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第20話
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3人で朝食をとっていたある日、アーネスト様が口を開いた。
「もうすぐネイサンの誕生日が来る。トルコーダ家の跡取りのお披露目も兼ねてパーティーを開こうと思っている。」
「まぁ、それはいいですね。良いパーティーになるように私も協力いたします。」
「ありがとうございます、お義父様、エレン様!」
あの一件から私とアーネスト様の距離がひらいたまま時間が過ぎた。
あの時にやっと、私とアーネスト様の契約について、アリス様についてをネイサンに話したそうだけど。
ネイサンの態度は前と変わっていないように思う。
ネイサンがやって来た日に話していなかった事には驚いた。
ネイサンが辛くなっていなければいいのだけれど。
○○○
「みなさま、本日はお越し頂きありがとうございます。こちらは、この度我がトルコーダ家の養子として迎えました、ネイサンです。侯爵家の跡取りとなるべく、日々努力を重ねています。本日12歳となり、来年には魔法学園へ入学する予定です。まだまだ未熟ではありますが、今後とも皆様のご助力をお願いしたいと思います。」
「ただいま紹介していただきました、ネイサン・トルコーダです。至らない点が多いこととは思いますが、皆さんから多くのことを学び、トルコーダ侯爵家に相応しい後継者となれるよう努めて参ります。今後ともどうかよろしくお願いいたします。」
あっという間にネイサンの誕生日パーティーの日を迎えた。
アーネスト様の挨拶のあとに、立派に挨拶をするネイサンの姿に感動し、涙が浮かびそうになります。
まだ12歳、侯爵家に来てから1年程度だというのに。
本当にネイサンは立派だわ。
「エレン、賢くて堂々としたよい子ね、ネイサンという子は。」
「お義母さま!お久しぶりです。本日はお越しくださってありがとうございます。」
今日はネイサンの誕生日兼お披露目パーティーということで、領地から義両親も来てくれている。
「当たり前でしょう?義理とは言え、孫ですからね。ぜひとも仲良くなりたいわ。」
「ふふふ。ネイサンは素直で可愛い子ですから、きっとお義母様も気に入ると思います。忙しい勉強や訓練の合間に、私の温室の管理も手伝ってくれるのですよ。お義母様にお送りしている匂い袋を作るのも手伝ってくれているんですよ。」
「まぁ!そうなの?・・・良かったわ、エレンが元気そうで。私たちが領地へ引っ越してから、辛くなっていないかと心配していたのよ。」
お義母様は本当にお優しい。実の家族から冷たくされていた私にとって、義両親は本当の親以上に大切な存在なの。
「ありがとうございます。お二人が引っ越してから寂しかったのですが、アーネスト様も良くしてくださいましたし、ネイサンがとても支えになっています。」
「・・・そう。アーネストは相変わらずなの・・・?」
「アーネスト様とは、一時は距離が近づいたのですが・・・。やはり私は契約妻ですから。距離があった方が私としても気が楽です。いつかは別れが来るのですから。」
少し胸が痛むけれど。
これは間違いなく私の本心。
「エレン・・・。アーネストなんかに、あなたはもったいないわ。あの子と離縁したら、うちへいらっしゃい。私たちとゆっくり暮らしながら、私が良い人を探してあげるわ。そうよ、それがいいわ。」
「ふふふ。そうですね、それは楽しそうです!」
お義母様と二人で笑い合う。
もしもそうできたら、きっと楽しいし幸せなのに。
「エレン。魔法学園の学園長がいらしているから、一緒に挨拶を。」
アーネスト様に声をかけられる。
なんだか不機嫌そう?どうしたのかしら。
「アーネスト、私に挨拶はないのかしら?」
「・・・母上、お久しぶりです。くだらない事をエレンに吹き込まないでいただきたい。それでは。」
アーネスト様に少し強引にエスコートされ、お義母様のもとから移動する。
