会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第1巻 1期目 臨時国会

民衆党の論客

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 臨時国会初日、東京は朝から雨だった。梅雨にはまだ日があるが、しばらくグズグズした天気が続くらしい。
 地下鉄に乗り込んだが今日は初登院の日のようには池山議員とは会わなかった。ちゃんと国会に来るだろうかと、まるで五月病の新人社員を心配するかのように考えているうちに国会議事堂前駅に着いてしまった。

 今日は臨時国会の初日なので国会の召集に伴う行事などが行われた後、衆議院の本会議場で阿相首相による所信表明演説が行われた。阿相首相の演説の趣旨は就任以来ほとんど変わらず、まずは党内に気を配り派閥の力関係を考慮した政策をやるやると宣言した後、野党の要求には応じない姿勢を見せ、外交は当たり障りのないことを言ってはぐらかした。このある意味すごい演説手腕にはマスコミからも野党からも顰蹙(ひんしゅく)を買っているが、全く気にしていない。この辺りは民自党の権限をしっかり掌握していることからくる余裕と言えるだろう。
「いいぞ。さすが阿相首相」
「さいこー」
 民自党のさくらから阿相首相を褒めちぎる野次が飛んでいる。そこまでで今日は終わりとなった。
 そして、やれやれとみんな本会議場を後にする。俺も今日の演説もニュースで酷評されるだろうと内心不満を抱えながら出口に向かう、すると何やら議員を集めて騒いでいる奴がいる。民衆党の党首浜田彰浩(はまだ あきひろ)だ。

「君たちも聞いただろあのくだらない演説を」
民衆党の若手がうんうんとうなずく。
「明日、頭ごなしにこき下ろしてやる」
浜田彰浩はそう言うと何人か連れて民衆党の控室に入って行ってしまった。

 次の日、天気予報通り雨が降っている。悪い天気の予報ばかり当たるものだと考えていると、本会議場の向こうの方に池山議員が歩いているのが見えた。昨日は気にしなかったが多分来ていたのだろう。

「民衆党。党首浜田彰浩君」
議長の呼びかけに応じ、浜田党首が壇上に立った。昨日は首相による所信表明演説が行われたが、今日はその演説に対する各会派からの代表質問が行われる日である。
 民衆党党首浜田彰浩は元ITコンサルティング会社の社長で明敏な頭脳と鋭い弁舌で知られる40代である。着こなしたスーツでさっそうと現れたイメージも元コンサルティング会社社長の肩書に恥じないものであった。
「阿相首相。あなたの昨日の演説には3つの間違いがあります」

「1つ目は党内の力関係にばかり気を配り取るべき政策を取っていないこと」
確かに、阿相首相の演説には経済政策ばかりが盛り込まれている。それはつまり党内の利権に配慮した公共事業中心の政策を取ると考えて間違いないだろう。

「2つ目は我々野党の要求に応じないどころか議論をしようともしない。これは民主主義の倫理に反する。違いますか?」
「わあああ」と野党から大きな歓声が上がる。政策の実現力で民自党に大きく差を付けられている野党とすれば、なんとか議論の場に引き釣りだし、自分達の力を国民にアピールしたいところだ。

「3つ目は日本の殻に閉じこもり、積極的に外交を行わない。これは世界からも亀と批判されていることです。隣国の脅威が迫っている今こそ、世界の国々と手を取り合って脅威に立ち向かうべきではありませんか」
これは昨日のニュース22でも言っていたことで、阿相首相の外交姿勢が消極的なのは内外ともに認めることである。阿相首相とすれば、国内の地位が万全であれば国外のことなどどうでもいいのであろうが、この点は野党からも厳しく批判されている。

 3つの批判を言い終わり、民衆党はまるで勝ったかのような熱気に包まれていた。まあ、今日は代表質問の日なので、頭っから否定して勝手に結論を出している浜田党首の演説の内容が正しいかどうか疑問が残るが、とにかく久しぶりに野党が色めき立っているのは確かだ。

 一方、自分の演説を否定された阿相首相であるが、瞳がしわに隠れていて聞いているのか寝ているのか遠くからだとよくわからなかった。よく言えば、長老の風格のようなもので野党の批判を受け流しているようにも見える。浜田党首も壇上から阿相首相の方を見ていたが、全く反応が返ってこないのでいらいらしながら壇上を降りて自分の席に戻っていった。

 俺はここまでのやり取りに勝手に採点を付けてみる。
「浜田党首の演説が大いに盛り上がった感じなので、臨時国会の冒頭は民衆党の勝ちかな。でも、最後、阿相首相も動じなかったので1点くらい返して、3対1でやっぱり民衆党の勝ちかな」

 民衆党も政権交代を掲げながら実現しなくて久しい、この辺りで政変でも巻き起こし政権奪取と望みたいところである。
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