6 / 35
side A ジュリアの物語
第6話
しおりを挟む
「ふう。」
メイドのナナが入れてくれたお茶を飲んで、一息つく。
「お疲れ様でございました。まだこちらに来られたばかりなのに、お疲れなのではありませんか?」
「ううん。公爵家の養女となったのだもの。しっかりと教養を身につけないとね。田舎娘は早く卒業しなきゃ。」
公爵家に来てから1週間が経とうとしている。
その間にお義父様と話し合って、公爵家の令嬢として相応しい教養を身につけるために家庭教師をつけてもらった。
お義父様には無理をしなくて良いって言ってもらったけれど、養女とは言え公爵家の一員となったのだもの。
公爵家の恥とならないように、相応しい振る舞いくらいは身につけなければね。
将来は政略結婚で嫁ぐ事になるかもしれないもの。
「ですが・・・ジュリアお嬢様にはそのままで居て欲しいです。」
ナナが小さく呟いた。
「え?どういうこと?」
「あ!いえ!あの、ジュリアお嬢様はお優しくて、ふんわりした雰囲気がとても素敵なので、そのままで居て欲しいな・・・なんて、出過ぎたことを申しました!!」
慌てて早口になるナナに思わず笑ってしまう。
「ふふふ。そんなに堅くならないで?ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい。」
「お、恐れ多い事でございます!」
優しくて、ふんわり・・・。
お母様のことを思い出すなぁ。
いつもニコニコ微笑んでいたお母様が思い浮かぶ。
『ジュリアとブリジットの笑った顔は、本当にそっくりだな~。』
『ほんと!?私、お母様みたい!?』
『あぁ!そっくりだ!お父様は、二人のその笑顔が大好きだから、見ているだけで幸せな気持ちになれるぞ!!』
そんな幼い日の父とのやりとりを思い出す。
幸せそうに私を抱き上げて話す父と、喜ぶ私のことを母は微笑みながら見てくれていた。
私と両親の、幸せな記憶。
湧き上がる涙は溢れる前にそっと拭った。
○○○
朝食はいつもお義父様とお義兄様と3人でとっているけれど、それ以外は日によって変わる。
昼食は1人が基本だが、夕食はその日によって様々だ。
今日の夕食はというと、お義兄様と2人きり。
一番緊張するパターンだから、待っている時間もすごく緊張している。
「待たせてしまってすまない。」
そう言って食堂へ入ってこられたお義兄様。
「とんでもありません!」
私は慌てて立ち上がる。
「そんなに緊張しなくていい。家族になったのだから。」
そうは言ってくださるけれど、正直に言うと顔が怖い・・・。
「あ、ありがとうございます。」
なんとか笑顔でそう答えるのが精一杯だった。
とても綺麗な顔をされているけれど、表情を崩すことのない冷たい美形ってこんなに怖いのだと、この家に来てから知った。
緊張しつつも食事を勧めていると、ふとお義兄様のお皿に目がとまる。
チキンソテーに添えられている緑豆が一向に減っていないような気がする。
なんなら端の方に避けられているような気がしなくも無い。
もしかして、お嫌いなのかしら?