「・・・あら。意外ね。ふふふ。」
お義母様のつぶやきは私には聞こえていなかった。
「もうすぐネイサンの誕生日が来る。トルコーダ家の跡取りのお披露目も兼ねてパーティーを開こうと思っている。」
「まぁ、それはいいですね。良いパーティーになるように私も協力いたします。」
「ありがとうございます、お義父様、エレン様!」
あの一件から私とアーネスト様の距離がひらいたまま時間が過ぎた。
あの時にやっと、私とアーネスト様の契約について、アリス様についてをネイサンに話したそうだけど。
ネイサンの態度は前と変わっていないように思う。
ネイサンがやって来た日に話していなかった事には驚いた。
ネイサンが辛くなっていなければいいのだけれど。
○○○
「みなさま、本日はお越し頂きありがとうございます。こちらは、この度我がトルコーダ家の養子として迎えました、ネイサンです。侯爵家の跡取りとなるべく、日々努力を重ねています。本日12歳となり、来年には魔法学園へ入学する予定です。まだまだ未熟ではありますが、今後とも皆様のご助力をお願いしたいと思います。」
「ただいま紹介していただきました、ネイサン・トルコーダです。至らない点が多いこととは思いますが、皆さんから多くのことを学び、トルコーダ侯爵家に相応しい後継者となれるよう努めて参ります。今後ともどうかよろしくお願いいたします。」
あっという間にネイサンの誕生日パーティーの日を迎えた。
アーネスト様の挨拶のあとに、立派に挨拶をするネイサンの姿に感動し、涙が浮かびそうになります。
まだ12歳、侯爵家に来てから1年程度だというのに。
本当にネイサンは立派だわ。
「エレン、賢くて堂々としたよい子ね、ネイサンという子は。」
「お義母さま!お久しぶりです。本日はお越しくださってありがとうございます。」
今日はネイサンの誕生日兼お披露目パーティーということで、領地から義両親も来てくれている。
「当たり前でしょう?義理とは言え、孫ですからね。ぜひとも仲良くなりたいわ。」
「ふふふ。ネイサンは素直で可愛い子ですから、きっとお義母様も気に入ると思います。忙しい勉強や訓練の合間に、私の温室の管理も手伝ってくれるのですよ。お義母様にお送りしている匂い袋を作るのも手伝ってくれているんですよ。」
「まぁ!そうなの?・・・良かったわ、エレンが元気そうで。私たちが領地へ引っ越してから、辛くなっていないかと心配していたのよ。」
お義母様は本当にお優しい。実の家族から冷たくされていた私にとって、義両親は本当の親以上に大切な存在なの。
「ありがとうございます。お二人が引っ越してから寂しかったのですが、アーネスト様も良くしてくださいましたし、ネイサンがとても支えになっています。」
「・・・そう。アーネストは相変わらずなの・・・?」
「アーネスト様とは、一時は距離が近づいたのですが・・・。やはり私は契約妻ですから。距離があった方が私としても気が楽です。いつかは別れが来るのですから。」
少し胸が痛むけれど。
これは間違いなく私の本心。
「エレン・・・。アーネストなんかに、あなたはもったいないわ。あの子と離縁したら、うちへいらっしゃい。私たちとゆっくり暮らしながら、私が良い人を探してあげるわ。そうよ、それがいいわ。」
「ふふふ。そうですね、それは楽しそうです!」
お義母様と二人で笑い合う。
もしもそうできたら、きっと楽しいし幸せなのに。
「エレン。魔法学園の学園長がいらしているから、一緒に挨拶を。」
アーネスト様に声をかけられる。
なんだか不機嫌そう?どうしたのかしら。
「アーネスト、私に挨拶はないのかしら?」
「・・・母上、お久しぶりです。くだらない事をエレンに吹き込まないでいただきたい。それでは。」
アーネスト様に少し強引にエスコートされ、お義母様のもとから移動する。
「・・・あら。意外ね。ふふふ。」
お義母様のつぶやきは私には聞こえていなかった。
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