嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉

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Secrets Beneath the Ruins(古代遺跡の秘密)

第26話 持ち去られた遺物

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 腕を強く引かれる。
 リトスと場所を入れ替えたレイヴンが、長杖を構えて迎え撃つ。彼の長杖はいつのまにか、光の刃を持った三日月槍ハルバードに変じていた。
 レイヴンの豪快な一振りで、黒い石人形ゴーレムは一刀両断される。
 目の前でガラガラ崩れる石人形を眺めながら、リトスは呟いた。

「魔術じゃねーのかよ」
「今、攻撃魔術を使うとお前の鳥を巻き込むだろう」
「お気遣いありがとうさん。でも、時間切れみたいだ」

 石板や水晶に飛び込んだ精霊鳥たちが、次々と戻ってくる。精霊鳥たちは、危険を感じて脱出してきたのだ。
 遺跡の防衛機構が働いたのか、リトスの侵入に気付かれ、制御基盤の自壊が始まってしまった。

「取り急ぎ、必要な情報は確保したから、もう壊しちゃっていいぜ」
「何を他人事のように言っている。最深部の破壊は俺がやるが、その後は各階掃除するのを手伝ってもらうぞ」
「えぇ」

 考えてみれば、制御装置を破壊しても、各階の魔物は残る訳で、制御を失った魔物たちが地上に逃げ出さないよう狩るのは、自分たちの責任だった。
 レイヴンが高位魔術で最深部を燃やし尽くした後、リトスは浅い階層に棲む魔物たちを集めて倒しまくる羽目になった。結局、最深部の破壊よりもそっちの方が時間が掛かったのは、言うまでもない。
 しかもレイヴンは、最深部以外、明らかに手抜きの様子だった。

「手伝えと言っておいて、俺に投げるなよ?!」
「面倒だな」

 ここに至り、ようやくリトスはレイヴンの目的を理解した。彼の目的はあくまで遺跡の機能停止。国を守ることではない。遺跡から魔物が溢れようが、実はどうだっていいのだ。困るのはリトスの方だった。だから都合良く後始末を押し付けられたのだ。
 雑魚処理を任されて、仕方なくリトスは普段あまり使わない攻撃魔術を撃つことになった。補助系といっても星瞳の魔術師なので、攻撃の高位魔術も一通り使えるのだ。というか、戦えないと危険な精霊界で生き残れない。
 精霊鳥に魔術の管理を移管してオートで攻撃させながら、リトスは斜め後ろを歩くレイヴンに話しかけた。

「遺物を持ち出した奴だけど、学園の教師だったよ。アルベルトという名前の、薬学の先生だ。あんたの知り合い?」
「まさか」

 察しろと言わんばかりに不機嫌なレイヴンの回答に、リトスは「そうだよな」と頷いた。
 
「彼は、遺跡の中を通過できる【鍵】を持っていたみたいだ。最深部で持っていった遺物は【祝福】という意味の名を持つ薬物」

 具体的にどんな薬物かまでは、探れなかった。
 それにしてもレイヴンに先んじて遺跡の最深部に入るとは、只者とは思えない。いったい何が目的で先行し、遺物を持ち去ったのか。

「おい、歌い鳥。何でも良い、奴に罪をなすりつけて捕らえろ。さもないと厄介なことが起こるぞ」
「俺に指図するな」

 レイヴンの腹立たしそうな声に、リトスはどうしようかと内心悩んでいた。
 アルシャウカトの権力を使い、教師を一人、失脚させる。出来ないことはないが、リトスは表向き無能な嫡男を装っているため、使える権力に限界があるのだ。

「まあいい、遺物の行方を調べるのは、お前に任せよう。残るは、嵐原サバーナの遺跡だ。いつ出発できる?」
「分かってるだろ。すぐには無理だ」

 この国にある遺跡は三つ。
 一つは半壊し機能停止して観光地になっており、一つはここ学園の地下、最後の一つは魔物が徘徊する嵐原サバーナにある。
 サバーナ遺跡は国境の外にあり、人里から離れているため、行って帰るには時間が必要だ。学生のリトスには、外に出る口実が要る。

「ちっ」
 
 レイヴンは一人で行けるはずなのに、そうするつもりがないようだ。
 一応、この国を守っているリトスに遠慮してくれているらしい。

「しばらく待ちか……クソ面倒だな」
 
 二人は遺跡を隅々まで調べ、魔物が残っていないか確かめた。
 今後の連絡手段や、最後の遺跡の探索段取りについて打ち合わせた後、地上で別れる。
 遺跡に潜っている間に、かなりの時間が経っていた。
 探索開始してから丸一日。
 久しぶりに魔術を使いまくって魔力が半分になったリトスは、自分の屋敷に帰ってゆっくり休んだ。
 根城にしている屋敷は、自分の金で買った隠れ家で、召使いなどを入れず一人で数年かけてリフォームしたものだ。精霊界への門を固定化しておかないと安全に人間界に戻れないため、どうしても誰にも邪魔されない隠れ家が必要だった。案外レイヴンが精霊界に戻っていないのは、旅の生活で門の固定化ができないからかもしれない。

「リリアーナの様子を見に行くか……」
 
 一休みしたリトスは、本宅の妹に会いに行くことにした。
 アルベルトを捕捉するために、実家の権力が必要だ。レイヴンの言う通り、あの薬学の教師は怪しい。何を企んでいるのか、早急に突き止めないと。
 小さくてもリラックスできる隠れ家を出て、広く豪華だが安心できない妹の屋敷へ赴く。
 そこでリトスは、想定外の人物と出会った。

「リトス君ではありませんか。体は大丈夫なのですか」
「アルベルト先生。なぜ、ここに……」
 
 怪しいと睨んでいる当人が、我が物顔で妹の隣に立っていたのだ。

「失明をも完治させる、女神の涙の奇跡は素晴らしいですね。遺物についてリリアーナ様とお話し、アルシャウカト当主に紹介いただいたのですよ。私の研究を、アルシャウカト家に支援していただくことになりまして」

 アルベルトは何を考えているか分からない笑顔で、リトスを見下ろす。
 やられた……!
 実家の権力で失脚させようと思っていた人物に、逆に実家の権力を握られてしまい、リトスは顔に出さないが内心でひどく動揺していた。

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