「ふふっ」
涼しい顔をして緑豆がお嫌いだなんて。
なんだか小さな子どもみたい。
「どうした?」
ついつい小さく笑ってしまった私を見て、お義兄様が不思議そうにしている。
「いえ、あの、もしかして・・・緑豆がお嫌いなのですか?」
少し勇気を出して聞いてみる。
「・・・。」
どうしよう、黙ってしまわれたわ。
「端の方に寄せてあるので、もしかしてと思ったのですが・・・。ぶしつけなことを言ってしまってすみませんでした。」
失礼な事を言ってしまったかもしれない。
怒ってしまわれたかしら・・・。
「・・・外では食べるようにしているが、食べなくて済むのならば食べたくないと思っている。」
それを聞いて、俯いていた顔を上げてお義兄様を見る。
どこかバツが悪いような顔をされている。
「青臭いだろう。小さくて食べにくいし。彩りには必要なのかもしれないが、食べる必要性を感じない。」
「ふふっ」
言い訳を少し早口で話すお義兄様が、なんだか少し身近に感じられて嬉しくなってしまった。
「しかたないだろう。昔からどうにも苦手なんだ。」
さらにそう言いつのるお義兄様。
「ふふっ。すみません。お義兄様にも苦手な物があったなんて、意外で、でもなんだか親近感を感じて嬉しくなってしまいました。」
そう言うと、お義兄様はどこか照れたような顔をしているような気がする。
「・・・ジュリアは何が苦手なんだ?」
「私ですか?私は実は、この甘く煮たニンジンが苦手です。」
そう答えると、お義兄様が少し驚いたような顔をした。
「意外だな。」
「そうですか?普通のニンジンは良いのですが、この独特の甘さがどうにも苦手なのです。なので、なるべく他の物と一緒に食べてごまかしています。」
そんな話をしているうちに、今日はなんだかお義兄様と少しだけ仲良くなれたような気がした。
メイドのナナが入れてくれたお茶を飲んで、一息つく。
「お疲れ様でございました。まだこちらに来られたばかりなのに、お疲れなのではありませんか?」
「ううん。公爵家の養女となったのだもの。しっかりと教養を身につけないとね。田舎娘は早く卒業しなきゃ。」
公爵家に来てから1週間が経とうとしている。
その間にお義父様と話し合って、公爵家の令嬢として相応しい教養を身につけるために家庭教師をつけてもらった。
お義父様には無理をしなくて良いって言ってもらったけれど、養女とは言え公爵家の一員となったのだもの。
公爵家の恥とならないように、相応しい振る舞いくらいは身につけなければね。
将来は政略結婚で嫁ぐ事になるかもしれないもの。
「ですが・・・ジュリアお嬢様にはそのままで居て欲しいです。」
ナナが小さく呟いた。
「え?どういうこと?」
「あ!いえ!あの、ジュリアお嬢様はお優しくて、ふんわりした雰囲気がとても素敵なので、そのままで居て欲しいな・・・なんて、出過ぎたことを申しました!!」
慌てて早口になるナナに思わず笑ってしまう。
「ふふふ。そんなに堅くならないで?ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい。」
「お、恐れ多い事でございます!」
優しくて、ふんわり・・・。
お母様のことを思い出すなぁ。
いつもニコニコ微笑んでいたお母様が思い浮かぶ。
『ジュリアとブリジットの笑った顔は、本当にそっくりだな~。』
『ほんと!?私、お母様みたい!?』
『あぁ!そっくりだ!お父様は、二人のその笑顔が大好きだから、見ているだけで幸せな気持ちになれるぞ!!』
そんな幼い日の父とのやりとりを思い出す。
幸せそうに私を抱き上げて話す父と、喜ぶ私のことを母は微笑みながら見てくれていた。
私と両親の、幸せな記憶。
湧き上がる涙は溢れる前にそっと拭った。
○○○
朝食はいつもお義父様とお義兄様と3人でとっているけれど、それ以外は日によって変わる。
昼食は1人が基本だが、夕食はその日によって様々だ。
今日の夕食はというと、お義兄様と2人きり。
一番緊張するパターンだから、待っている時間もすごく緊張している。
「待たせてしまってすまない。」
そう言って食堂へ入ってこられたお義兄様。
「とんでもありません!」
私は慌てて立ち上がる。
「そんなに緊張しなくていい。家族になったのだから。」
そうは言ってくださるけれど、正直に言うと顔が怖い・・・。
「あ、ありがとうございます。」
なんとか笑顔でそう答えるのが精一杯だった。
とても綺麗な顔をされているけれど、表情を崩すことのない冷たい美形ってこんなに怖いのだと、この家に来てから知った。
緊張しつつも食事を勧めていると、ふとお義兄様のお皿に目がとまる。
チキンソテーに添えられている緑豆が一向に減っていないような気がする。
なんなら端の方に避けられているような気がしなくも無い。
もしかして、お嫌いなのかしら?
