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ゼフィの魔法
09 魔法使いの弟子になりました(1/20 改稿)
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俺は青い竜をまじまじと観察する。
蛇のような胴体に蜥蜴の手足、背中には折り畳まれた一対のコウモリの翼がある。鱗はみずみずしい群青で、頭部には黄金の角が輝いている。
体の大きさは母上と同じくらいだが、翼を広げれば母上より大きいだろう。
巨体なのに洞窟に入るまで気配に気づかなかったのは、静かで落ち着いた雰囲気をしているからだ。普通の竜じゃないのか、神秘的な黄金の瞳に見つめられて、俺はドキリとした。
母上が説明付きの紹介をする。
「ウォルト、クロス、ゼフィリア。こちらは、東の海に棲む神獣ヨルムンガンドです。竜に似ていますが、別の種族なので敬意を持って接するように」
神獣なのか。道理で気配が神々しい訳だぜ。
「私は神獣の中でも長老の部類に入る。地水火風はもちろん、あらゆる種類の魔法を修めている」
「すごい!」
「純粋な賞賛は心地いいな。もっと私を誉めてくれ」
ヨルムンガンドは自分の魔法を自慢したいみたいだ。
人間はひとつかふたつの属性の魔法しか使えないと聞いたことがある。神獣はたくさん魔法を覚えられるんだな。
「私も良い年齢であるし、魔法を受け継いでくれる弟子を探しているのだ。弟子になって、ついでに私の目的に協力してくれれば言うことがない。フェンリル殿の息子はどうかと思ってな」
「弟子?」
俺は兄たんを振り返った。
ウォルト兄とクロス兄は三角の獣耳を伏せてそっぽを向く。
「……ゼフィ。狼たるもの、爪と牙を鍛えることが重要だぞ」
「でも空をとぶやつには、手も足もでないじゃん」
「……」
ほら、空を飛ぶ魔法を教えてもらったら、竜も簡単に狩れるじゃないか。
俺の言葉にヨルムンガンドは喉を鳴らして笑った。
「フェンリル殿は、なかなか将来有望な後継者を持っているな」
「ゼフィリアは私の自慢の子供ですから」
母上は「ウォルトとクロスは、魔法を覚えたがらないので困っていたところです。神獣たるもの、ひととおりの魔法も使えなければ」と愚痴った。
兄たんたちは脳筋だからな。
「ウォルトとクロスは駄目か……」
「おれは?」
「ふーむ。ゼフィ、君はまだ小さいからな。魔法の修行に耐えられるかどうか」
ヨルムンガンドは子狼の俺を見て心配になったようだ。
「南の火の鳥の神獣もあたってみようかな……」
ウォルト兄とクロス兄は乗り気じゃないし、末っ子の俺は小さいしで、ヨルムンガンドは俺たち三兄弟に魔法を教えるのを諦めようとしている。
ちょっと待って欲しい。
前世で剣士だった俺は、魔法に興味を持っていた。
せっかく教えてもらうチャンスなのだ。この機会を逃してなるものか。
「だいじょうぶだもん!」
精一杯、背伸びして主張すると、ヨルムンガンドは目を細めた。
「そうだな……ではひとつ、入門試験をしよう」
「しけん?」
ヨルムンガンドは俺に付いてくるよう尻尾を振って、洞窟の外に出た。
岩をくわえて数個積んで山を作り、天辺にどこからか取り出した金の林檎をのせる。そうして俺に言った。
「この天辺の林檎をひとりで取れるかな? ウォルトやクロスの手を借りると失格だ」
「……できるもん」
俺は自分の身長の倍以上ある岩山をにらんだ。
岩を登って天辺の林檎を取ろうと思ったが。
「とどかないー!(ピョンピョン)」
いかんせん子狼の俺は、人間の腰くらいある大きな岩をよじ登ることすらできない。足掛かりを探して岩山の周囲を歩き回るが、ちょっと登ったところで断崖絶壁に阻まれて断念する。
