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5島連盟編
17 竜王の幕間
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光竜王ウェスぺは目的の海竜王リヴァイアサンの居場所を資料で絞りこみ、いよいよ自ら海に降りて海竜王を探しに行こうとしていた。
不在の間の対応について部下の竜騎士に指示を出す。
準備が整うと相棒の金色の蛇を竜に変身させた。
胴の長い金色の竜王の後頭部と前腕、後脚の三ヶ所には銀色の翼がそれぞれ生えている。一見飛ぶには心許ない翼の大きさだが、ウェスぺの相棒は光の魔力で空を飛ぶので問題ない。
颯爽と竜の背中に飛び乗ると、従卒のルークが駆け寄ってきた。
「僕も連れて行ってください」
「足手まといだ」
「島に残ってもやることがありません」
「……」
ルークの決心は固いようで、無理にでも竜によじ登ろうとしたため、ウェスぺは折れた。
「ええい、仕方がないな」
「やった!」
従卒を後ろに乗せたウェスぺは、竜を光の島から離陸させる。
白亜の都が遠くなっていく。
「……ウェスぺ様、あれは」
「何?」
遠ざかる島を眺めていたウェスぺは、ルークの声で一直線に近付いてくる竜の姿にようやく気付く。
鮮やかな朱色の鱗に、レースのように左右に流れる半透明のヒレが特徴の、胴が長い魚のような姿の竜だ。空を優雅に泳ぐようでありながら、その実、かなりのスピードで向かって来ている。
「……水竜王」
「見つけたぞ、ウェスぺ! 私の海神の玉を返せっ」
朱色の竜の背で女性と見間違う容姿の、裾の長い服を着た青年が叫んだ。彼は水の島アントリアの竜王ピンインだ。
リヴァイアサン攻略に必要なアイテム、海神の玉は、もともと水竜王の宝物だった。よって彼の追及は正しい。
「なんだ、ようやく気付いたのか。いつも遅いな、貴様は」
「よくも涼しい顔をして悪気もなしに……この盗人め!」
「これは拾ったのだ。拾得物は拾った者の所有になるだろう」
全く動じずに言い返すウェスぺに、水竜王は額に青筋を立てた。
「おのれ、よくもぬけぬけと!!」
「用件はそれだけか? 忙しいのでこれにて失礼する」
「待てっ、どこに行くつもりだ!?」
行くてに立ちふさがる朱色の竜に、ウェスぺは嘲笑を送った。
「海神の玉を有効利用してやろうと思ってな」
「光竜王! 貴様まさか……」
「眩光照」
台詞を遮るように、目眩ましの光を打ち上げた。
ここで水竜王と戦う気はない。いくら非戦闘派と言っても、相手は竜王。手こずるのは目に見えていた。
白い光が数分間以上に渡って水竜王の視界をうばう。
その間にウェスぺは悠々と竜を降下させる。
「……光竜王、リヴァイアサンに手を出すな! あれは貴様が思っているようなものじゃない!」
激しい光に目をかばって立ち往生している水竜王の叫びが聞こえる。
自分を引き留めるための言葉だろうと、ウェスぺは彼の台詞には気を留めずに、そのままリヴァイアサンの海へ向かった。
光が収まった頃には、黄金の竜の姿は遥か彼方だった。
「あの強突くばりの阿呆め!」
ピンインは光竜王を追うのを諦めると、地団駄を踏みながらウェスぺをののしった。
「本当にリヴァイアサンのところへ行くつもりなのか」
「……ピンイン様」
実は後ろに同乗していた、水の島の竜騎士セイランが見かねて口を挟む。本気で飛ぶと竜王は風竜より速いため、今回は自分の竜ではなくピンインの竜王に乗せてもらっていた。
「戻りましょう。火の島で炎竜王とも話すべきなのでは? 光竜王が良からぬことを企んでいると」
「むむむ」
光竜王に色々出し抜かれていることを、ライバルのアサヒに話したくないピンインだったが、腕組みして唸った。
「仕方あるまい……どの道、ピクシスは帰り道だ。よし、ひとまず帰るぞ!」
その頃、風の島アウリガでは。
解放されてすぐ、アサヒとピンインにそれぞれ助言を伝えた風竜王は、飛んでいく彼らを見送った。その場に残ったのはヒズミと、グライスとユエリ兄妹である。