「ふふっ」
涼しい顔をして緑豆がお嫌いだなんて。
なんだか小さな子どもみたい。
「どうした?」
ついつい小さく笑ってしまった私を見て、お義兄様が不思議そうにしている。
「いえ、あの、もしかして・・・緑豆がお嫌いなのですか?」
少し勇気を出して聞いてみる。
「・・・。」
どうしよう、黙ってしまわれたわ。
「端の方に寄せてあるので、もしかしてと思ったのですが・・・。ぶしつけなことを言ってしまってすみませんでした。」
失礼な事を言ってしまったかもしれない。
怒ってしまわれたかしら・・・。
「・・・外では食べるようにしているが、食べなくて済むのならば食べたくないと思っている。」
それを聞いて、俯いていた顔を上げてお義兄様を見る。
どこかバツが悪いような顔をされている。
「青臭いだろう。小さくて食べにくいし。彩りには必要なのかもしれないが、食べる必要性を感じない。」
「ふふっ」
言い訳を少し早口で話すお義兄様が、なんだか少し身近に感じられて嬉しくなってしまった。
「しかたないだろう。昔からどうにも苦手なんだ。」
さらにそう言いつのるお義兄様。
「ふふっ。すみません。お義兄様にも苦手な物があったなんて、意外で、でもなんだか親近感を感じて嬉しくなってしまいました。」
そう言うと、お義兄様はどこか照れたような顔をしているような気がする。
「・・・ジュリアは何が苦手なんだ?」
「私ですか?私は実は、この甘く煮たニンジンが苦手です。」
そう答えると、お義兄様が少し驚いたような顔をした。
「意外だな。」
「そうですか?普通のニンジンは良いのですが、この独特の甘さがどうにも苦手なのです。なので、なるべく他の物と一緒に食べてごまかしています。」
そんな話をしているうちに、今日はなんだかお義兄様と少しだけ仲良くなれたような気がした。
24
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした〜
ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。
イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。
8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。
※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。
【完結】この胸に抱えたものは
Mimi
恋愛
『この胸が痛むのは』の登場人物達、それぞれの物語。
時系列は前後します
元話の『この胸が痛むのは』を未読の方には、ネタバレになります。
申し訳ありません🙇♀️
どうぞよろしくお願い致します。
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます
よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」
婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。
「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」
「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」
両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。
お姉様からは用が済んだからと捨てられます。
「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」
「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」
ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。
唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。
ここから私の人生が大きく変わっていきます。
【本編完結】厄災烙印の令嬢は貧乏辺境伯領に嫁がされるようです
あおまる三行
恋愛
王都の洗礼式で「厄災をもたらす」という烙印を持っていることを公表された令嬢・ルーチェ。
社交界では腫れ物扱い、家族からも厄介者として距離を置かれ、心がすり減るような日々を送ってきた彼女は、家の事情で辺境伯ダリウスのもとへ嫁ぐことになる。
辺境伯領は「貧乏」で知られている、魔獣のせいで荒廃しきった領地。
冷たい仕打ちには慣れてしまっていたルーチェは抵抗することなくそこへ向かい、辺境の生活にも身を縮める覚悟をしていた。
けれど、実際に待っていたのは──想像とはまるで違う、温かくて優しい人々と、穏やかで心が満たされていくような暮らし。
そして、誰より誠実なダリウスの隣で、ルーチェは少しずつ自分の居場所を取り戻していく。
静かな辺境から始まる、甘く優しい逆転マリッジラブ物語。
【追記】本編完結しました
悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!
ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」
特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18)
最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。
そしてカルミアの口が動く。
「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」
オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。
「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」
この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。
2度目の結婚は貴方と
朧霧
恋愛
前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか?
魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。
重複投稿作品です。(小説家になろう)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる