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*現在* 天空の城
179 新入生歓迎会
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新入生歓迎会で飲まされた薬により、リュンクスはサーヴァントだと発覚し、ノクトに強姦された。無理やりに抱かれてサーヴァントに堕とされたことを、今は特に恨みに思っていない。
あの出逢いは強烈だった。
リュンクスは心ごと先輩に攫われ、今も解放されていない。
目下のところ、心配なのは、カノンがそのような運命の出逢いをしないとも限らない、ということだった。
あのノクトだって、新入生歓迎会の直前まで、自分が特定の新入生に執着することになるとは夢にも思っていなかったのだから。
「……気になる」
因縁の新入生歓迎会の日。
リュンクスは、自分はサーヴァントなので歓迎会に加わる必要はないと知りつつ、気になって途中で様子を見に行った。
軽食を作って差し入れるという口実で、食堂に足を踏み入れる。
「ちょうど良いところに来た! リュンクス、王様をどうにかしてくれよ」
同級生が、何故か困った顔で声をかけてくる。
「どうにか?」
「あいつの周りにだけ一年生が集まって、俺たちが仲良くなる機会が無いんだ」
食堂を見渡すと、奥の上座にカノンの目立つ姿がある。
一年生のうち積極的な性格の者は、カノンの近くに陣取って話しかけている。カノンが穏やかに答えるので、調子に乗っているようだ。
遠くの席の一年生も、カノンが気になるようで、ちらちらと余所見しており、同じテーブルの上級生の話を聞き流している。
確かに、これはカノンの一人勝ち状態で、他の同級生が可哀想だ。
「お前ら、情けねーな。カノンに言えばいいじゃん。お前は邪魔だって」
「そんな度胸があったら、とっくに申し立ててるよ!」
リュンクスの指摘に、同級生は泣きそうな顔だ。
しかし、これはカノンを連れ出す絶好の口実だ。
しめしめとリュンクスは内心ほくそ笑んだ。
カノンを歓迎会から連れ出そうと歩みを進めれば、何故か一年生達が急にリュンクスに注目する。
「あ! 歓迎会について教えてくれたリュンクス先輩だ!」
「リュンクス先輩!」
一年生に歓迎会を告知した時に、顔を覚えられたのだろう。
リュンクスは、たちまち複数の一年生に捕まった。
「先輩、歓迎会の案内の後に言っていた、マスターとサーヴァントの話をもっとよく聞かせて下さい」
大人びた顔つきの一年生に引き止められる。
この絡みつくような感じ、マスター属性か。
リュンクスは顔をしかめた。
「俺は、差し入れを持って来ただけだ。話は他の先輩に聞かせてもらえ」
「リュンクス先輩が良いんです!」
やんわり断るが、一年生はなおも食い下がってくる。
リュンクスは、目を細めて低い声を出した。
「……くどい。俺は、お前らの相手をしてる暇は無いんだ。どけ」
一見あんまりな言い方だが、リュンクスのそれは艶があり、気迫がこもっていた。乱暴な言葉遣いだが不思議と下品ではない。
一年生は気圧されて黙る。
「リュンクス、もう時間か」
「カノン」
リュンクスが来た事に気付いたのか、カノンは立ち上がる。
「諸君、すまないが俺は用事があるので失礼する」
そんな話は事前にしていなかったのに、カノンはまるで約束でもしていたかのように優雅に離席した。
「一年の諸君、俺は退出するが他の先輩方は残る。これから塔で生活していく上で、分からない事や不安が多くあるだろう。先輩方と交流を深め、疑問があれば解消するといい。先輩方は真摯に向き合ってくれるはずだ。俺は君達と共に学べる日を楽しみにしている」
カノンは朗々と締めの挨拶をする。
その低音に聞き惚れ、一年生達は静まり返った。
「この機会に紹介する。そこにいるのは、俺のパートナーとなるサーヴァント、リュンクスだ。諸君らも、塔で過ごしていく中で、掛け替えのないパートナーと巡り会うだろう。どうか悔いのない時間を過ごしてくれ」
視線だけでリュンクスを指し示し、カノンは余裕の微笑みを浮かべた。
一年生は感激しているようだ。
彼らは自然と道を開ける。遮る者ない中央を通り抜けたカノンは、リュンクスに歩み寄り、軽く肩を叩いた。
小声で耳打ちしてくる。
「……俺を連れ出そうとして、自分が捕まってどうする」
