会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

文字の大きさ
35 / 94
第1巻 1期目 閉会~臨時国会前日

[考察]政治家達の蠢動(しゅんどう)

しおりを挟む
 そうこうしているうちにニュース22の時間になった。
「皆さんこんにちは久留米久志です。今日は外交関連のニュースからです」
 今日は阿相首相がインドネシアの首相と会談したというニュースがトップニュースだった。迎賓館で接待した後、歌舞伎やら日本画展やら日本らしい催し物を見物し、最後は経済的な協力関係を確認するといういつもの流れだった。通常それだけなら珍しいニュースでもないはずだが、続いて阿相首相の海外の評判の話題に入る。

「皆さん。海外のメディアでは阿相首相をなんと例えているかご存知でしょうか?」
そういうと隣の女性キャスターがパネルを自分の前に立てた。
「そうです。亀です」
パネルには漫画ちっくな亀の絵が描かれている。
 阿相首相は実は海外メディアからは日本の亀のあだ名が付くほど外遊嫌いで有名であった。就任当初はアメリカにこそ行ったものの、定番のゴルフが苦手で不評を買う。その後は、中国、ロシアなどの外交は全て外務大臣任せで自分は日本からほとんど動かなかった。
 また、隣国のミサイルや核開発で問題となったときにもあまり干渉しなかったことから、何か都合が悪いことが起こると日本という甲羅に閉じこもる亀のようだと、海外メディアから批判されてしまったのだ。そんな阿相首相が外国の首相と会うなんて珍しいですね。という皮肉が今日のトップニュースには含まれていたらしい。
 
 さて、今までほとんど政治に関係のなかった俺だが、そんな中でも何人か関りを持つことになる。
 
 1人目は政界十常侍の水園寺幸房の息子義光。初登院の日に遭遇し、彼から嫌味を頂戴する。当然、俺は早々に噛みつき返したが、彼の野良犬を見下すような目が印象的だ。しかし、世襲が当たり前の政界においても親子で政治家を続けているのは珍しい。ネットで調べたところによると、この二人の選挙区は中選挙区時代は1つの選挙区で、水園寺幸房の強力な地盤だった。その後、小選挙区制導入に伴い、その選挙区を2つに分け、1つを息子の義光に譲った形だ。当然、野党から批判が上がったが選挙で大敗し、以来、この選挙区は批判も込めて水園寺割りと呼ばれている。

 2人目は渦川俊郎。当選を重ねる大物だ。もともと父親は琵琶湖ほとりのホテルの経営者だったらしく、二世ではない。しかし、観光業の強力なバックアップを受けている強者だ。俺は未だに大臣の地位についていると思っていたが、現在は国土交通省の副大臣だそうだ。
 以前、ちら見した政権に潜む火種という眉唾な記事によると、政権内部の陰謀も絡んだ降格らしい。俺のような新人議員に議員宿舎の部屋も譲れないようなケチな政治家は降格で当然だとも思うが、まあこの感想は俺の私怨だが。俺を投げ飛ばした小川順子はこの男の政策秘書なので、個人的な因縁が深い相手だ。

 そして、3人目は民自党副幹事長狭間譲。直接関わりはないが池山さんをはめた張本人かもしれない。副幹事長という役職の意味がよくわからなかったので調べてみたが、政党の職務を行う役職で一番偉い役職は言うまでもなく幹事長である。じゃあ、副幹事長は2番目に偉いのかというとそうでもないらしく、複数名任命され、党運営の経験を積ませるのが主な目的らしい。そう考えると池山さんほど、恐れて取り乱す必要もなかったと思うが、それは本人の問題なのでもう放っておこう。

 テレビを見るとニュース22は若者の就労問題の特集に入っている。かつてニートと呼ばれた世代が就業できないまま高齢化し、内閣府の統計上の数字から漏れているというものだ。自分の人生もこの問題と無縁のものではないが、やっぱり本人の意思で無理にでも社会に出てみるしか道はないのではないかとも考える。こういったことを国会で取り上げてくれるとすれば野党だろうか。

 野党側で今まで名前が出てきたのは、初登院前に秘書が電話をかけてきた社由党の沼田隆二。少数政党の小宮出江ぐらいか。
 社由党は歴史のある政党であるが昨今は鳴りを潜めており目立った動きはしていない。小宮出江の方は少数政党らしく個人で動いているようだ。女性議員らしく待機児童問題へ積極的に取り組んでいて、最近、待機児童の母親を集めた決起集会のようなものを開いたと取り沙汰されていた。

 こうして、何人もの政治家の顔を思い浮かべながら冷静に自分を振り返る。なるほど、自分はこの人たちの誰にも政治家として及ばないだろう。力でも実績でも。なら、どうすればいいのか。このままあたりさわりなくフィードアウトを狙うか、それとも一挙大ばくちを打って勝負に出るか。そこまで考えて、酒瓶に手を伸ばすと空だったので冷蔵庫に酒を取りに行った。 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...