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*四年前* 入学
16 繋がる心(※)
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カノンは、リュンクスを手放すつもりがない。
手首を握ってリュンクスを引っ張るカノンは何も言わないが、関係を続けるつもりなのは明白だった。そのことにリュンクスは喜びを感じている。
「どこへ行くんだ?」
部屋に戻る道ではなく、一階の奥へ向かうカノン。
引きずられるまま付いて行きながら、リュンクスは疑問に思った。
「浴室だ。どうせ体を洗うだろう」
カノンがそっけなく返事をする。
寮の個室にバストイレは付いていない。一階には大浴場と、貸切にできるシャワールームがあった。
狭いシャワールームに一緒に入る。
天井に設置された魔術道具から、温い水が雨のように降り注いでいる。
リュンクスはローブを脱ぎ捨てて裸になると、昼間にかいた汗を雨の下で洗い流した。ノクトと遊んだ後、布で体を拭いただけなので、肌がべとついていたのだ。
自分も服を脱ぎながら、カノンはリュンクスの裸身を睨むように観察している。
「……乱暴なことは、されなかったんだな」
「うん」
「ここは」
カノンは距離を詰めると、リュンクスの後ろに手を伸ばしてきた。
細い指が、リュンクスの後穴に入ってくる。
「まだ柔らかいな。確かめていいか……?」
真後ろに立ったカノンが、首筋に顔を寄せて耳を軽く食みながら囁く。
マスターなのだから律儀に確認しなくても、欲望のままに突っ込めばいいのに、カノンは妙に真面目だった。しかし、そんなカノンだからこそ、心も体も許せるのだと思う。
リュンクスは息を詰めながら「好きにしろよ」と答える。
すぐに熱い男根が、熟れた果実のように柔らかい後穴に押し入ってきた。まだノクトとの性交の余韻が残っている。
「ぅあ、深……っ」
立ちながら背後からの挿入は、気を抜くと自重で深くカノンを呑み込んでしまう。リュンクスは壁にすがったが、ガツガツと突き上げるカノンの動きに、すぐに余裕を無くした。
汗がシャワーの水滴に洗い流され、熱いのか冷たいのか、分からない。
手荒な交淫はまるで執着の証のようで、不安が熱に溶けていくのを感じた。
「……自分で、先輩と付き合えと言った癖に、君が実際に先輩のところに行ったら、苛々した……」
リュンクスの中に、たっぷり魔力を含んだ精を注ぎこんだ後。
崩れ落ちるリュンクスを抱き止め、カノンは後悔するように言った。
「俺は勝手だな……」
「そんなことない」
荒い息を整えながら、答える。
「俺も、カノンが止めてくれないか、と勝手なことを思ってた」
「リュンクス……っ」
上からカノンの唇が降ってくる。
シャワーの雨の中、二人は貪《むさぼ》りあうようなキスを交わした。
カノンの魔力は、高熱の炎のようだ。
体内に流れこむ魔力に酔いしれながら、リュンクスは思う。
慣れてくると、魔術師によって魔力の質や種類が異なることに気付く。ノクトの魔力が、気まぐれな風や冷たい水のような感触なら、カノンの魔力は薪を燃やす火だった。ちろちろとゆっくり薪を舐めて炭にする炎。
ノクトの痕跡を上書きするように魔力を送り込み、リュンクスがうっとりしているのを見届けて、カノンは唇を離した。
「我ながら身勝手にも程があるが、俺はリュンクス一人だけをサーヴァントに選ぶことはできない」
「……」
「だけどリュンクスは、他のマスターに抱かれて欲しくない。ノクト先輩は、もう仕方ないとしても」
両手でリュンクスの頬を包み込み、苦悩を秘めた瞳で見下ろしながら、カノンが言ってくる。
「ああ、分かった」
リュンクスは平然と頷いた。
「不公平だと……え?」
「もともと、体を売って回るような趣味は無いよ。最初はよく分からなくて先輩に良いようにされたけど、次はない。魔術でやり返してやる」
「そ、そうか。いや違う。俺に不満はないのか?」
意気軒昂に宣言するリュンクス。
カノンは「本当にいいのか」と戸惑っている。
リュンクスは軽やかに笑った。
「俺を友人にしてくれるんだろう」
「……ああ」
「なら別に不満はない」
カノンは明言しないが、それは特別扱いすると言っているようなものだ。サーヴァントという関係なしでも繋がっていける。リュンクスは満足していた。
ノクトの言っていた「恋人関係」という言葉が、ふと脳裏をよぎる。
しかしリュンクスは、頭を振ってその言葉を追い出した。
恋人関係が具体的にどのような関係を指す言葉なのか、人生経験の浅いリュンクスにはよく分からない。だからカノンとそうなりたいのかさえ、分からなかった。
「そろそろ部屋に戻ろう」
リュンクスが小さなくしゃみをしたのをきっかけに、二人は体を拭いてシャワールームを出た。
別々の部屋に戻るのは気が進まない。それよりも今は、育んだばかりの絆をゆっくり確かめたい気分だった。