リュンクスは顔が引きつりかけたが、年長者の誇りに掛け表情筋を辛うじて動かないよう制御した。
二人は堂々と通路に出る。
誰も引き留める者はいなかった。
あの出逢いは強烈だった。
リュンクスは心ごと先輩に攫われ、今も解放されていない。
目下のところ、心配なのは、カノンがそのような運命の出逢いをしないとも限らない、ということだった。
あのノクトだって、新入生歓迎会の直前まで、自分が特定の新入生に執着することになるとは夢にも思っていなかったのだから。
「……気になる」
因縁の新入生歓迎会の日。
リュンクスは、自分はサーヴァントなので歓迎会に加わる必要はないと知りつつ、気になって途中で様子を見に行った。
軽食を作って差し入れるという口実で、食堂に足を踏み入れる。
「ちょうど良いところに来た! リュンクス、王様をどうにかしてくれよ」
同級生が、何故か困った顔で声をかけてくる。
「どうにか?」
「あいつの周りにだけ一年生が集まって、俺たちが仲良くなる機会が無いんだ」
食堂を見渡すと、奥の上座にカノンの目立つ姿がある。
一年生のうち積極的な性格の者は、カノンの近くに陣取って話しかけている。カノンが穏やかに答えるので、調子に乗っているようだ。
遠くの席の一年生も、カノンが気になるようで、ちらちらと余所見しており、同じテーブルの上級生の話を聞き流している。
確かに、これはカノンの一人勝ち状態で、他の同級生が可哀想だ。
「お前ら、情けねーな。カノンに言えばいいじゃん。お前は邪魔だって」
「そんな度胸があったら、とっくに申し立ててるよ!」
リュンクスの指摘に、同級生は泣きそうな顔だ。
しかし、これはカノンを連れ出す絶好の口実だ。
しめしめとリュンクスは内心ほくそ笑んだ。
カノンを歓迎会から連れ出そうと歩みを進めれば、何故か一年生達が急にリュンクスに注目する。
「あ! 歓迎会について教えてくれたリュンクス先輩だ!」
「リュンクス先輩!」
一年生に歓迎会を告知した時に、顔を覚えられたのだろう。
リュンクスは、たちまち複数の一年生に捕まった。
「先輩、歓迎会の案内の後に言っていた、マスターとサーヴァントの話をもっとよく聞かせて下さい」
大人びた顔つきの一年生に引き止められる。
この絡みつくような感じ、マスター属性か。
リュンクスは顔をしかめた。
「俺は、差し入れを持って来ただけだ。話は他の先輩に聞かせてもらえ」
「リュンクス先輩が良いんです!」
やんわり断るが、一年生はなおも食い下がってくる。
リュンクスは、目を細めて低い声を出した。
「……くどい。俺は、お前らの相手をしてる暇は無いんだ。どけ」
一見あんまりな言い方だが、リュンクスのそれは艶があり、気迫がこもっていた。乱暴な言葉遣いだが不思議と下品ではない。
一年生は気圧されて黙る。
「リュンクス、もう時間か」
「カノン」
リュンクスが来た事に気付いたのか、カノンは立ち上がる。
「諸君、すまないが俺は用事があるので失礼する」
そんな話は事前にしていなかったのに、カノンはまるで約束でもしていたかのように優雅に離席した。
「一年の諸君、俺は退出するが他の先輩方は残る。これから塔で生活していく上で、分からない事や不安が多くあるだろう。先輩方と交流を深め、疑問があれば解消するといい。先輩方は真摯に向き合ってくれるはずだ。俺は君達と共に学べる日を楽しみにしている」
カノンは朗々と締めの挨拶をする。
その低音に聞き惚れ、一年生達は静まり返った。
「この機会に紹介する。そこにいるのは、俺のパートナーとなるサーヴァント、リュンクスだ。諸君らも、塔で過ごしていく中で、掛け替えのないパートナーと巡り会うだろう。どうか悔いのない時間を過ごしてくれ」
視線だけでリュンクスを指し示し、カノンは余裕の微笑みを浮かべた。
一年生は感激しているようだ。
彼らは自然と道を開ける。遮る者ない中央を通り抜けたカノンは、リュンクスに歩み寄り、軽く肩を叩いた。
小声で耳打ちしてくる。
「……俺を連れ出そうとして、自分が捕まってどうする」
リュンクスは顔が引きつりかけたが、年長者の誇りに掛け表情筋を辛うじて動かないよう制御した。
二人は堂々と通路に出る。
誰も引き留める者はいなかった。
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