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第1巻 1期目 臨時国会
サラブレッドの憂鬱
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ところ変わってこちらは水園寺割りの片割れである息子の義光の事務所である。義光は普段は都内のタワーマンションに住んでいるのだが、父親の幸房が現在炎上中のため地元を心配して戻ってきたのだった。
義光の地元は茨城県の南部に位置し、都内へ直通の電車が通っていて人口も多い。余談だが戦国時代には有力な武将の本拠地があったことで有名である。その辺りの選挙区を父親の幸房と分割する形で地盤としている。
「親父め余計なことをしてくれたな」
義光は最近の騒ぎを苦々しく思っている。高い上着をハンガーにかけ、ソファーにどかっと腰を下ろすと秘書の間壁(まかべ)に地元の様子を聞いた。
「それで地元の人たちの様子はどうだ?」
「あまりよくありません。テレビで日常的に話題となっているのがまずいですね。野党支持者を中心に親子で国会議員でいることへの批判が高まっているようです」
「そうか。とにかく支援者の人たちへいろいろと手厚くな。身を固めておけば問題ないだろう」
義光はサラブレッドであるが、それだけに選挙をよく知っていた。地元への挨拶周りも頻繁に行っているし、自身の評判は決して悪くない。そして、いざ選挙となれば対立候補に容赦なかった。秘書の間壁は何人もの手練れを使い、評判を落とすためにいろいろなことを行った。時には罠を仕掛けるようなこともあった。
野党の方も立候補しても勝ち目はなく自身の評判を落とすだけなので、適当な新人を立候補させやり過ごしている感じである。
トルルルルル
突然、選挙事務所の電話が鳴った。
「おう、義光地元に帰っておったのか、どうじゃ地元の様子は」
電話の主は幸房である。
「どうもこうもないだろ親父。テレビでのあの失言はなんだって」
「わしにだって腹が立つことはある」
「そういう問題かよ」
確かに世襲に対する野党の追及が激しくなった今日、黙ってやり過ごすことは難しいかもしれない。しかし、開き直って世間を炎上させてしまうことなどもっての他だろう。
「もう少し大人しくできない?」
「わしは大したことは言っていない。マスコミが騒いでいるだけじゃ」
そのマスコミを大人しくしてほしいのだが、使えない親父だなと義光は落胆した。
「わかった。俺は俺で地元の有権者の批判を抑えようと思ってる。でも、こんなに騒ぎになっては親父のことまで面倒見切れないから、自分のことは自分でなんとかしてくれ。絶対に親子で落選なんて恥ずかしいことだけは避けようぜ」
義光が強い口調で幸房に言うと
「あたりまえだ」
幸房も怒った口調で返した。さらに電話の向こうではなにやら幸房がガミガミ騒いでいるが、義光は無視して電話を切った。
今回の騒ぎ義光にとって不運としか言いようがない。民衆党の浜田との論戦を避ける方法はなかったのだろうか。というか朝まで生討論に出る必要はさすがにないだろう。幸房が頑固で怒りだすと言うことを聞かないのは昔からである。しかし、今まで父親とは力を合わせて何度も難局を乗り切ってきた。なんだかんだで息子は父親を尊敬しているし、父親も息子を頼りにしていたのだ。
「が、世間は親子で議員の地位を保っていることに反発するわけか。嫉妬か。それはもう宿命のようなものだな」
そういえば、初登院の日、俺を睨んできた奴がいたな。古味だったか。あいつも嫉妬から俺を睨んできたのだろう。ソファーの背もたれにさらに背をかけフゥーとため息をつく。
「こんなときは鰻だな。出前を頼んでくれ」
「わかりました」
そう言うと、間壁は地元の高級鰻店へ出前の注文を行った。
義光の地元は茨城県の南部に位置し、都内へ直通の電車が通っていて人口も多い。余談だが戦国時代には有力な武将の本拠地があったことで有名である。その辺りの選挙区を父親の幸房と分割する形で地盤としている。
「親父め余計なことをしてくれたな」
義光は最近の騒ぎを苦々しく思っている。高い上着をハンガーにかけ、ソファーにどかっと腰を下ろすと秘書の間壁(まかべ)に地元の様子を聞いた。
「それで地元の人たちの様子はどうだ?」
「あまりよくありません。テレビで日常的に話題となっているのがまずいですね。野党支持者を中心に親子で国会議員でいることへの批判が高まっているようです」
「そうか。とにかく支援者の人たちへいろいろと手厚くな。身を固めておけば問題ないだろう」
義光はサラブレッドであるが、それだけに選挙をよく知っていた。地元への挨拶周りも頻繁に行っているし、自身の評判は決して悪くない。そして、いざ選挙となれば対立候補に容赦なかった。秘書の間壁は何人もの手練れを使い、評判を落とすためにいろいろなことを行った。時には罠を仕掛けるようなこともあった。
野党の方も立候補しても勝ち目はなく自身の評判を落とすだけなので、適当な新人を立候補させやり過ごしている感じである。
トルルルルル
突然、選挙事務所の電話が鳴った。
「おう、義光地元に帰っておったのか、どうじゃ地元の様子は」
電話の主は幸房である。
「どうもこうもないだろ親父。テレビでのあの失言はなんだって」
「わしにだって腹が立つことはある」
「そういう問題かよ」
確かに世襲に対する野党の追及が激しくなった今日、黙ってやり過ごすことは難しいかもしれない。しかし、開き直って世間を炎上させてしまうことなどもっての他だろう。
「もう少し大人しくできない?」
「わしは大したことは言っていない。マスコミが騒いでいるだけじゃ」
そのマスコミを大人しくしてほしいのだが、使えない親父だなと義光は落胆した。
「わかった。俺は俺で地元の有権者の批判を抑えようと思ってる。でも、こんなに騒ぎになっては親父のことまで面倒見切れないから、自分のことは自分でなんとかしてくれ。絶対に親子で落選なんて恥ずかしいことだけは避けようぜ」
義光が強い口調で幸房に言うと
「あたりまえだ」
幸房も怒った口調で返した。さらに電話の向こうではなにやら幸房がガミガミ騒いでいるが、義光は無視して電話を切った。
今回の騒ぎ義光にとって不運としか言いようがない。民衆党の浜田との論戦を避ける方法はなかったのだろうか。というか朝まで生討論に出る必要はさすがにないだろう。幸房が頑固で怒りだすと言うことを聞かないのは昔からである。しかし、今まで父親とは力を合わせて何度も難局を乗り切ってきた。なんだかんだで息子は父親を尊敬しているし、父親も息子を頼りにしていたのだ。
「が、世間は親子で議員の地位を保っていることに反発するわけか。嫉妬か。それはもう宿命のようなものだな」
そういえば、初登院の日、俺を睨んできた奴がいたな。古味だったか。あいつも嫉妬から俺を睨んできたのだろう。ソファーの背もたれにさらに背をかけフゥーとため息をつく。
「こんなときは鰻だな。出前を頼んでくれ」
「わかりました」
そう言うと、間壁は地元の高級鰻店へ出前の注文を行った。
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