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Time of Judgment(断罪の時)
第48話 波乱の出発
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転移した直後、リトスはことさら意識して魔力を収め、普通の魔術師レベルに落とした。
星瞳を隠すためである。
背を向けていたので、後ろのダレンとライアードには、星瞳を見られていないはずだ。今なら星瞳の魔術師だとばれない。セーフ、セーフ(たぶん)。
華麗に転移の高位魔術を披露してしまった後だが、適当に誤魔化そうと思いながら、振り返る。
その瞬間、殺気を感じた。
無意識に長杖を動かして、攻撃をガードする。
「……後ろから斬りかかるなんて、騎士の風上にも置けないな」
「ライアード!」
カナン王子の非難の声。
見習い学生騎士のライアードは、剣を抜いてリトスに斬りかかっていた。
それをリトスは、防御の魔術をまとわせた長杖で受け止める。
一歩も引かないライアード。
剣と杖が、火花を散らす。
「止めろ、ライアード」
「しかし殿下、こいつは殿下を王城から離れた場所に転移させたのです。暗殺するためと思われます!」
ああ、事情を知らなかったら普通そう思うわな。
リトスは、ライアードの剣を受け止めながら、こっそり冷や汗を流した。
何がヤバかったかというと、あの瞬間に魔力を落としてなかったら、ノータイム反撃でライアードを殺していたかもしれないことだ。自慢じゃないが、星瞳の魔術師は危険な精霊界でのサバイバルに慣れているため、寝ている状態からでも反撃するのは常識なのだ。魔術師だから接近戦に弱いとか言ってたら死ぬ。何かしら瞬時に防御から反撃できるように、普段から備えをしているのである。
「そうではない。剣を収めろ、ライアード。これは命令だ!」
カナンが言い聞かせた三度目の正直で、ライアードは不満そうな顔をしつつも、ゆっくり剣を引いた。
はぁ、心臓に悪い。
「ここはどこだ、リトス」
「国境の守護結界の要石である塔の中ですよ」
そこは、古い石造りの廃墟の中だった。
石窓の向こうに青空が広がり、乾いた風が吹き込んでくる。地面の見えない高さで、少なくとも三階以上だ。足元の石の床には雑草や苔が生えている。
「国境?!」
ダレンが窓際まで駆け寄って、外の景色を見、唖然としている。
「ライアード、ダレン。私の話を聞いてくれ。アルシャウカト家当主が嵐原サバーナに逃亡しようとしている」
先延ばしにできないと感じたのだろう。
カナン王子は、いきなり単刀直入に本題に入った。
それに、ライアードが真っ先に反応する。
「なぜ殿下がそれを? アルシャウカトの領地に突入した騎士団が空振りしたと、今朝、俺の父から伝令の鳥が飛んできたところですよ」
国王の命令により、ライアードの父親が率いる騎士団が、討伐のため派遣されていたのだった。
彼らがアルシャウカト家の領地に押し入り、当主を見つけられなかった報告が、まさにこれから上がってくるところなのだろう。
「それは……リトスの情報だ。私たちはリトスと共に、アルシャウカト家の当主を追い、その野望を阻止する」
ちらとカナンはこちらを見てから、情報を提示する。
「さすが殿下だ!」
目的を告げられたライアードは納得したらしい。
剣を収めて破顔する。
「はやく嵐原サバーナに出る船を止めましょう。港は、すぐそこです!」
「う、うむ」
悪党をやっつけると聞いて、単純なライアードは盛り上がっている。
カナンはその熱に押され「まだ説明は途中だが仕方ない」という顔でうなずいた。
「……それで、リトス・アルシャウカトは本当に信用できるのですか? 王城から一気に国境まで転移できる魔術の腕前だと、今まで隠していた理由を教えて欲しいものですが」
窓際から振り返ったダレンが冷ややかに言う。
それを宥めようとしたカナンを制し、リトスは鼻で笑った。
「信用されなくて結構。俺には俺の目的がある。ただ殿下を害するつもりはないから、その辺は安心してくれていいぜ」
「ぬけぬけと……殿下、何故こいつに丸め込まれたんですか?!」
「ダレン。転移の魔術が苦手だからって、嫉妬はみっともないぞ。俺に負けたって素直に認めろよ」
「はぁ?! 誰が貴様に?!」
リトスはダレンをあからさまに煽る。
話を逸らして、リトスが星瞳の魔術師であることや、なぜ王子から許されて共に行動しているかなどを、ダレンに悟らせないためだ。
予想通りダレンはかんかんに怒って、冷静さを失っている。
魔術師であるダレンが油断してくれれば、リトスとしては魔術を使いやすくて助かる。というか、純粋に彼をおちょくるのは愉しい。
「いい加減にしろ。港に行くぞ」