カノンも同じだったらしく、リュンクスは手を引かれて彼の部屋に連れ込まれた。
結局、朝までカノンの部屋にいた。
手首を握ってリュンクスを引っ張るカノンは何も言わないが、関係を続けるつもりなのは明白だった。そのことにリュンクスは喜びを感じている。
「どこへ行くんだ?」
部屋に戻る道ではなく、一階の奥へ向かうカノン。
引きずられるまま付いて行きながら、リュンクスは疑問に思った。
「浴室だ。どうせ体を洗うだろう」
カノンがそっけなく返事をする。
寮の個室にバストイレは付いていない。一階には大浴場と、貸切にできるシャワールームがあった。
狭いシャワールームに一緒に入る。
天井に設置された魔術道具から、温い水が雨のように降り注いでいる。
リュンクスはローブを脱ぎ捨てて裸になると、昼間にかいた汗を雨の下で洗い流した。ノクトと遊んだ後、布で体を拭いただけなので、肌がべとついていたのだ。
自分も服を脱ぎながら、カノンはリュンクスの裸身を睨むように観察している。
「……乱暴なことは、されなかったんだな」
「うん」
「ここは」
カノンは距離を詰めると、リュンクスの後ろに手を伸ばしてきた。
細い指が、リュンクスの後穴に入ってくる。
「まだ柔らかいな。確かめていいか……?」
真後ろに立ったカノンが、首筋に顔を寄せて耳を軽く食みながら囁く。
マスターなのだから律儀に確認しなくても、欲望のままに突っ込めばいいのに、カノンは妙に真面目だった。しかし、そんなカノンだからこそ、心も体も許せるのだと思う。
リュンクスは息を詰めながら「好きにしろよ」と答える。
すぐに熱い男根が、熟れた果実のように柔らかい後穴に押し入ってきた。まだノクトとの性交の余韻が残っている。
「ぅあ、深……っ」
立ちながら背後からの挿入は、気を抜くと自重で深くカノンを呑み込んでしまう。リュンクスは壁にすがったが、ガツガツと突き上げるカノンの動きに、すぐに余裕を無くした。
汗がシャワーの水滴に洗い流され、熱いのか冷たいのか、分からない。
手荒な交淫はまるで執着の証のようで、不安が熱に溶けていくのを感じた。
「……自分で、先輩と付き合えと言った癖に、君が実際に先輩のところに行ったら、苛々した……」
リュンクスの中に、たっぷり魔力を含んだ精を注ぎこんだ後。
崩れ落ちるリュンクスを抱き止め、カノンは後悔するように言った。
「俺は勝手だな……」
「そんなことない」
荒い息を整えながら、答える。
「俺も、カノンが止めてくれないか、と勝手なことを思ってた」
「リュンクス……っ」
上からカノンの唇が降ってくる。
シャワーの雨の中、二人は貪《むさぼ》りあうようなキスを交わした。
カノンの魔力は、高熱の炎のようだ。
体内に流れこむ魔力に酔いしれながら、リュンクスは思う。
慣れてくると、魔術師によって魔力の質や種類が異なることに気付く。ノクトの魔力が、気まぐれな風や冷たい水のような感触なら、カノンの魔力は薪を燃やす火だった。ちろちろとゆっくり薪を舐めて炭にする炎。
ノクトの痕跡を上書きするように魔力を送り込み、リュンクスがうっとりしているのを見届けて、カノンは唇を離した。
「我ながら身勝手にも程があるが、俺はリュンクス一人だけをサーヴァントに選ぶことはできない」
「……」
「だけどリュンクスは、他のマスターに抱かれて欲しくない。ノクト先輩は、もう仕方ないとしても」
両手でリュンクスの頬を包み込み、苦悩を秘めた瞳で見下ろしながら、カノンが言ってくる。
「ああ、分かった」
リュンクスは平然と頷いた。
「不公平だと……え?」
「もともと、体を売って回るような趣味は無いよ。最初はよく分からなくて先輩に良いようにされたけど、次はない。魔術でやり返してやる」
「そ、そうか。いや違う。俺に不満はないのか?」
意気軒昂に宣言するリュンクス。
カノンは「本当にいいのか」と戸惑っている。
リュンクスは軽やかに笑った。
「俺を友人にしてくれるんだろう」
「……ああ」
「なら別に不満はない」
カノンは明言しないが、それは特別扱いすると言っているようなものだ。サーヴァントという関係なしでも繋がっていける。リュンクスは満足していた。
ノクトの言っていた「恋人関係」という言葉が、ふと脳裏をよぎる。
しかしリュンクスは、頭を振ってその言葉を追い出した。
恋人関係が具体的にどのような関係を指す言葉なのか、人生経験の浅いリュンクスにはよく分からない。だからカノンとそうなりたいのかさえ、分からなかった。
「そろそろ部屋に戻ろう」
リュンクスが小さなくしゃみをしたのをきっかけに、二人は体を拭いてシャワールームを出た。
別々の部屋に戻るのは気が進まない。それよりも今は、育んだばかりの絆をゆっくり確かめたい気分だった。
カノンも同じだったらしく、リュンクスは手を引かれて彼の部屋に連れ込まれた。
結局、朝までカノンの部屋にいた。
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