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第1巻 1期目 閉会~臨時国会前日
指輪の行方
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俺は途中でタクシーを拾い議員宿舎に戻ってきた。池山議員の部屋のドアは出るとき閉めたので閉まっていたが、鍵は開いていた。
「池山さん入りますよ」
俺が飛び出したときと池山議員の姿勢は変わっていなかったが心なし落ち着いているように思える。
「指輪お返しします。これがアリンさんの返事です」
「・・・・・」
「具体的に何が起きたのか教えて頂けますか?」
直ぐには話し出さなかったがぽつりぽつりと池山議員は口を開きだした。
「本当はアリンは私が大変お世話になった松原元衆議院議員の愛人だったんです。それを松原先生が落選したのをいいことに私が奪いました」
「その頃はアリンが好きだというより、松原先生に勝つことで自分が出世したと思い込みたかったのかもしれません」
なるほど、その松原って人も騙されていたわけか。
「でも、毎日のように通ううちにアリンに惹かれだして、こんな日本のど真ん中でいろいろな大物と接している。見た目だけじゃありません、大物達に話を合わせたり相談に乗る話術、高級店のキャバ嬢には社交性がとても重要なんです」
「しかし、私の女房は気立てこそいいが地味な女です。場末の町工場のおっさんばかり相手にしている女なんです」
それは、池山議員を当選させるための票固めだから仕方がないと思うが、まあ取りあえず黙っていよう。
「そんなわけでアリンには本気になりました。しかし、子供になってしまったといっても過言ではないかもしれません。古味さんとキャバクラレインに行ったとき、
飲みすぎて泥酔してしまったんです。そして、アリンはタクシーを呼んで私を議員宿舎まで運んでくれたのですが、不覚にもその様子を何者かに写真に撮られてしまって・・・」
「そして、こともあろうに民自党の副幹事長にその写真が渡っていたのです」
なんということだ。議員宿舎には国会議員が当然出入りする。そのスキャンダルを狙った輩が張り込んでいてもおかしくない。しかも、その写真が民自党の幹部に渡っていたのだ。
「それで、その副幹事長からなんて言われたのですか?」
「ラブホテルを使えと」
「?」
俺は一瞬何のことだかわからなかった。
「ラブホテルを使えと。議員宿舎では不謹慎だからラブホテルを使えと、私はアリンとそんなつもりじゃなかったんです。でも、その言葉に動転して私はアリンに本気だ。結婚すると言ってしまった。だからもう後には引けないんです」
よかった。高揚した池山議員をよそに俺は胸を撫でおろした。このことはまだ大事にはなっていないらしい。その写真を撮ったのが何ものかわからないが、公にはなっていないようだし、ラブホテルを使えと言うぐらいだ、向こうはこのことは気にも留めていないのだろう。ここで引けば池山議員は助かる。
「こんなもの」
「池山さん!」
池山議員が指輪の箱を持って外に飛び出そうとしたので俺は必死で食い止めた。
「離してください。古味さん。私はもう終わりです。議員バッチもこの給料3カ月分の指輪も全て投げ捨てて自分も死にます」
「落ち着いてください。奥さんはどうなるんですか!」
「女房もわかってくれます。こんな浮気した夫いらないはずです」
「ううううううう」
再び池山議員は泣き出してしまった。
「池山さん取りあえず冷静になりましょう」
「私が見る限り慌てる必要はないように思えます」
「どうしてですか?民自党にも喧嘩を売ってしまったんですよ」
「まず、今回の事件ですが他に誰か知っていますか?」
「知ってるはずありません。私なんかじゃ記事にもならないって言ってましたから」
「それはもっけの幸いです。当然奥さんにも知られていないわけですから、今まで通り普通に暮らせばいいじゃないですか」
「普通って私が普通じゃないんですよ」
まだ支離滅裂だが俺は言葉を続ける。
「その代わりアリンのことはもうあきらめましょう。これからは浮気などしない奥さん一筋の池山衆議院議員になればいいんです」
「・・・・・」
そして写真を撮ったものの正体。民自党副幹事長の本心。簡単にはわからないだろうが、それらも時間が立てばわかってくるかもしれない。
大人しくなった池山議員を部屋の奥に連れ戻した。
「古味さん。わかりました」
「私も臨時国会までゆっくり考えてみます。ですから今日はもうお引き取り下さい」
「それとこの指輪古味さんの手で処分してください。私はもうこの指輪を見るのもいやです」
「この指輪高いんですよね。(給料3か月分ということは300万円ぐらい?)捨てちゃっていいんですか?」