カナンの声掛けで、ダレンとライアードは不満そうにしながらも、階段を見つけて降り始める。
リトスも杖を送還して、彼らの後に続いた。
星瞳を隠すためである。
背を向けていたので、後ろのダレンとライアードには、星瞳を見られていないはずだ。今なら星瞳の魔術師だとばれない。セーフ、セーフ(たぶん)。
華麗に転移の高位魔術を披露してしまった後だが、適当に誤魔化そうと思いながら、振り返る。
その瞬間、殺気を感じた。
無意識に長杖を動かして、攻撃をガードする。
「……後ろから斬りかかるなんて、騎士の風上にも置けないな」
「ライアード!」
カナン王子の非難の声。
見習い学生騎士のライアードは、剣を抜いてリトスに斬りかかっていた。
それをリトスは、防御の魔術をまとわせた長杖で受け止める。
一歩も引かないライアード。
剣と杖が、火花を散らす。
「止めろ、ライアード」
「しかし殿下、こいつは殿下を王城から離れた場所に転移させたのです。暗殺するためと思われます!」
ああ、事情を知らなかったら普通そう思うわな。
リトスは、ライアードの剣を受け止めながら、こっそり冷や汗を流した。
何がヤバかったかというと、あの瞬間に魔力を落としてなかったら、ノータイム反撃でライアードを殺していたかもしれないことだ。自慢じゃないが、星瞳の魔術師は危険な精霊界でのサバイバルに慣れているため、寝ている状態からでも反撃するのは常識なのだ。魔術師だから接近戦に弱いとか言ってたら死ぬ。何かしら瞬時に防御から反撃できるように、普段から備えをしているのである。
「そうではない。剣を収めろ、ライアード。これは命令だ!」
カナンが言い聞かせた三度目の正直で、ライアードは不満そうな顔をしつつも、ゆっくり剣を引いた。
はぁ、心臓に悪い。
「ここはどこだ、リトス」
「国境の守護結界の要石である塔の中ですよ」
そこは、古い石造りの廃墟の中だった。
石窓の向こうに青空が広がり、乾いた風が吹き込んでくる。地面の見えない高さで、少なくとも三階以上だ。足元の石の床には雑草や苔が生えている。
「国境?!」
ダレンが窓際まで駆け寄って、外の景色を見、唖然としている。
「ライアード、ダレン。私の話を聞いてくれ。アルシャウカト家当主が嵐原サバーナに逃亡しようとしている」
先延ばしにできないと感じたのだろう。
カナン王子は、いきなり単刀直入に本題に入った。
それに、ライアードが真っ先に反応する。
「なぜ殿下がそれを? アルシャウカトの領地に突入した騎士団が空振りしたと、今朝、俺の父から伝令の鳥が飛んできたところですよ」
国王の命令により、ライアードの父親が率いる騎士団が、討伐のため派遣されていたのだった。
彼らがアルシャウカト家の領地に押し入り、当主を見つけられなかった報告が、まさにこれから上がってくるところなのだろう。
「それは……リトスの情報だ。私たちはリトスと共に、アルシャウカト家の当主を追い、その野望を阻止する」
ちらとカナンはこちらを見てから、情報を提示する。
「さすが殿下だ!」
目的を告げられたライアードは納得したらしい。
剣を収めて破顔する。
「はやく嵐原サバーナに出る船を止めましょう。港は、すぐそこです!」
「う、うむ」
悪党をやっつけると聞いて、単純なライアードは盛り上がっている。
カナンはその熱に押され「まだ説明は途中だが仕方ない」という顔でうなずいた。
「……それで、リトス・アルシャウカトは本当に信用できるのですか? 王城から一気に国境まで転移できる魔術の腕前だと、今まで隠していた理由を教えて欲しいものですが」
窓際から振り返ったダレンが冷ややかに言う。
それを宥めようとしたカナンを制し、リトスは鼻で笑った。
「信用されなくて結構。俺には俺の目的がある。ただ殿下を害するつもりはないから、その辺は安心してくれていいぜ」
「ぬけぬけと……殿下、何故こいつに丸め込まれたんですか?!」
「ダレン。転移の魔術が苦手だからって、嫉妬はみっともないぞ。俺に負けたって素直に認めろよ」
「はぁ?! 誰が貴様に?!」
リトスはダレンをあからさまに煽る。
話を逸らして、リトスが星瞳の魔術師であることや、なぜ王子から許されて共に行動しているかなどを、ダレンに悟らせないためだ。
予想通りダレンはかんかんに怒って、冷静さを失っている。
魔術師であるダレンが油断してくれれば、リトスとしては魔術を使いやすくて助かる。というか、純粋に彼をおちょくるのは愉しい。
「いい加減にしろ。港に行くぞ」
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リトスも杖を送還して、彼らの後に続いた。
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