彼らは少年にしか見えない風竜王に衝撃を受けていた。
「……ねえ、兄様。もしかして、あれが私のお父さんだって言わないよね」
「うーん」
さすがのグライスも困った顔だ。
風竜王らしき青銀の髪に碧色の瞳の美少年は、どうみてもユエリより一回りは年下なのだ。
「アネモス様ー!」
「ミケちゃん、無事で良かった」
少年は反応に困る面々を放って、飛び付いてきたパズス(羽の生えた猫の姿)を撫でる。そして、パズスを片手で抱えながら、足元の鳥かごの扉を開ける。
鳥かごから青い小鳥が跳ねて出てきた。
「すごく疑われているようだけど、どうしたら良いと思う? 僕の青い小鳥さん」
『そうだな……とりあえず酒を持って天竜王のところへ行こう。後のことは10年くらい掛けてゆっくり考えると良い』
「良いねそれ」
「……良くない!」
風竜王らしき少年と小鳥の会話に、ユエリは思わず突っ込みを入れた。
そして会話の内容で出てきた天竜王テュポーンに伝言を頼まれていたことに気付く。何でもないように天竜王について語るということは、やっぱり子供に見えるが竜王なのだ。
「確かに天竜王テュポーンは風竜王に酒を持って訪ねてこい、って言ってたけど、それはそれとして……あなたが風竜王なら、アウリガを何とかしてよ!」
そうユエリが言うと、少年は振り返って笑顔になった。
その肩に青い小鳥がとまる。
「そうだね。アウリガを何とかしなければね。でも僕はこんな子供の姿で、皆に信じてもらえるかな……封じられてる間も魔術を使ってたから、副作用で身体年齢が退行してしまったんだ」
「……竜騎士ならば、あなたが竜王であることは分かるだろう。もしアウリガが火の島を侵略したことについて責任を負うつもりがあるなら、速やかに賠償に応じて欲しいものだ」
ヒズミは冷ややかに指摘する。
一応、敵国の竜王が相手なのでアサヒのように友好的とはいかない。
「賠償か。じゃあついでに僕も火の島に行こう。さっきは炎竜王とゆっくり話せなかったし」
メンタルが強いのか、風竜王はヒズミの冷ややかな態度にも、困っているユエリ達兄妹の様子もどこ吹く風である。
少年は空を見上げて「久しぶりに竜王が全員集まりそうだね」と呟いて、微笑んだ。
不在の間の対応について部下の竜騎士に指示を出す。
準備が整うと相棒の金色の蛇を竜に変身させた。
胴の長い金色の竜王の後頭部と前腕、後脚の三ヶ所には銀色の翼がそれぞれ生えている。一見飛ぶには心許ない翼の大きさだが、ウェスぺの相棒は光の魔力で空を飛ぶので問題ない。
颯爽と竜の背中に飛び乗ると、従卒のルークが駆け寄ってきた。
「僕も連れて行ってください」
「足手まといだ」
「島に残ってもやることがありません」
「……」
ルークの決心は固いようで、無理にでも竜によじ登ろうとしたため、ウェスぺは折れた。
「ええい、仕方がないな」
「やった!」
従卒を後ろに乗せたウェスぺは、竜を光の島から離陸させる。
白亜の都が遠くなっていく。
「……ウェスぺ様、あれは」
「何?」
遠ざかる島を眺めていたウェスぺは、ルークの声で一直線に近付いてくる竜の姿にようやく気付く。
鮮やかな朱色の鱗に、レースのように左右に流れる半透明のヒレが特徴の、胴が長い魚のような姿の竜だ。空を優雅に泳ぐようでありながら、その実、かなりのスピードで向かって来ている。
「……水竜王」
「見つけたぞ、ウェスぺ! 私の海神の玉を返せっ」
朱色の竜の背で女性と見間違う容姿の、裾の長い服を着た青年が叫んだ。彼は水の島アントリアの竜王ピンインだ。
リヴァイアサン攻略に必要なアイテム、海神の玉は、もともと水竜王の宝物だった。よって彼の追及は正しい。
「なんだ、ようやく気付いたのか。いつも遅いな、貴様は」
「よくも涼しい顔をして悪気もなしに……この盗人め!」
「これは拾ったのだ。拾得物は拾った者の所有になるだろう」
全く動じずに言い返すウェスぺに、水竜王は額に青筋を立てた。
「おのれ、よくもぬけぬけと!!」
「用件はそれだけか? 忙しいのでこれにて失礼する」
「待てっ、どこに行くつもりだ!?」
