5 / 9
5話:村の思い出
しおりを挟む「獣蟲に運ばれてきた私にも、恐れずに接してくれた人がいました。その人のおかげで、今があるんです。」
そう言って、ユウは腰に下げている日本刀に手を添えた。
「腰の刀は、その人からもらったのか。」
「はい。
師匠…その人の名は、トシヒデといいました。ずっと『師匠』と呼んでいましたが。
師匠と出会ったのは私が9歳の頃です。」
「ということは、今から9年前。神歴24年か。」
「ええ、当時ツクバ村は南武蔵国(埼玉南部)の領内で、日本帝国と戦争をしていました。」
「ああ、そうかその時期だな!その年には日本帝国が勝利し、南武蔵国は編入されたんだったな。」
「ええ、師匠は戦争を生き抜き、村に帰って来た元軍人でした。
村人たちは、彼の帰還をとても喜んでいました。きっと戦争前から頼りにされてたんでしょう。
だからこそ、驚いてたんでしょうね。
師匠は、村人から嫌厭される私を、引き取ってくれたんです。
3年間1人で過ごしてきた私にとって、これほど嬉しいことは無かったですよ。」
「…そうだよなぁ。
それで、色々ものを教えて貰ったんだな。」
「師匠には多くを学びましたよ。戦い方はもちろん、道具の作り方や薬草、可食獣蟲の判別方法など多岐に渡りました。
本当に…恩師と呼ぶべき人だと、思ってます。」
「そうだな!今はその師匠、どうしてるんだ?」
「私が村を出る頃には、病でもう大分弱っていました。
おそらく…もう」
「お前さんも中々な人生送ってるな。
さあ、それではその師匠に教わった戦い方。再度見せてもらおうか。」
ユウは話すことに夢中で、駅に近づくにつれ大きくなっている銃声を気にしていなかった。
「あれ…この方向。六本木駅じゃないですか?」
「ああ、おそらくな。六本木駅を避ける訳にはいかん。
これだけの荷物を背負ってくのが嫌だしな、隠れて様子を見にいくぞ!」
「はい!」
先ほどまでの暗い話を打ち消す様に、目まぐるしく状況が変わっていく。
◇ ◇ ◇ ◇
いくつかの倒壊した建物内部を、針で縫う様に進み、駅前を覗ける地点まで来た。
狛犬の大群が、駅を襲っていた。
(さっき遭遇した奴らか。)
距離が縮まったのに、銃声が変わらない。
それだけ兵士が殺されたのだ。
「応援が追いついておらん。このままじゃ駅入り口が突破されるぞ。」
「捜索隊を出し渋っていたのはこういう訳だったんですかね。
結局やられてますが。」
「どれ、一丁手伝ってやるか。なんか貰えるかもしれん。」
「…割に合いますかね。」
「策がある。
通常狛犬はそこまで大群で行動しない。
統率し切らんからな。
だが今回のは『親玉』がおる。
そいつさえ殺せれば、連中は引くぞ。
ほら、あの口元の刃が一際長い奴だ!」
シンヤが指を刺した方向に目を向けると、確かに他とは風貌の違う狛犬がいた。
「あれですね。見えました。」
するとユウはある事に気づく。
警備兵の銃撃から『親玉』を、他の狛犬が身を挺して庇っているのだ。
「気づいたか?
お前さんは向こうの建物へ移れ。
そして、俺とお前の射線が直角以上になるよう位置取るんだ。
お前が銃を撃ったらそれが合図だ。」
「…なるほど。
そうすればシンヤさんから見て『親玉』の手前にいる狛犬は庇いに回り、狙い撃ち出来ると。」
「そういう事だ。」
ユウは頷き、建物を出て道路に降り立った。
(向かい側の建物まで行かなきゃ。)
うまく車の陰に隠れながら進む。
時折流れ弾が飛んできて、ユウの近くでアスファルトを弾く。
(当たりたくないなぁ)
などと当たり前のことを考えてしまう。この策が失敗すれば即ち死であるというのに。
うまく向こうの建物まで着いた。
「短マスケット」に火薬と散弾を詰める。これで合図の用意は良い。
素早く武器をMP5に切り替えられるように、手元に置く。
「さあ、やってやる。」
引き金にかける指に、少しづつ少しづつ力を入れ、反動に備える。
(せっかくだから1頭でも殺りたい!)
轟音と共に無数の散弾が狛犬達に食い込む。
「ゴアルルルル」
一斉に『親玉』を守るように陣形を変える狛犬。
(思ったより多いな…!)
素早くMP5に持ち替えようとした時、「親玉」が爆発で体が欠ける有様を目の当たりにした。
シンヤはベネリM3でフラグ弾を撃ったのだ。
着弾と同時に爆発。
今度は『親玉』の頭が吹き飛んだ。
他の狛犬目掛けMP5を連射するユウ。
近づく間を与えず、狛犬の頭に9mm拳銃弾を捻り込む。
とうとう3度の爆発を喰らい、狛犬達は散り散りになって逃げていった。
「やった!」
ユウとシンヤは建物から這い出て、お互いの無事を確認。
2人はガッツポーズを決め
、血と死骸だらけになってしまった駅の入り口に向かって、歩き始めた。…
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる