41 / 44
番外編 アーネストのその後
HAPPY END編③
しおりを挟む
次の日、目覚めるとすぐにニーナの様子を確認する。
どうやらまだ眠っているようだ。
「アレクさん、おはようございます。簡単なものしかありませんけど、朝食を食べますか?」
物音で気付いたのか、治癒師のルイスがやって来た。
「それは有り難い。代金はもちろん支払わせてもらうよ。」
「いやいや、そんな大したモンじゃ無いですから。持ってくるので少し待っていてください。」
そうしてルイスが準備してくれた朝食を頂いて、ニーナの傍で見守っていると警備隊がやってきた。
ニーナの事はルイスに頼んで、俺は警備隊を昨日の馬車が大破している所まで案内した。
警備隊が倒れている遺体を回収して事故現場を調べる。
俺も状況を聞かれたが、大きな音がして駆けつけた時には既にこの状態で、投げ出されたであろう人達は、ニーナ以外は既に亡くなっていた事を説明した。
しばらく調査が行われたあと、一緒に街へと戻ってきた。
そのまま警備隊の隊舎へ連れて行かれ、俺の身元確認が行われた。
出身は元の国で、その後、今は戦禍にあるあの国に移住した平民のアレクという事にした。
あの国の戦争が激しくなり始めてからまた国を出て、あちこちを転々としていたと説明して、なんとか納得してもらった。
戦禍のあの国にいたとなれば、そこで身分証を紛失してしまってもおかしくない。
身分証がなければ、家名のない平民の身元照会など不可能だ。そしてこの国は難民が多く集まってくる事もあって、身元確認は緩くなっているのも助けとなった。
一通りの事が終わると、すでに夕方にさしかかっていた。
とりあえず今夜の宿を何とか確保して、治療所へと戻る。
「アレクさん、けっこう長くかかりましたね。お疲れ様でした。」
治療所に戻ってくると、ルイスが出迎えてくれた。
「そうなんだ。俺の身元確認もあったから。でも宿は取れたから、今日からはそちらに移ろうと思う。これはお礼だ。」
そう言って銀貨を20枚渡す。
「そんな!ただ一晩泊めただけなのに、こんなにもらえませんよ!」
「いや、ニーナの事も治癒してもらって、寝床に食事まで世話になったんだ。これくらいは受け取って欲しい。」
そう言って、なかば無理矢理ルイスへ握らせる。
「・・・分かりました。有り難く受け取らせてもらいます。それで、ニーナはどうしますか?」
ニーナは、今日は何度か目を覚ましたが、スープを摂取して少しすると眠ってまた目覚めるというのを繰り返しているそうだ。
ニーナとはたまたま出会って、命を救うためにここへ連れてきた、それだけの関係だ。
正直なところ、これからどうすべきなのか分からない。
俺には定職もなければ、家も無い。
これからどうやって生きていくのかも決まっていない俺が引き取るというのは・・・。
そう思っていると、ニーナが俺の指を握った。
「・・・ニーナの家族は、一緒に馬車に乗っていたんですかね?」
ルイスに問いかけられた。
「わからない。ただ、俺が見つけたとき、ニーナは女性に庇うように抱きしめられていた。きっと、あれが母親ではないかと思う。だが、既に亡くなっていた。」
「そうですか・・・。とりあえず、ニーナが普通に一日を過ごせるようになるまではここで療養してもらいましょうか。その後のことは・・・本人とも相談しましょう。」
「よろしく頼む。」
「でも、できれば毎日顔を見せに来てあげてくれますか?実は目を覚ますたびに、ニーナはあなたを探していたんです。」
「俺を?」
その言葉に驚いた。
「母親を探していたんじゃないか?」
信じられず、俺はそう尋ねた。
「僕も最初はそう思いました。でも、『お母さんを探してるの?』って聞いたら、首を横に振ったんですよ。その後も、目を覚ますたびにキョロキョロと誰かを探していました。きっと、アレクさんの事ですよ。」
まさか。
見ず知らずの俺を探していた?
