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Secrets Beneath the Ruins(古代遺跡の秘密)
第25話 最下層
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まるで、どこまでも続く深淵の入り口に飛び込んだみたいだった。
生臭い風が底から吹き上げてきて、リトスは眉をしかめる。
「そろそろ最下層か」
飛び降りてから、そんなに時は経っていない。
まともに攻略していたら、一層ずつモンスターを倒して進むところを、非常識なやり方でショートカットしたのだ。
先行していたレイヴンが着地したのを確かめ、リトスもその隣にふわりと舞い降りる。足元の地面は硬く、平らかに磨かれている。地上で見たことのない石で、人工的な感触だ。
「うわっ、湿っぽいと思ったら、なんだこれ」
そこは、透明な石の壁に囲まれている場所だった。
透明度がやけに高いと思ったら、石の中に水が入っている。
つまり、これは水槽だ。魚や亀を飼ったりするための透明な容器。その巨大な進化形。
レイヴンの落とした隕石が水槽の端を割ったせいで、水が床に溢れ出し、靴先を濡らしている。割れたのは一部だけで、通路の壁になっている大部分の水槽は無傷だ。壁の向こうにある水は黒くにごっていて、リトスの周囲を飛ぶ精霊鳥の灯をもってしても奥まで見渡せない。
しかし、その水の中に生命らしき物体を見出し、リトスは目を凝らした。
「魔物を培養している?」
「正解だ。遺跡はまさに、そのためにある」
先を歩くレイヴンが、振り返らず答える。
「へぇ。知らなかったなぁ」
リトスは彼の後ろを歩きながら、水槽を見物する。
この国は遺跡の研究が進んでおらず、何のための施設か、どんな危険があるか、知っている者はいない。
星瞳の魔術師としてはどうなのかというと、結論から言えば遺跡は学習対象外だ。なぜかというと、精霊界に遺跡が無いからである。ま、時間も空間もねじくれている精霊界に、きちんとした建物を作るのは不可能だろうな。
「じゃあ人間界をおびやかす魔物の一部は、遺跡から産まれるってことか」
魔物とは、人間の害になっている人間以外の動物の総称であり、実態を分類すれば、その種類は多岐に渡る。
「学園の地下で魔物が産まれるのは、ぞっとしないな。この遺跡、機能停止させられないか」
「俺は、そのために来た」
暗い通路の奥に、部屋が見える。
扉は開け放されていて、八角形をした部屋の中、広間に浮かぶ石板と水晶の群れが見えた。石板には古代文字が明滅し、水晶はぼうっと赤く光っている。
レイヴンが、部屋の前で足を止めて舌打ちした。
「先客がいたのか? ちっ……遺物を持ち出されていたら、面倒だな」
「持ち出されたらヤバいものがあるのか」
「そうだな。例えば、魔物を支配する石。低層にあるやつはたかが知れているが、最深部のものは高レベルのモンスターを呼び起こして操ることができる……」
扉が開いているということは、誰かが先に扉を開けて放置したということだ。部屋の床には真新しい足跡もある。
誰がいつ、何を持ち出したか分からないが、不穏な感じだった。
「クソ面倒だ。破壊するか」
「は?」
「だいたい最深部をくまなく破壊すれば、遺跡は機能停止する」
レイヴンは淡々と言って、杖を構えようとする。
「ちょい、待てって!」
リトスは自分の杖を彼の杖に軽くぶつけ、速攻で術式を止めた。距離が近いと、この方が早いのだ。お互いの杖が触れ合った瞬間、カツンと軽い音と共に術式が砕ける鈴のような音がし、光の波紋が広がる。
星瞳の魔術師同士だからこそ気軽にできる杖のぶつけ合いだが、ふつうは術式起動時に割って入ると魔術が暴走して危険だ。
レイヴンは何でもない顔で瞬時に手元の魔術をキャンセルし、リトスを見返した。
「破壊する前に、俺が情報収集する!」
「……できるのか?」
「魔力は体外では光で表され、魂の情報も光に内包される。良いから、俺に任せろって」
何でもかんでも破壊してしまうのは、勿体ないではないか。
それに、何が持ち出されたか、誰が持ち出したか、知りたいとリトスは思った。
「制御してるのは、ここで間違いなさそうだな」
「おい、気を付けろ」
リトスは、無造作に前に出て部屋に踏み込む。
途端に天井から赤い光線が降ってくるが、周囲を飛ぶ精霊鳥がガードしてくれた。精霊鳥はそのまま、石板や水晶の中に飛び込んで見えなくなる。
精霊鳥が取得した情報が頭の中に流れ込んできたので、リトスは目を閉じ、情報の精査に集中した。
意味が分からない情報が沢山あるが、そういった情報は豪快に読み飛ばす。もったいない、光の精霊石を持ってくれば良かったなと、チラリと思う。今ここで吸い上げた情報を保存しておいて、後で見返せば有用だったかもしれない。しかし、後悔は後の祭りだ。
新しい記録から順に辿って……見付けた!