行くてに立ちふさがる朱色の竜に、ウェスぺは嘲笑を送った。
「海神の玉を有効利用してやろうと思ってな」
「光竜王! 貴様まさか……」
「眩光照」
台詞を遮るように、目眩ましの光を打ち上げた。
ここで水竜王と戦う気はない。いくら非戦闘派と言っても、相手は竜王。手こずるのは目に見えていた。
白い光が数分間以上に渡って水竜王の視界をうばう。
その間にウェスぺは悠々と竜を降下させる。
「……光竜王、リヴァイアサンに手を出すな! あれは貴様が思っているようなものじゃない!」
激しい光に目をかばって立ち往生している水竜王の叫びが聞こえる。
自分を引き留めるための言葉だろうと、ウェスぺは彼の台詞には気を留めずに、そのままリヴァイアサンの海へ向かった。
光が収まった頃には、黄金の竜の姿は遥か彼方だった。
「あの強突くばりの阿呆め!」
ピンインは光竜王を追うのを諦めると、地団駄を踏みながらウェスぺをののしった。
「本当にリヴァイアサンのところへ行くつもりなのか」
「……ピンイン様」
実は後ろに同乗していた、水の島の竜騎士セイランが見かねて口を挟む。本気で飛ぶと竜王は風竜より速いため、今回は自分の竜ではなくピンインの竜王に乗せてもらっていた。
「戻りましょう。火の島で炎竜王とも話すべきなのでは? 光竜王が良からぬことを企んでいると」
「むむむ」
光竜王に色々出し抜かれていることを、ライバルのアサヒに話したくないピンインだったが、腕組みして唸った。
「仕方あるまい……どの道、ピクシスは帰り道だ。よし、ひとまず帰るぞ!」
その頃、風の島アウリガでは。
解放されてすぐ、アサヒとピンインにそれぞれ助言を伝えた風竜王は、飛んでいく彼らを見送った。その場に残ったのはヒズミと、グライスとユエリ兄妹である。
彼らは少年にしか見えない風竜王に衝撃を受けていた。
「……ねえ、兄様。もしかして、あれが私のお父さんだって言わないよね」
「うーん」
さすがのグライスも困った顔だ。
風竜王らしき青銀の髪に碧色の瞳の美少年は、どうみてもユエリより一回りは年下なのだ。
「アネモス様ー!」
「ミケちゃん、無事で良かった」
少年は反応に困る面々を放って、飛び付いてきたパズス(羽の生えた猫の姿)を撫でる。そして、パズスを片手で抱えながら、足元の鳥かごの扉を開ける。
鳥かごから青い小鳥が跳ねて出てきた。
「すごく疑われているようだけど、どうしたら良いと思う? 僕の青い小鳥さん」
『そうだな……とりあえず酒を持って天竜王のところへ行こう。後のことは10年くらい掛けてゆっくり考えると良い』
「良いねそれ」
「……良くない!」
風竜王らしき少年と小鳥の会話に、ユエリは思わず突っ込みを入れた。
そして会話の内容で出てきた天竜王テュポーンに伝言を頼まれていたことに気付く。何でもないように天竜王について語るということは、やっぱり子供に見えるが竜王なのだ。
「確かに天竜王テュポーンは風竜王に酒を持って訪ねてこい、って言ってたけど、それはそれとして……あなたが風竜王なら、アウリガを何とかしてよ!」
そうユエリが言うと、少年は振り返って笑顔になった。
その肩に青い小鳥がとまる。
「そうだね。アウリガを何とかしなければね。でも僕はこんな子供の姿で、皆に信じてもらえるかな……封じられてる間も魔術を使ってたから、副作用で身体年齢が退行してしまったんだ」
「……竜騎士ならば、あなたが竜王であることは分かるだろう。もしアウリガが火の島を侵略したことについて責任を負うつもりがあるなら、速やかに賠償に応じて欲しいものだ」
ヒズミは冷ややかに指摘する。
一応、敵国の竜王が相手なのでアサヒのように友好的とはいかない。
「賠償か。じゃあついでに僕も火の島に行こう。さっきは炎竜王とゆっくり話せなかったし」
メンタルが強いのか、風竜王はヒズミの冷ややかな態度にも、困っているユエリ達兄妹の様子もどこ吹く風である。
少年は空を見上げて「久しぶりに竜王が全員集まりそうだね」と呟いて、微笑んだ。
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