嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉

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The Ultimate Ally(最強の助っ人)

第7話 調査結果

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 精霊界と人間界は時の流れが違うので、文曲の魔術師のもとでティータイムを楽しんで修行を見てもらっても、人間界に戻ってくると時間が経っていない。
 ハイランドの宿屋に戻ってきたリトスは、出た時と同じように、レイヴンが窓際の椅子に座って外を眺めているのを発見した。
 彼の契約精霊の分体である小さな黒竜も、窓枠に座り込んで丸くなっている。

「文曲様から話を聞いてきたよ」

 声を掛けると、レイヴンは気だるそうな様子で振り返った。
 この国に来てから、彼は調子が悪そうだ。
 目立つ星瞳は偽装しているものの、珍しい紫水晶の瞳を隠しておらず、攻撃系魔術師特有の強い魔力も発散したままだった。

「……本当は、文曲に聞かずとも、事件の全容が分かっているのだろう?」
「俺のこと買いかぶってないか」
「ふん。この国の守護結界が、菌糸のネットワークと共生していると言い出した時点で、お前はかなりの情報を吸い上げていたはずだ。数日時間さえあれば、情報を処理して、それなりの結論を見出せるだろう」

 レイヴンは、リトスが状況を把握していると確信しているようだ。
 評価されているような、信頼されているような……くすぐったい気持ちになって、リトスは咳払いする。

「まあ、分かっていないこともない」

 さっと腕を振って、空中に光を照射し、立体図像を描き出す魔術を発動する。
 空中に、大樹イルミンスールを中心とした守護結界の全容が描き出された。

「まず、お前の探してる遺跡だけど、大樹イルミンスールの中にある」
「入口はどこだ?」
「ハイランドの住民が、樹冠と呼ぶ場所にあると思う。それ以外の場所は、精霊鳥で探索済だ。樹冠は、このネットワークの中心があって、特殊な結界に覆われている。俺の精霊鳥でも簡単に侵入できなくて、ここだけが未探索さ」

 リトスは、大樹の天辺付近に広がる、小さな都市を指さす。
 
「この結界は、たぶん星瞳の魔術師の手によるものだ」
「何?」
「おそらく文曲様の弟子、銀花の魔術師の遺産を、誰かが利用している。菌糸を潜ませたアミュレットを魔術師に装着させ、生命力を吸い上げて大樹に流し込む仕組みだ」

 精霊界に帰ってきていない銀花の魔術師は、とうに没しているとリトスは推測している。
 この国が星瞳の魔術師の来訪をこばむのは、星瞳の魔術師の遺産を不正に利用し、多くの魔術師の目をあざむいて、大樹イルミンスールを延命しているからだ。
 
「アミュレットのバフは強力で、多くの魔術師が恩恵にあずかっている。そして、世界樹を標榜する大樹イルミンスールの繁栄は、この国の農業を支えている」
「……遺跡の停止が、この国を滅ぼす、か」
「ま、遅かれ早かれ破綻はするだろうけど。俺たちの手で、とどめさしちゃう?」

 リトスは、からかうように問いかける。
 
「それでも俺は、遺跡の最深部を目指す」

 レイヴンは、静謐な決意をにじませた声で答えた。
 
「お前は、文曲の魔術師から依頼を受けたんだろう。銀花の魔術師の痕跡を辿り、この国の行く末を見届ける義務があるのではないか。たとえ、それが住民が望まぬ結末であったとしても」
「まあね」

 銀花の魔術師が最後に何を望んだのか、その想いの欠片を拾うのは、弟弟子にあたるリトスの役目でもある。
 リトスは指をはじき、空中投影していた大樹の映像を消した。

「おーけい。何はともあれ樹冠に乗り込まないとどうしようもない。けど、強行突破して全部壊してしまうのは早計だ。ここは正攻法で行こう―――」




 つまり、普通に討伐ポイントを稼いでランクAの資格を持つ魔術師になり、樹冠に登る権利を得るのが、一番手っ取り早い。
 補助系の魔術師は、便利な魔道具を作り出して大量に売れば、それを討伐ポイント代わりにしてランクを上げることが可能だ。リトスもできなくはないのだが、魔道具を大量生産して売りさばくのは時間が掛かる。
 ここは、アンズちゃんたちのパーティーを援護して討伐ポイントを稼ぐのが近道だ。

「お、光雨だ。緑色の空から、光が降ってくるって、すごい眺めだな」

 宿を出て通りを歩いていると、雨が降って来た。
 といっても、普通の雨ではない。
 樹下の都イルミンスールは、頭の上に世界樹と呼ばれる大樹イルミンスールがそびえているため、その葉っぱが日光をさえぎって常に薄暗い。
 しかし、大樹の枝が溜まった雨水を光と共に放出する時、イルミンスールには光の雨が降る。
 雨が降るのに、いつもより明るくなるのだ。

「おはようございます、リトスさん! 今日は晴雨で、討伐びよりですね!」

 待ち合わせ場所に行くと、アンズが笑顔で挨拶してくれる。

「おはようにゃーん!」
「……遅かったですね。もう準備はできてます」

 アンズの隣で、プリンちゃんがぴょこぴょこ跳ねる。
 対照的に憂鬱そうな表情の青年、フェリオがやる気なさそうに挨拶した。

「おはよう。今日は上の農場に行くって? 討伐成功したら果物食べれると聞いたんだけど、本当?」
「はい! 苺や白桃をいただけます」
「うわ、楽しみだなぁ」

 リトスはこれから、彼女たちと一緒に討伐クエストに参加する。
 目的地は、大樹イルミンスールの中層にある、果樹園。
 美味しいデザートが食べられて、一気に討伐ポイントが稼げる、一石二鳥の場所だった。

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