この部屋に入って、遺物を持ち出そうとした人物の姿が見えた。次は、遺物の来歴を確認して……
「歌い鳥!」
レイヴンの警告の声。
目を開けると、黒い石人形が、剣のように尖った腕を自分に振り下ろすところだった。
生臭い風が底から吹き上げてきて、リトスは眉をしかめる。
「そろそろ最下層か」
飛び降りてから、そんなに時は経っていない。
まともに攻略していたら、一層ずつモンスターを倒して進むところを、非常識なやり方でショートカットしたのだ。
先行していたレイヴンが着地したのを確かめ、リトスもその隣にふわりと舞い降りる。足元の地面は硬く、平らかに磨かれている。地上で見たことのない石で、人工的な感触だ。
「うわっ、湿っぽいと思ったら、なんだこれ」
そこは、透明な石の壁に囲まれている場所だった。
透明度がやけに高いと思ったら、石の中に水が入っている。
つまり、これは水槽だ。魚や亀を飼ったりするための透明な容器。その巨大な進化形。
レイヴンの落とした隕石が水槽の端を割ったせいで、水が床に溢れ出し、靴先を濡らしている。割れたのは一部だけで、通路の壁になっている大部分の水槽は無傷だ。壁の向こうにある水は黒くにごっていて、リトスの周囲を飛ぶ精霊鳥の灯をもってしても奥まで見渡せない。
しかし、その水の中に生命らしき物体を見出し、リトスは目を凝らした。
「魔物を培養している?」
「正解だ。遺跡はまさに、そのためにある」
先を歩くレイヴンが、振り返らず答える。
「へぇ。知らなかったなぁ」
リトスは彼の後ろを歩きながら、水槽を見物する。
この国は遺跡の研究が進んでおらず、何のための施設か、どんな危険があるか、知っている者はいない。
星瞳の魔術師としてはどうなのかというと、結論から言えば遺跡は学習対象外だ。なぜかというと、精霊界に遺跡が無いからである。ま、時間も空間もねじくれている精霊界に、きちんとした建物を作るのは不可能だろうな。
「じゃあ人間界をおびやかす魔物の一部は、遺跡から産まれるってことか」
魔物とは、人間の害になっている人間以外の動物の総称であり、実態を分類すれば、その種類は多岐に渡る。
「学園の地下で魔物が産まれるのは、ぞっとしないな。この遺跡、機能停止させられないか」
「俺は、そのために来た」
暗い通路の奥に、部屋が見える。
扉は開け放されていて、八角形をした部屋の中、広間に浮かぶ石板と水晶の群れが見えた。石板には古代文字が明滅し、水晶はぼうっと赤く光っている。
レイヴンが、部屋の前で足を止めて舌打ちした。
「先客がいたのか? ちっ……遺物を持ち出されていたら、面倒だな」
「持ち出されたらヤバいものがあるのか」
「そうだな。例えば、魔物を支配する石。低層にあるやつはたかが知れているが、最深部のものは高レベルのモンスターを呼び起こして操ることができる……」
扉が開いているということは、誰かが先に扉を開けて放置したということだ。部屋の床には真新しい足跡もある。
誰がいつ、何を持ち出したか分からないが、不穏な感じだった。
「クソ面倒だ。破壊するか」
「は?」
「だいたい最深部をくまなく破壊すれば、遺跡は機能停止する」
レイヴンは淡々と言って、杖を構えようとする。
「ちょい、待てって!」
リトスは自分の杖を彼の杖に軽くぶつけ、速攻で術式を止めた。距離が近いと、この方が早いのだ。お互いの杖が触れ合った瞬間、カツンと軽い音と共に術式が砕ける鈴のような音がし、光の波紋が広がる。
星瞳の魔術師同士だからこそ気軽にできる杖のぶつけ合いだが、ふつうは術式起動時に割って入ると魔術が暴走して危険だ。
レイヴンは何でもない顔で瞬時に手元の魔術をキャンセルし、リトスを見返した。
「破壊する前に、俺が情報収集する!」
「……できるのか?」
「魔力は体外では光で表され、魂の情報も光に内包される。良いから、俺に任せろって」
何でもかんでも破壊してしまうのは、勿体ないではないか。
それに、何が持ち出されたか、誰が持ち出したか、知りたいとリトスは思った。
「制御してるのは、ここで間違いなさそうだな」
「おい、気を付けろ」
リトスは、無造作に前に出て部屋に踏み込む。
途端に天井から赤い光線が降ってくるが、周囲を飛ぶ精霊鳥がガードしてくれた。精霊鳥はそのまま、石板や水晶の中に飛び込んで見えなくなる。
精霊鳥が取得した情報が頭の中に流れ込んできたので、リトスは目を閉じ、情報の精査に集中した。
意味が分からない情報が沢山あるが、そういった情報は豪快に読み飛ばす。もったいない、光の精霊石を持ってくれば良かったなと、チラリと思う。今ここで吸い上げた情報を保存しておいて、後で見返せば有用だったかもしれない。しかし、後悔は後の祭りだ。
新しい記録から順に辿って……見付けた!
この部屋に入って、遺物を持ち出そうとした人物の姿が見えた。次は、遺物の来歴を確認して……
「歌い鳥!」
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目を開けると、黒い石人形が、剣のように尖った腕を自分に振り下ろすところだった。
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