契約結婚~彼には愛する人がいる~

よしたけ たけこ

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番外編 アーネストのその後

HAPPY END編②

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ニーナを抱きかかえて夜道を走り、なんとか最寄りの街へたどり着いた。


ドンドンドン!!


「誰か!誰か頼む!助けてくれ!!」


街へと入るための門は閉まっている時間だ。
それでも、どうにか街に入れてもらわないとならない。


「何だよ、こんな時間に!」


扉についている小窓を開けて警備隊らしき男が顔をのぞかせる。


「こんな時間に申し訳ない!だが、この子が死にそうなんだ!どうか助けてくれ!!」


俺の言葉に、男は驚いたようだ。


「なんだって!?ちょ、ちょっと待て!」


そうして扉を開けて男が姿を現した。


「どうしたんだ!何があった!?」


「大雨で馬車が横転して大破してしまったんだ!なんとかこの子だけは助かったんだが、どこか怪我をしたのかぐったりしてしまって!お願いだ!助けてくれないか!!」


「こんな時間に、それもあの雨の中で馬車を走らせていたのか!?・・・そうか、またあの国から逃げ出してきた難民か。分かった、治癒師の所まで案内しよう。中へ入れ。」


内戦のさなかにあるあの国から、この国へ逃げてくる難民は多いらしい。
国境に接するこの街では、きっと多くの難民を受け入れているのだろう。


街へ入って行くが、夜更けだからか人には出くわさない。
しばらく隊員の後について歩いていくと、ある家の前で立ち止まった。


コンコン


「・・・・・・・・・・はい?」


ノックの後、少しして返事があり扉を開けて人が出てきた。


「遅くに申し訳ない。また難民が逃げてきたようなんだが、どうやら馬車の事故があったみたいだ。幼い子どもが怪我をしたみたいでぐったりしているんだ。診てやってもらえないか?」


隊員の男がそう言って、こちらに目をやった。
扉から出てきたのは、どうやら治癒師だったようだ。


「こんな時間にですか。しかも大雨の中を・・・。とりあえず中に入ってください。」


治癒師はそう言って私達を部屋の中へ招き入れた。


「子どもさんは、こちらの寝台へどうぞ。」


そう言われ、ニーナをそっと寝台へ横たえる。


「この子の名前は?」


「ニーナです。」


「ニーナ、ちょっと診察させてもらうよ?」


意識の無いニーナに、治癒師はそう声をかけてから診察を始めた。


「大きな怪我は見当たりませんね。軽い打ち身程度です。ただ、もともと衰弱しているから軽い打ち身でも身体への負担が大きく、意識を失っているようです。戦禍では仕方がないのかもしれませんが・・・かなりの栄養失調ですね。痛ましい限りです。」


ひとまず大きな怪我が無いことに安堵したが、栄養失調による衰弱とは・・・。
本当に痛ましい。こんなに小さな体で、どれだけ大変な思いをしてきたのだろうか。


「打ち身は治癒魔法で回復させましたが、栄養失調による衰弱は魔法では治せません。時間をかけて治していくよりほか無いですね。」


魔法は万能ではない。
全てを魔法で治すことが出来ない事は、俺には痛いほどよく分かっている。


「ありがとうございました。打ち身を治してもらえただけで有り難いです。意識はすぐに戻るのでしょうか?」


「恐らくすぐに戻るでしょう。ただ、衰弱しているので、またすぐに意識を失う可能性もあります。しばらくは安静にして、栄養のあるものを食べさせてください。」


そんなやり取りをしていると、ニーナが目を覚ました。


「・・・お母さん?」


「ニーナ!」


目が覚めたニーナに、思わず駆け寄り呼びかけた。


「・・・誰?」


案内してくれた隊員の男と治癒師の男が驚いて俺を見ている。
きっと俺の事をニーナの親族か知り合いかとでも思っていたのだろう。


「俺は、たまたま通りかかってニーナをここまで連れてきたんだ。」


嘘をついてもしかたがない。
そう思って正直に話す。


「どこか、痛いところはないか?」


「・・・うん。大丈夫。」


そう言ってから、またニーナは眠ってしまった。


「あんた、この子の家族なんじゃないのか?」


隊員の男にそう問いかけられた。


「あぁ、何の関係もない他人だ。俺はたまたま馬車が大破している所に遭遇して、倒れている人達を助けられないかと思って・・・息があったのは、この子だけだった。それで一番近いこの街に連れてきたんだ。」


隊員の男は訝しそうに俺を見ている。


「・・・そうか。夜が明けたら警備隊を派遣する。現場まで案内してくれるか?」


「もちろんだ。それまではこの子に付き添っていてやりたいのだが・・・」


隊員の男と治癒師が顔を見合わせる。


「こんな時間だし、どこにも行く当ては無いのでしょう?ここに泊まっていいですよ。」


治癒師がそう言ってくれた。
俺は深く頭を下げた。


「申し訳ない。そして恩に着る。俺は、アレクだ。」


「僕は治癒師のルイスです。アレクさんも、かなり疲れているようですね。ひとまずゆっくり休んでください。」


そう言ってニーナの隣の寝台を貸してくれた。


「じゃ、俺は詰め所に戻るよ。明日警備隊が迎えにくると思う。」


そう言って隊員の男は去って行った。
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