とても信じられないが・・・
「では、また明日顔を出すよ。」
そう言って治療所をあとにした。
どうやらまだ眠っているようだ。
「アレクさん、おはようございます。簡単なものしかありませんけど、朝食を食べますか?」
物音で気付いたのか、治癒師のルイスがやって来た。
「それは有り難い。代金はもちろん支払わせてもらうよ。」
「いやいや、そんな大したモンじゃ無いですから。持ってくるので少し待っていてください。」
そうしてルイスが準備してくれた朝食を頂いて、ニーナの傍で見守っていると警備隊がやってきた。
ニーナの事はルイスに頼んで、俺は警備隊を昨日の馬車が大破している所まで案内した。
警備隊が倒れている遺体を回収して事故現場を調べる。
俺も状況を聞かれたが、大きな音がして駆けつけた時には既にこの状態で、投げ出されたであろう人達は、ニーナ以外は既に亡くなっていた事を説明した。
しばらく調査が行われたあと、一緒に街へと戻ってきた。
そのまま警備隊の隊舎へ連れて行かれ、俺の身元確認が行われた。
出身は元の国で、その後、今は戦禍にあるあの国に移住した平民のアレクという事にした。
あの国の戦争が激しくなり始めてからまた国を出て、あちこちを転々としていたと説明して、なんとか納得してもらった。
戦禍のあの国にいたとなれば、そこで身分証を紛失してしまってもおかしくない。
身分証がなければ、家名のない平民の身元照会など不可能だ。そしてこの国は難民が多く集まってくる事もあって、身元確認は緩くなっているのも助けとなった。
一通りの事が終わると、すでに夕方にさしかかっていた。
とりあえず今夜の宿を何とか確保して、治療所へと戻る。
「アレクさん、けっこう長くかかりましたね。お疲れ様でした。」
治療所に戻ってくると、ルイスが出迎えてくれた。
「そうなんだ。俺の身元確認もあったから。でも宿は取れたから、今日からはそちらに移ろうと思う。これはお礼だ。」
そう言って銀貨を20枚渡す。
「そんな!ただ一晩泊めただけなのに、こんなにもらえませんよ!」
「いや、ニーナの事も治癒してもらって、寝床に食事まで世話になったんだ。これくらいは受け取って欲しい。」
そう言って、なかば無理矢理ルイスへ握らせる。
「・・・分かりました。有り難く受け取らせてもらいます。それで、ニーナはどうしますか?」
ニーナは、今日は何度か目を覚ましたが、スープを摂取して少しすると眠ってまた目覚めるというのを繰り返しているそうだ。
ニーナとはたまたま出会って、命を救うためにここへ連れてきた、それだけの関係だ。
正直なところ、これからどうすべきなのか分からない。
俺には定職もなければ、家も無い。
これからどうやって生きていくのかも決まっていない俺が引き取るというのは・・・。
そう思っていると、ニーナが俺の指を握った。
「・・・ニーナの家族は、一緒に馬車に乗っていたんですかね?」
ルイスに問いかけられた。
「わからない。ただ、俺が見つけたとき、ニーナは女性に庇うように抱きしめられていた。きっと、あれが母親ではないかと思う。だが、既に亡くなっていた。」
「そうですか・・・。とりあえず、ニーナが普通に一日を過ごせるようになるまではここで療養してもらいましょうか。その後のことは・・・本人とも相談しましょう。」
「よろしく頼む。」
「でも、できれば毎日顔を見せに来てあげてくれますか?実は目を覚ますたびに、ニーナはあなたを探していたんです。」
「俺を?」
その言葉に驚いた。
「母親を探していたんじゃないか?」
信じられず、俺はそう尋ねた。
「僕も最初はそう思いました。でも、『お母さんを探してるの?』って聞いたら、首を横に振ったんですよ。その後も、目を覚ますたびにキョロキョロと誰かを探していました。きっと、アレクさんの事ですよ。」
まさか。
見ず知らずの俺を探していた?
とても信じられないが・・・
「では、また明日顔を出すよ。」
そう言って治療所をあとにした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4,263
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる