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Secrets Beneath the Ruins(古代遺跡の秘密)
第30話 騙し合い
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王都には【駒鳥亭】という貴族向け高級料理店があり、アルベルト教師はそこで食事をしながらリトスの将来の進路について聞きたいと誘ってきた。彼は教師なので、表向き落ちこぼれのリトスの卒業後を心配したという名目だ。余計なお世話である。
誘いに乗ったリトスは、学園の授業が終わった後、アルベルト教師と共に外出した。
「ありがとうございます。ここのステーキ、食べたことがなかったんですよね」
「おや、侯爵家令息なのに?」
「親に期待を掛けてもらってませんから。分かるでしょう」
アルベルト教師のおごりなので、リトスは遠慮なく高級ステーキを食った。下処理がしっかりされた肉は臭みがなくミディアムな焼き加減で、噛めば噛むほど肉汁が口に溢れる。
良い機会なので、お高い白葡萄酒も水のように飲んでやった。
「白葉館の研究資料を読んだよ。リトスくんの分もあった。予想どおり、アルシャウカト家当主様は、君の低魔力をどうにかしようとされていたようだね」
食事を楽しむリトスとは対照的に、アルベルトは大人の余裕を見せつけるためか、酒のつまみにナッツを食べながら葡萄酒を軽く口にするくらいだ。
「君の魔力を被験者に馴染ませようとしたが、ことごとく失敗して諦めたそうだよ」
そうだろうな。
リトスは口には出さず、静かにその事実を受け入れた。
そもそもリトスは、高位精霊に選ばれるほどの高魔力保持者だ。しかし、赤子の時分からアルシャウカト家にうずまく負の気配を敏感に察知し、その魔力を自ら封じ込めて隠蔽してしまっていた。それは優れた魔術師ゆえの無意識な防衛本能で、リトス自身も自分が無力だと信じて疑わなかった頃もある。
星瞳の魔術師の魔力が、他の者に馴染む訳がない。
父親、アルシャウカト家当主は、リトスの魔力を上げようと躍起になったが、何年かけても上手くいかなかったので諦めたのだ。
「サンプルが残っていたけれど……良い香りがして堪らなかった」
アルベルトは捕食者の目でこちらを見ている。
それに気付いていながら、リトスはわざと酔っぱらったふりをした。
「すみません、急に眠くなってきちゃって」
「構わないよ。隣に休憩処がある。寄っていこう」
駒鳥亭の隣は、貴族が宿泊できる屋敷がある。
今日は、たまたま客が少ないのか、アルベルトとリトス以外の人の姿はなかった。静寂に包まれた屋敷の廊下を歩き、客間に通される。
「ほら、横になって」
アルベルトは甲斐甲斐しく世話をやく風を装い、リトスを寝台に転がし、その上にのしかかった。
「良い匂いだ。君の魔力の香りは……最高だ」
教師の瞳が深紅に染まる。
それをリトスは冷静に下から見上げる。
「ほら、僕の瞳を見て。気持ちよくなってきたろう」
「……」
「一度に全て血を抜いてしまうのはもったいない。君は僕の従僕になって、いつでも僕の好きな時に血を差し出すんだよ」
アルベルトは、リトスの頸動脈を舐めるように視姦する。そこに牙をつきたて、血をすする想像をしているらしい。
彼は無抵抗のリトスが自分の術にかかっていると確信しているようだ。
残念ながら魅了の術は、抵抗力の強い魔術師には通用しない。そしてもちろん、星瞳の魔術師、それも補助系で光と風の元素に通じた者に効くはずがないのだ。
リトスは低い声でつぶやいた。
「……薄汚い魔物風情が。俺に触れて、ただで済むと思っているのか」
その瞬間、暗い室内に閃光が走った。
誘いに乗ったリトスは、学園の授業が終わった後、アルベルト教師と共に外出した。
「ありがとうございます。ここのステーキ、食べたことがなかったんですよね」
「おや、侯爵家令息なのに?」
「親に期待を掛けてもらってませんから。分かるでしょう」
アルベルト教師のおごりなので、リトスは遠慮なく高級ステーキを食った。下処理がしっかりされた肉は臭みがなくミディアムな焼き加減で、噛めば噛むほど肉汁が口に溢れる。
良い機会なので、お高い白葡萄酒も水のように飲んでやった。
「白葉館の研究資料を読んだよ。リトスくんの分もあった。予想どおり、アルシャウカト家当主様は、君の低魔力をどうにかしようとされていたようだね」
食事を楽しむリトスとは対照的に、アルベルトは大人の余裕を見せつけるためか、酒のつまみにナッツを食べながら葡萄酒を軽く口にするくらいだ。
「君の魔力を被験者に馴染ませようとしたが、ことごとく失敗して諦めたそうだよ」
そうだろうな。
リトスは口には出さず、静かにその事実を受け入れた。
そもそもリトスは、高位精霊に選ばれるほどの高魔力保持者だ。しかし、赤子の時分からアルシャウカト家にうずまく負の気配を敏感に察知し、その魔力を自ら封じ込めて隠蔽してしまっていた。それは優れた魔術師ゆえの無意識な防衛本能で、リトス自身も自分が無力だと信じて疑わなかった頃もある。
星瞳の魔術師の魔力が、他の者に馴染む訳がない。
父親、アルシャウカト家当主は、リトスの魔力を上げようと躍起になったが、何年かけても上手くいかなかったので諦めたのだ。
「サンプルが残っていたけれど……良い香りがして堪らなかった」
アルベルトは捕食者の目でこちらを見ている。
それに気付いていながら、リトスはわざと酔っぱらったふりをした。
「すみません、急に眠くなってきちゃって」
「構わないよ。隣に休憩処がある。寄っていこう」
駒鳥亭の隣は、貴族が宿泊できる屋敷がある。
今日は、たまたま客が少ないのか、アルベルトとリトス以外の人の姿はなかった。静寂に包まれた屋敷の廊下を歩き、客間に通される。
「ほら、横になって」
アルベルトは甲斐甲斐しく世話をやく風を装い、リトスを寝台に転がし、その上にのしかかった。
「良い匂いだ。君の魔力の香りは……最高だ」
教師の瞳が深紅に染まる。
それをリトスは冷静に下から見上げる。
「ほら、僕の瞳を見て。気持ちよくなってきたろう」
「……」
「一度に全て血を抜いてしまうのはもったいない。君は僕の従僕になって、いつでも僕の好きな時に血を差し出すんだよ」
アルベルトは、リトスの頸動脈を舐めるように視姦する。そこに牙をつきたて、血をすする想像をしているらしい。
彼は無抵抗のリトスが自分の術にかかっていると確信しているようだ。
残念ながら魅了の術は、抵抗力の強い魔術師には通用しない。そしてもちろん、星瞳の魔術師、それも補助系で光と風の元素に通じた者に効くはずがないのだ。
リトスは低い声でつぶやいた。
「……薄汚い魔物風情が。俺に触れて、ただで済むと思っているのか」
その瞬間、暗い室内に閃光が走った。
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