「うー!」
「……ゼフィ。諦めて俺たちと狩りの練習をしよう。その岩山はお前ひとりで登るのは無理だ」
「もっと成長してから挑戦すればいいのよ」
クロス兄と母上が口々に言う。
悔しいな。
本当に俺が成長するまで無理なのかな。
「……そうだ」
岩山をにらんで考えていた俺は、ふと思いついて、その辺に転がっている木の枝をくわえた。
自分の身長より長い木の枝を引きずって岩山の前に持ってくる。
岩山は適当に岩を積み上げただけなので、岩と岩が接しているところに隙間があった。そこに木の枝をぐいっと押し込む。
「ええいっ」
「……ほう」
ヨルムンガンドが感心したように唸った。
要するに「梃子の原理」ってやつだ。
木の枝の端に飛び乗って、大きな岩を跳ね上げるように動かす。
幸いにも木の枝が丈夫だったのと、岩の積みかたが粗かったので、俺の思惑どおりに岩は動いた。
ついでに積み木崩しのように、バランスを崩して上に乗っている岩が転がり落ちる。がらがらがら。連鎖的に崩壊が起きた。
「ふえっ」
「ゼフィ! 大丈夫か」
岩が上に落ちてきそうになったので、俺はあわてて回避する。
見守っていたクロス兄が心配そうにする。
岩山が平らになると、林檎が俺の足元に転がってきた。
「りんご、とった!」
「「おお~」」
林檎をかかえて勝利宣言をすると、なぜかウォルト兄とクロス兄が意外そうに感嘆の声を上げる。
「見事だゼフィ。約束どおり、魔法を教えてあげよう」
「やった!」
ヨルムンガンドは厳かに言い、俺は弟子として魔法を教えてもらうことになった。
「ところで、りんご、たべていい?」
「う、うむ」
蜜入りだといいなー。
俺はシャリシャリ戦利品の林檎を食べ始めた。ヨルムンガンドは苦笑している。もしかしてデザートに取っておいた林檎だったのかな。言ってくれれば分けてあげるのに。
ふう、労働の後のご飯は美味しいぜ。
蛇のような胴体に蜥蜴の手足、背中には折り畳まれた一対のコウモリの翼がある。鱗はみずみずしい群青で、頭部には黄金の角が輝いている。
体の大きさは母上と同じくらいだが、翼を広げれば母上より大きいだろう。
巨体なのに洞窟に入るまで気配に気づかなかったのは、静かで落ち着いた雰囲気をしているからだ。普通の竜じゃないのか、神秘的な黄金の瞳に見つめられて、俺はドキリとした。
母上が説明付きの紹介をする。
「ウォルト、クロス、ゼフィリア。こちらは、東の海に棲む神獣ヨルムンガンドです。竜に似ていますが、別の種族なので敬意を持って接するように」
神獣なのか。道理で気配が神々しい訳だぜ。
「私は神獣の中でも長老の部類に入る。地水火風はもちろん、あらゆる種類の魔法を修めている」
「すごい!」
「純粋な賞賛は心地いいな。もっと私を誉めてくれ」
ヨルムンガンドは自分の魔法を自慢したいみたいだ。
人間はひとつかふたつの属性の魔法しか使えないと聞いたことがある。神獣はたくさん魔法を覚えられるんだな。
「私も良い年齢であるし、魔法を受け継いでくれる弟子を探しているのだ。弟子になって、ついでに私の目的に協力してくれれば言うことがない。フェンリル殿の息子はどうかと思ってな」
「弟子?」
俺は兄たんを振り返った。
ウォルト兄とクロス兄は三角の獣耳を伏せてそっぽを向く。
「……ゼフィ。狼たるもの、爪と牙を鍛えることが重要だぞ」
「でも空をとぶやつには、手も足もでないじゃん」
「……」
ほら、空を飛ぶ魔法を教えてもらったら、竜も簡単に狩れるじゃないか。
俺の言葉にヨルムンガンドは喉を鳴らして笑った。
「フェンリル殿は、なかなか将来有望な後継者を持っているな」
