会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第1巻 1期目 閉会~臨時国会前日

古味、キャバ嬢の前に敗れる。

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「古味さん。。。助けてください」
 絞りだされるような震えた声が俺の心の危機感を増幅させていった。ほっておいたらそのまま死にそうな、そんな声であった。
「池山さん。何があったんですか」
「私、本気でした」
「本気って何に本気ですか?政治にですか?」
「・・・・・・」
 だめだ埒があかない。
「今、どこにいるんですか?議員宿舎の自分の部屋ですか?」
「もう夜遅いですが、とにかくそちらに向かいます。いいですか?早まってはだめですよ」

 急用ができたと安富に告げると俺は急いで駅に向かい、東京方面の電車に乗り込んだ。
「古味の奴。こんな時間に呼び出しなんて大変な身分なんだな」

 その電車の中で家に電話をすると母さんがでたので、急遽仕事で東京に戻ることになったと告げた。
「良ちゃん、やっぱり国会議員の仕事は大変なんだね。気を付けて行っといで」
「ああ。また落ち着いたら家に戻るから。由香にもそう伝えといて」
 臨時国会までまだ日にちはあったが、こんな形で休暇を終わらせられるとは。。。しかし、池山議員の状態が気になる。千葉県庁で会って以来、旧知の仲のように付き合ってきた間柄だ。もし、何かあったのなら手助けできることなら力になりたい。

 議員宿舎に着くと急いでエレベーターに乗り込み、池山議員の部屋の前に来た。そうするとドアは開けっ放しであった。以前この状態のドアをのぞき込んだら投げ飛ばされたことがあったが、池山議員にその心配は不要だろう。電気のついていない状態の玄関に勝手に上がり込み手探りで探したスイッチの電源をONにすると、池山議員はうつむきながら正座していた。
「池山さん」
「・・・・・・」
 とにかく生きていてよかった。放心状態の彼を揺さぶると少し口を開いた。
「4人前ですよ信じられますか?」
「4人。。。何言っているんですか?」
「私はアリンに本気だったんですよ。キャバ嬢と国会議員という身分差があっても本気だったわけです」
 わかった。何かキャバ嬢との間にあったのか。しかし、本気とは?結婚したいということだろうか?
「わかりました。私には何ができますか?私がアリンの本心を確かめてきますから、それまで早まった行動をしてはだめですよ」
「お願いします。既に準備は整っています。これを渡してください」
 そういうと池山議員は俺に指輪を渡した。なっ指輪。。。婚約指輪か。奥さんのことはどうするつもりなんだ?いやっそれより今の池山議員に問いただすよりアリンに話をした方が早そうだ。
「私はアリンのために全てを捨てる覚悟があります。」
 俺は議員宿舎を飛び出すとタクシーを捕まえ急いでキャバクラレインに向かった。

ーキャバクラレイン
 相変わらずのおしゃれな外装を見ている暇もなく、受付で懇願するように言った。
「アリンさんお願いします」
「アリンを指名ですね。今接客中ですので少しお待ち頂きますがよろしいでしょうか?」
「なんでもいいです。とにかくアリンさんを」
 余りの様子に店員は訝し気だったが、取りあえず中には通してもらえた。
 くっ通された席のしきいの向こうからアリンの声らしきものが聞こえたが、ここで飛び出したらそれこそつまみ出されるだろう。
「じゃあね。先生♡。また一緒にディナーでも食べに行きましょう」
「うんー。僕アリンちゃんにだったらなんでも買ってあげちゃう」
 なんか、向こうから変なやり取りが聞こえたが、こんな女相手に本気になってしまって池山議員は大丈夫なのだろうか。
「あらー誰かと思えば古味さん。お久しぶり。タッチャンは一緒じゃないの?」
「それがただ事じゃないんです」
 詰め寄ろうとしたが、さっと間にもう一人の女性が入ってきたので詰め寄ることはできなかった。
「古味先生。何飲む?」
 小麦色の肌をした、ちょっとケバ目のキャバ嬢に制され、しかたなくソファーに座った。
「何か急用?」
 汗だくだくで、シャツがしわしわな様子にただ事ではないと察したようだ。
「実は池山議員がこれを・・・」
 渡された小物入れの蓋をアリンが開けるとそこには指輪が入っていた。
「池山議員は本気です。あなたと一緒になるためなら全てを捨てる。国会議員も辞める覚悟です」

「えっ・・・」

 しばらくの沈黙の後、二人のキャバ嬢は目を丸くしながら見つめ合っていたが、ケバ目のキャバ嬢が
「ギャハハハハ」
突如、下世話な笑い声をあげ、俺はその声に肺腑を抉られるような感覚を覚えた。
「キャバクラ嬢と結婚するために国会議員を辞めちゃうなんて馬鹿みたい~」
「それでも池山議員は本気なんです。いや、もちろんアリンさんに強制する権利なんて当然ありません。でも、せめて断るのであれば直接本人に言ってくれませんか」
「えーじゃあ池山さんにお店に来るように伝えなさいよ」
 ケバ目キャバ嬢が相変わらず口を挟む。

 アリンは暫く黙っていたが、口を開くと俺にこう伝えた。
「私、池山さんとはいいお客様としての付き合いで結婚なんて考えたことありません。でも、何かの拍子で誤解を与えてしまったのであれば謝ります。」
 俺はガクッと頭を垂れた。
 目の前にいるアリンは相変わらずキャバ嬢であり、その道のプロの女だった。池山議員の好感を得てきたのも、さっきまでいた客の機嫌を取ってきたのも同じで、あくまでお客さんだったのだ。当然、俺もそれはわかっているが、池山議員は分かってくれるだろうか。。。

「とにかくこの指輪はお返ししますから。たっちゃんにはまたよかったらお店に来てって、料金分のサービスはしてあげるからねって伝えておいてください」
 完全に敗北した俺はアリンを連れ出すこともできず、再び池山議員の部屋に戻っていった。
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