたわ。

「端の方に寄せてあるので、もしかしてと思ったのですが・・・。ぶしつけなことを言ってしまってすみませんでした。」

失礼な事を言ってしまったかもしれない。
怒ってしまわれたかしら・・・。

「・・・外では食べるようにしているが、食べなくて済むのならば食べたくないと思っている。」

それを聞いて、俯いていた顔を上げてお義兄様を見る。
どこかバツが悪いような顔をされている。

「青臭いだろう。小さくて食べにくいし。彩りには必要なのかもしれないが、食べる必要性を感じない。」

「ふふっ」

言い訳を少し早口で話すお義兄様が、なんだか少し身近に感じられて嬉しくなってしまった。

「しかたないだろう。昔からどうにも苦手なんだ。」

さらにそう言いつのるお義兄様。

「ふふっ。すみません。お義兄様にも苦手な物があったなんて、意外で、でもなんだか親近感を感じて嬉しくなってしまいました。」

そう言うと、お義兄様はどこか照れたような顔をしているような気がする。

「・・・ジュリアは何が苦手なんだ?」

「私ですか?私は実は、この甘く煮たニンジンが苦手です。」

そう答えると、お義兄様が少し驚いたような顔をした。

「意外だな。」

「そうですか?普通のニンジンは良いのですが、この独特の甘さがどうにも苦手なのです。なので、なるべく他の物と一緒に食べてごまかしています。」

そんな話をしているうちに、今日はなんだかお義兄様と少しだけ仲良くなれたような気がした。
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