会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第1巻 1期目 臨時国会

ホームドアを望む人々

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 場所は再び議員会館の渦川の部屋(元俺の部屋)。その日、休日であったが再び渦川から呼び出された。
「政治家は国会のない休日にこそ政治活動をするものだよ」
「そうですか。アドバイスありがとうございます」
と不満げに返した。
「いや、君は無所属だからね。あまり平日から連絡とって周囲に民自党なんじゃないかと誤解されるのも悪いと思ってさ」
 つまり、俺が民自党のように思われては渦川が迷惑するということだろう。

 緒川順子に出されたコーヒーをすすりながら俺は話をする。
「桃山鉄道の件ですね。結果はだめでした」
「そうか」
 そんなもんだろうなという感じで渦川は聞いている。
 俺は、ホームドアを設置するのには設置費用やホームの改修で金がかかり過ぎること、現在のホームドアには技術的な問題があり、3つドアのタイプと4つドアのタイプがある桃山鉄道では車両をどちらかに統一する必要があることなどを話した。
「なるほど。まあ訪問していきなり設置してくれるとは思わなかったが、いろいろ難しいようだね」
 そういったやり取りをしていると渦川の部屋に内線が入る。
「先生、視覚障害者団体の方がお見えです」
 緒川順子が国会事務局からの電話を取り次ぐ。
「わかった部屋に来ていただくよう伝えてくれ」
「視覚障害者団体ですか?」
 俺は思わぬ来客に質問した。
「そうだ。今回ホームドア設置に向けて動いたことがいろいろなところに伝わったらしく、ホームドアを望んでいた団体の1つが私に会いたいと言ってきたんだ。君も一緒に話を聞いて欲しい」

 そうこうしていると、ノックの後にサングラスをかけ白い杖を突いた老人と、付き添いの人らしい中年の女性が入ってきた。
「渦川副大臣。本日はお会い頂きありがとうございます。ホームドア設置に向けてご尽力されていると聞き、本日はご挨拶に参りました」
「遠いところわざわざありがとうございます。こちらに座ってください」
 そういわれると老人は杖でかつかつとソファの位置をさぐりながら座った。

「やはり、目が不自由であると駅を使う上でいろいろ苦労なされるのでしょう」
「苦労なんてものじゃありません。毎日必死です」
 当然、目が不自由であっても仕事はしないといけない。人によっては通勤電車を使う場合もあるかもしれない。そういった人々は点字ブロックと音だけを頼りに電車の乗り降りをしないといけないのだ。
「例えば川にかかる橋や陸橋であれば、横に欄干がありますよね。駅のホームにはそれがないのと同じですから」
 老人は淡々と語り始める。俺は渦川の横で目の不自由な人達がしている苦労話を一緒に聞いている。
 老人が言うには点字ブロックがあってもそれに気づかずホームから転落してしまう場合があるらしい。また、別のホームに来た電車の音を勘違いして、ホームに転落してしまったケースもあるようだ。
「私ども団体にも鉄道会社からはホームドアの設置には費用も時間もかかるためすぐには難しいという回答を頂いています。ですが、国が動いてくれれば何か進展があるんじゃないかと思います。本日はお会いくださりありがとうございました」
 そういうと、老人と中年の女性は部屋を出て行ったので、緒川順子が議員会館の出口まで案内した。

「古味君。君はどう思うかね」
 渦川が煙草に火をつけながら俺に質問を投げかける。
 俺は会社員時代人身事故の度に電車が遅延し、そのたびに苦労させられるのが本当に嫌だった。それがため、国会議員になってからもホームドアを設置して人身事故を防ぐという気持ちには変わりはないのだが、実際に、事故の危険に晒されている人達の考えを聞くのは初めてだった。
 ならなおのことホームドアの設置に動かなければいけないのだが、桃山鉄道でその難しさは聞いたばかりである。

「難しいですね」
 ありきたりの返事だが俺もそれ以上言いようがなかった。
「ふむ。古味君、今回はいろいろ動いてくれてありがとう。感謝しているよ。ただ、問題が金であれば、どうにかする方法はあるかもしれない。そのための政治だからね」
 政府の方で金を出してくれるよう渦川が動いてくれるということだろうか。こういったときに無所属の1議員の俺の身分ではどうにもならないことを痛感した。なんにせよ、すぐに解決することはできないので、今回の呉越同舟での政治活動はこれで終わりとなった。
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