会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第1巻 1期目 閉会~臨時国会前日

内助の功罪

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 池山議員のせいで予定より早く議員宿舎に戻るはめになった俺は、臨時国会までの残り3日間を情報分析(ニュースを見ながらいろいろ考える)に充てることにした。これは特別会の前にも行ったことだが、今回は事情が違う。ここまでの短い期間にもいろいろな政治家に会っていろいろ話をしたし、それらの人々が一筋縄ではいかぬ人だということを実感している。また、目の前で池山議員が罠にはまり追い詰められたではないか。いつ俺もこのような罠にはまるかわからないので、自衛のために他の政治家達の動向を確かめておくのは大事だろうと考えた。しかし、このように張り巡らされた罠こそが政界という無明の闇そのものであり、いまいち実感がわいていなかった政治家という身分につながれた重い枷なのかもしれない。

 それではと、俺は長期戦(長時間の引きこもり)に備えてコンビニに買い出しに行くことにした。議員宿舎のエントランスを出てコンビニの方に歩こうとすると、母親と男の子の二人連れが所在なさそうにうろうろしている。まさか、議員の不倫相手が子供を連れてきたのかと勘繰りたくはなったが、池山議員の登場でその心配は杞憂に終わることになった。
「美佐子・・・」
「あなた」
 抱き合って喜んでいる姿は、まるで生き別れた夫婦のように思えた。
「池山さん。そのお方は奥さんですか」
 3人に近寄って話しかける。池山議員も俺の存在に気が付いたようだ。
「そうです。妻の美佐子です。全くこっちには来るなっていったのに」
 そういいながらもほっとしている様子だ、昨日あんなことがあった後だから無理もない。
「こちらの方は?」
 奥さんが池山議員に聞くと、俺が同じ千葉出身の国会議員であること、無所属であること、当選証書を一緒に受け取った日から今まで親しくしていることなどを話してくれた。
「そうですか。主人が大変お世話になってるようですね。これからもよろしくお願い致します」
 池山議員の奥さんは深々と礼をしてくれたのでこちらも礼をして返す。
「私は普段は地元で支持者の方々にご挨拶させて頂いたりして国会の方には来たことがないのですが、主人がこっちでちゃんとうまく生活できているか心配で今日は黙って訪ねてきた次第です」
 むむむ。主人の生活態度が少し不安だったというのか、アリンのことまで勘づいたわけではないが、やはり政治家の妻独特の勘というものがあるのではなかろうか。
 もちろんここでアリンとのことをぶちまけ池山議員を追い込むような真似はせず、それでは親子水入らずで楽しんでくださいと言って別れた。それに合わせて、小学生ぐらいの息子も俺に挨拶をしてきた。もし、昨日の池山議員の妄言が実行されていたなら、この奥さんと息子さんをどれだけ悲しませることになったのかと怒りさえ覚える。
 この後、親子3人で議員宿舎に入って行った。当然池山議員の部屋に入るのだから、昨日指輪を引き取ったのは正解だったかもしれない。もし見つかれば、絶対になんの指輪か聞かれるだろうし、奥さんへのプレゼントと弁明したとしても300万円もする指輪を突然渡すのは不自然だろうから。

 コンビニに向かって歩きながらもんもんと考える。昨日、池山議員の話を聞いていたとき、奥さんの話も出ていた。地元のおっさんばかり相手にしている自分の妻より、大物達を相手にしているアリンの方がいいという内容だったが、実際あった印象を考えてみると、よく言えばお似合いの夫婦、悪く言えばどこにでもいる普通の家族連れのような感じがする。
 なるほど、赤坂の夜の町という特異な舞台で触発され、キャバクラ嬢との不倫という冒険をしてみたくなった池山議員の気持ちがわからなくもない。俺は地元の有権者の相手を地道に努めてきたのがあの奥さんの功で、夫を未知の地で冒険に駆り立ててしまった地味さが罪なのではないかと勝手に解釈したりしたのだった。

 俺が将来議員の身で結婚するなら、堅実さだけでなく、多少冒険心をくすぐる危うさを合わせ持った女性が理想だなと考えたりもした。
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