池山議員は駄々っ子のように首をぶんぶん横に振って聞かない。
仕方がない。後で落ち着けば返す機会があるかもしれないので取りあえず預かっておこう。
「池山さん入りますよ」
俺が飛び出したときと池山議員の姿勢は変わっていなかったが心なし落ち着いているように思える。
「指輪お返しします。これがアリンさんの返事です」
「・・・・・」
「具体的に何が起きたのか教えて頂けますか?」
直ぐには話し出さなかったがぽつりぽつりと池山議員は口を開きだした。
「本当はアリンは私が大変お世話になった松原元衆議院議員の愛人だったんです。それを松原先生が落選したのをいいことに私が奪いました」
「その頃はアリンが好きだというより、松原先生に勝つことで自分が出世したと思い込みたかったのかもしれません」
なるほど、その松原って人も騙されていたわけか。
「でも、毎日のように通ううちにアリンに惹かれだして、こんな日本のど真ん中でいろいろな大物と接している。見た目だけじゃありません、大物達に話を合わせたり相談に乗る話術、高級店のキャバ嬢には社交性がとても重要なんです」
「しかし、私の女房は気立てこそいいが地味な女です。場末の町工場のおっさんばかり相手にしている女なんです」
それは、池山議員を当選させるための票固めだから仕方がないと思うが、まあ取りあえず黙っていよう。
「そんなわけでアリンには本気になりました。しかし、子供になってしまったといっても過言ではないかもしれません。古味さんとキャバクラレインに行ったとき、
飲みすぎて泥酔してしまったんです。そして、アリンはタクシーを呼んで私を議員宿舎まで運んでくれたのですが、不覚にもその様子を何者かに写真に撮られてしまって・・・」
「そして、こともあろうに民自党の副幹事長にその写真が渡っていたのです」
なんということだ。議員宿舎には国会議員が当然出入りする。そのスキャンダルを狙った輩が張り込んでいてもおかしくない。しかも、その写真が民自党の幹部に渡っていたのだ。
「それで、その副幹事長からなんて言われたのですか?」
「ラブホテルを使えと」
「?」
俺は一瞬何のことだかわからなかった。
「ラブホテルを使えと。議員宿舎では不謹慎だからラブホテルを使えと、私はアリンとそんなつもりじゃなかったんです。でも、その言葉に動転して私はアリンに本気だ。結婚すると言ってしまった。だからもう後には引けないんです」
よかった。高揚した池山議員をよそに俺は胸を撫でおろした。このことはまだ大事にはなっていないらしい。その写真を撮ったのが何ものかわからないが、公にはなっていないようだし、ラブホテルを使えと言うぐらいだ、向こうはこのことは気にも留めていないのだろう。ここで引けば池山議員は助かる。
「こんなもの」
「池山さん!」
池山議員が指輪の箱を持って外に飛び出そうとしたので俺は必死で食い止めた。
「離してください。古味さん。私はもう終わりです。議員バッチもこの給料3カ月分の指輪も全て投げ捨てて自分も死にます」
「落ち着いてください。奥さんはどうなるんですか!」
「女房もわかってくれます。こんな浮気した夫いらないはずです」
「ううううううう」
再び池山議員は泣き出してしまった。
「池山さん取りあえず冷静になりましょう」
「私が見る限り慌てる必要はないように思えます」
「どうしてですか?民自党にも喧嘩を売ってしまったんですよ」
「まず、今回の事件ですが他に誰か知っていますか?」
「知ってるはずありません。私なんかじゃ記事にもならないって言ってましたから」
「それはもっけの幸いです。当然奥さんにも知られていないわけですから、今まで通り普通に暮らせばいいじゃないですか」
「普通って私が普通じゃないんですよ」
まだ支離滅裂だが俺は言葉を続ける。
「その代わりアリンのことはもうあきらめましょう。これからは浮気などしない奥さん一筋の池山衆議院議員になればいいんです」
「・・・・・」
そして写真を撮ったものの正体。民自党副幹事長の本心。簡単にはわからないだろうが、それらも時間が立てばわかってくるかもしれない。
大人しくなった池山議員を部屋の奥に連れ戻した。
「古味さん。わかりました」
「私も臨時国会までゆっくり考えてみます。ですから今日はもうお引き取り下さい」
「それとこの指輪古味さんの手で処分してください。私はもうこの指輪を見るのもいやです」
「この指輪高いんですよね。(給料3か月分ということは300万円ぐらい?)捨てちゃっていいんですか?」
池山議員は駄々っ子のように首をぶんぶん横に振って聞かない。
仕方がない。後で落ち着けば返す機会があるかもしれないので取りあえず預かっておこう。
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