ヒノモトノタビ

イチ

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6話:北へ

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「おいおい、恩賞の一つも無しかよ!」
シンヤが口を尖らせる。
 
ここは六本木駅内の東側、警備兵舎である。

「こっちも相当被害被ったんだ!そんな余裕は無い!」
六本木駅警備隊長も負けじと言い返す。

「お前らが持って帰ってきた物を見逃してやるだけありがたく思え!」
まさか、巡回兵から剥ぎ取った装備の事だろうか。
いや、バックパックに隠してあるはず…

「な…なに?」
シンヤが聞くと、警備隊長は黙ってユウを指差す。

ユウは剥ぎ取ったMP5をそのまま肩にかけていたのだ。


◇    ◇ ◇ ◇


「ほんとすいません…」

「いいって!とっ捕まるよかマシだ。」

僕らは、六本木駅の市場で拾得品の売買を終え、飯屋に来ていた。

「なんも貰えなかったのは仕方ない!かなり金は入ったんだし、良いもの食おうぜ!」

「はい。じゃあ僕は…地下魚の塩焼きかな。」
「おれは地下豚とキノコのトマト煮で。」

はいよ!と、飯屋のおばちゃんが威勢の良い声を上げた。

「ユウ、これからどうするんだ?」
注文を終え、一息ついた所でシンヤが話しかける。

「そうですね、もう数日ここで過ごして…」
「そのままアテもなく、か?」

図星だった。

ツクバ村を出てから、ただ生きていた。これまで僕の行動に意味は無かった。多分、生きてる意味も。

それを見透かされた気がして、なぜだか喉が渇いた。思わず手元の水を飲む。

「ツクバ村を出て、また東京に来たお前は故郷を探さなかったのか?」

故郷の駅がどこか、目星はついていた。でも、敢えて地上ルートを通り、避けたのだ。
理由を聞かれても…多分、分からないとしか答えられない。自分でもよく分からなかった。

でも、シンヤは理由を聞く事なく、

「一緒にお前の生まれ故郷に行く、というか探さないか?」
「え…」

予想外の言葉だった。

「何故、ですか。」
「いや丁度北の方に用があってな。良い機会だしよ、どうだ?」

正直嬉しかった。
でも…

「でも…」
「断る理由も無かろうて。」

それも図星だった。
確かに断る理由はない。ただ何となく、生まれ故郷に近づきたくなかった。

そう、嫌な予感。例えば…

「はいよぉ!!塩焼きはどっちだい!?そっちのイケメンのお兄ちゃんかい?」

おばちゃんが僕の前に料理を持ってきた。
勢いよく皿を置く。

「トマト煮もすぐ持ってくるからね!」
おばちゃんは小走りで厨房へ戻っていった。
…何を考えていたか忘れたな。

「おお、旨そうだな!互いに少し分けようぜ!」

「あっ、はい。」


地下魚の塩焼き。ホクホクの白身を切り分け、シンヤの方へ寄せる。
シンヤは器に豚とキノコを入れてこちらに渡してくれた。

「「いただきます。」」

僕は、何だか久しぶりに感じる食事を摂り始めたのだった…



◇   ◇   ◇   ◇



…結局、一緒に北へ向かうことになった。

「どうしたものか。」

そう呟きながら布団に寝転がり、手帳…日記を手に取る。

今日のページを開いて見直す。
なんたって今日ほど…


ーーーーーーーーーーーーーーー
神歴33年4月9日


今日ほど長く感じた日は無かった。地上の探索だってあんな無茶などしない。
だが、上手くいった。彼、シンヤさんがいたから。
初めて会った時は怪しく思えたし、完全に信じてはいない。

だけど、もう少し一緒に旅をするのも楽しそうだ。そう思える。

明日の10日にここを発ち、『青山一丁目駅』へ向かう。
そこからは地上ルートで「四ツ谷駅」へ行く事になるだろう。
丁度この2つの駅の間には、『東宮御所』と呼ばれる帝国の拠点がある。おそらく巡回兵も多い事だろう。獣蟲の心配は、しなくても良さそうだ。


ーーーーーーーーーーーーーーー


…朝だ。

目をこすり、体を起こす。二度寝したいところだが、今日は宿から出なくてはならない。
荷物をまとめなくちゃ。


トタンでできたドアを開け、駅へ向かう。
少し荷物を減らそう。
そう思って市場に行くと、丁度シンヤに会った。


「おはようございます。」
「おう、おはよう!
よう眠れたか?」
「ええ。昨日はごちそうさまでした。
不用品を売ってきます。」
「おう、いってきな。」


着れなくなった衣類やしばらく用の無さそうな小物を売る。


「お、終わったか。ほら、これ食え!」

ポンッと、シンヤが団子を放った。慌てて受け取る。

「これ、米から作られてる団子じゃないですか!」

東京ではなかなかお目にかかれない米。
大抵、埼玉で栽培された物や、甲斐国からの輸入品が出回る。
だが、ほとんど外側の駅で無くなるため中心地ではあまり見ないのだ。

「久しぶりに食べたいと思ってましたよ!」
「そーか、それは良かった!さっき団子売りがこの駅に来ててな。上手くこの駅の分を残しておいてくれたらしい。」

それはありがたい、と団子を齧りながらお礼を言ってみる。

シンヤはハッ、と短く笑うと、線路に降り立った。

「どうせ1駅だ!歩いて行くぞ!」

僕は、もう欠片になりつつある団子を惜しみながら口に放り込んだのだった。
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