「ゼフィリアは私の自慢の子供ですから」
母上は「ウォルトとクロスは、魔法を覚えたがらないので困っていたところです。神獣たるもの、ひととおりの魔法も使えなければ」と愚痴った。
兄たんたちは脳筋だからな。
「ウォルトとクロスは駄目か……」
「おれは?」
「ふーむ。ゼフィ、君はまだ小さいからな。魔法の修行に耐えられるかどうか」
ヨルムンガンドは子狼の俺を見て心配になったようだ。
「南の火の鳥の神獣もあたってみようかな……」
ウォルト兄とクロス兄は乗り気じゃないし、末っ子の俺は小さいしで、ヨルムンガンドは俺たち三兄弟に魔法を教えるのを諦めようとしている。
ちょっと待って欲しい。
前世で剣士だった俺は、魔法に興味を持っていた。
せっかく教えてもらうチャンスなのだ。この機会を逃してなるものか。
「だいじょうぶだもん!」
精一杯、背伸びして主張すると、ヨルムンガンドは目を細めた。
「そうだな……ではひとつ、入門試験をしよう」
「しけん?」
ヨルムンガンドは俺に付いてくるよう尻尾を振って、洞窟の外に出た。
岩をくわえて数個積んで山を作り、天辺にどこからか取り出した金の林檎をのせる。そうして俺に言った。
「この天辺の林檎をひとりで取れるかな? ウォルトやクロスの手を借りると失格だ」
「……できるもん」
俺は自分の身長の倍以上ある岩山をにらんだ。
岩を登って天辺の林檎を取ろうと思ったが。
「とどかないー!(ピョンピョン)」
いかんせん子狼の俺は、人間の腰くらいある大きな岩をよじ登ることすらできない。足掛かりを探して岩山の周囲を歩き回るが、ちょっと登ったところで断崖絶壁に阻まれて断念する。
「うー!」
「……ゼフィ。諦めて俺たちと狩りの練習をしよう。その岩山はお前ひとりで登るのは無理だ」
「もっと成長してから挑戦すればいいのよ」
クロス兄と母上が口々に言う。
悔しいな。
本当に俺が成長するまで無理なのかな。
「……そうだ」
岩山をにらんで考えていた俺は、ふと思いついて、その辺に転がっている木の枝をくわえた。
自分の身長より長い木の枝を引きずって岩山の前に持ってくる。
岩山は適当に岩を積み上げただけなので、岩と岩が接しているところに隙間があった。そこに木の枝をぐいっと押し込む。
「ええいっ」
「……ほう」
ヨルムンガンドが感心したように唸った。
要するに「梃子の原理」ってやつだ。
木の枝の端に飛び乗って、大きな岩を跳ね上げるように動かす。
幸いにも木の枝が丈夫だったのと、岩の積みかたが粗かったので、俺の思惑どおりに岩は動いた。
ついでに積み木崩しのように、バランスを崩して上に乗っている岩が転がり落ちる。がらがらがら。連鎖的に崩壊が起きた。
「ふえっ」
「ゼフィ! 大丈夫か」
岩が上に落ちてきそうになったので、俺はあわてて回避する。
見守っていたクロス兄が心配そうにする。
岩山が平らになると、林檎が俺の足元に転がってきた。
「りんご、とった!」
「「おお~」」
林檎をかかえて勝利宣言をすると、なぜかウォルト兄とクロス兄が意外そうに感嘆の声を上げる。
「見事だゼフィ。約束どおり、魔法を教えてあげよう」
「やった!」
ヨルムンガンドは厳かに言い、俺は弟子として魔法を教えてもらうことになった。
「ところで、りんご、たべていい?」
「う、うむ」
蜜入りだといいなー。
俺はシャリシャリ戦利品の林檎を食べ始めた。ヨルムンガンドは苦笑している。もしかしてデザートに取っておいた林檎だったのかな。言ってくれれば分けてあげるのに。
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