ヒノモトノタビ~終末開拓記~

イチ

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プロローグ:発見

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日本帝国 東京駅 
神歴32年4月18日


薄暗い一室。
綺麗に整頓され、部屋の奥には日の丸が飾られている。
ここは開拓長官室。
奥に座っているのは黒田キヨタケ 長官である。

長官は部下から報告を受けていた。

「報告します。我が国の偵察隊が旧静岡北東部、富士の山の麓に拠点化可能地を発見いたしました。
旧地名は小山町。
地形としましては、北と東を山に囲まれ、川が数本伸びています。」

「ほう!丁度我が国が進出しようとしている地域ではないか!詳しく教えてくれ。」

「はい。そこは旧神奈川県境に近く、甲斐国との国境線ともそう遠くありません。
しかし、国境線付近の甲斐国領内には拠点は見当たりませんでした。おそらく甲斐国はその場所を知り得てないと思われます。」

「ふむ。しかし…仮に近付かないとしたなら、それなりの理由があるのでは?」

「どうでしょうか。偵察隊からは特に目立った脅威無しとのことでした。」

「ふーむ。他に特記事項は?」

「はい。1.5km圏内に修理可能な水力発電所が3つあります。
さらに廃工場が二箇所。繊維工場と金属加工工場のようでした。」

「願ったり叶ったりな土地だな。
廃工場か…軍事拠点にも成し得るな。」

「はい。西は開けているので、今後の進出の拠点にも出来ますな。」

「ただ、地形を聞く限りこちらからの輸送は困難そうだな。」

「そうですね…相当な時間が掛かるものと。」

「ふーむ。課題はそこだが、水力発電所等こんな良い条件は中々あるまい。
御前会議にかけてみよう。報告ご苦労!」

「帝国万歳!」

部下は敬礼すると、部屋を出て行った。


その後の御前会議にて、この地域への開拓入植が決定された。

かくして「静岡奪還」への第一歩が踏み出されたのである。


およそ1年近くにも渡る事前計画、周辺の偵察、物資輸送作業。獣蟲の襲撃を受けたり、輸送ルートの近くに軍事都市国家「鎌倉」があるために非常に困難なものであった。

また、この開拓がきっかけで日本帝国は厚木・横浜への攻撃、すなわち軍事都市国家「鎌倉」への侵攻が決定された。後の「南方平定」である。

ちなみに、小田原に集められた物資は小山町だけでなく、南の箱根での開拓でも使用されることを想定されている。


そんな背景を背負いつつ 

神歴33年3月9日
11人の「第1西方開拓隊」は出発した。


「第1西方開拓隊」
・メンバー
酒井ユウキ    技術者  リーダー
糸川フウタ    技術者
伊藤ヨウスケ   技術者
伊藤セナ     医者
小林ユウガ    大工
小林リン     大工
戸谷カズト    林業者
明石アカギ    農夫
明石ソラ     農夫
明石ユウコ    物品総括
石井フトシ    調理員
           以上11名

計画としては、
1・水力発電所一箇所の修復
2・作業、行動拠点の設置(基本水力発電所内)
3.農地の発見、確保
4・水力発電所周辺の極狭い範囲の防壁造り、見張り台の設置

特記事項
水力発電所の修復及び農地の発見が出来次第、「入植者」の要請をせよ


ーーーーーーーーーーーーー


パサッ
「フウ…相変わらず無茶言うお上方ですなぁ。」

トラックの助手席に座る 糸川フウタ は、隣で運転しているリーダーの 酒井ユウキ に話しかけた。

「なぁに、いつものことだろ。
前回の「立川補給所設営」は凄まじい放射線の中作業したし、
その前の「富士見開拓」は手違いで全然物資が無かった。
これだけ準備されてるんだ。今回は楽な方よ。」

リーダーのユウキは最年長者で、今年で30歳になる。多くの開拓・設営計画に参加してきた。

「そうなんですねぇ。
しかし…よく揺れるな。
まあ、これだけの距離をトラックが走れているだけでも奇跡のような道だが。
おーい!お前ら酔ってないかー?」

フウタが荷台に乗っているメンバーに呼びかけた。

「大丈夫よー!」

「ソラが少し気分悪そうだ。」
「大丈夫だよ父さん!」

農夫の明石親子。
父である明石アカギは少し過保護気味だ。
だが、息子の明石ソラは過保護な親に依存する事なく育っている。
良い息子だ。

「ははっそうか。大丈夫そうだな。」

彼らは二台のトラックで移動していた。
後続するトラックには物資が満載されている。

運転席には物品総括の明石ユウコ。
助手席には調理員の石井フトシが乗っている。

「いい?石井さん。基本的にその日使用予定の食糧はこちらから出しますが、出来るだけ現地で賄うようにしてください。
休憩もほどほどに鹿でも撃ちなさいね。」

「は、はい…」

明石ユウコは非常に厳しい物品管理を行う。
たがそれは、ただのケチ症では無く、彼女が過去の失敗を繰り返さぬようにとの事であった。



目的地である『生土水力発電所』が見えてきた。
3階建ての建物で、居住スペースも確保できるかもしれない。

「さあ、やるぞ。」

決意に満ちた声色で酒井ユウキが呟いた。
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