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第2巻 そして解散へ
渦川俊郎の離党
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いつも通りの料亭夕凪。今日の主は今や時の人、渦川俊郎である。料亭の外には渦川から何か一言情報を得ようと、マスコミ関係者が集まっている。もちろん渦川以外の客も大勢いるが、常に政界の舞台となってきた老舗の料亭にはいつものことなのでさして気にされていない。
さて、もともと民自党内に人望があった渦川であるが、離党のような暴挙に賛同したのはさすがに少数であった。渦川の義理堅い性格から阿相首相に宣言してからの離党となったせいもあり、渦川が呼び掛ける前から民自党内には渦川の行動に賛同しないよう警告が発せられていた。それでも3名の阿相政権に不満を持っている民自党の議員が従った。渦川を含めて4名である。
一人は同じ滋賀県に選挙区を持つ当選回数3回の会田敬一。厚生労働省出身で渦川が大臣だったときにはよく支えてくれた人物だ。しかし、それだけに渦川の降格とともに、民自党内での立場も不利なものとなっていたので不満を募らせていた。
もう一人は前澤卓、こちらも当選回数が2回の若手で埼玉県が選挙区である。前澤は1期目は大人しかったのだが、2期目に入って突如、言動が乱れるようになり民自党執行部に不評を買っていた。
3人目は田辺正勝。彼にいたっては今回初当選だ。民自党の支持に乗って当選しただけであるので、今のまま次の選挙に勝つのは苦しいと思われる。会田に誘われてなんとなくついてきてしまった。選挙区は大阪である。
そんな感じで3名皆、当選回数が1回と2回と3回なので結局集まったのは、よく言えば新進気鋭な若手、悪く言えば経験が少ない若輩だということになる。もっと中堅どころにも賛同者はいたのだが、離党してまで渦川に従うのかと言われると首を横に振るばかりである。3人の中で辛うじてまともで、次も自分の力で当選できるのは会田くらいだろう。
料亭夕凪のVIPルームにその3名が揃ったところで渦川が口を開いた。
「東南アジアの国でクーデターがあっただろ」
去年、東南アジアのある国で軍主導によるクーデターが起こり、汚職をした首相を追い出し軍政を敷いている。
「自分たちがやろうとしているのはそれと同じだ」
「軍のクーデターと同じですか?」
そんな大規模な反乱なのか?とかそんなに暴力的なことなのか?など渦川以外の3名がそれぞれに疑問を浮かべた顔をする。3名がちょっと訝し気な感じになったので、渦川も言葉を考える。
「俺が同じだと言ったのは規模のことじゃない。政権の行いを正すのに手段を選ばなかったという点だ」
渦川がちょっと苦しそうなので会田がフォローを入れた。
「確かに離党というのは最終手段と言っても過言ではないかもしれません。しかし、私はもともと渦川先生についていくと決めていました」
「そもそも今の阿相政権はなんだ。外には弱腰で、内にはごまかしばかりだ」
前澤が叫ぶ。
「その通りだ。結局やっていることは今までの利権を守ることと、その分配の調整だけだ。だが、そこで甘い汁を吸おうとする輩が多いから、世論に支持されたいない割には政権は堅固だ」
渦川がそう言うと3名は押し黙る。もともと民自党の公認候補であったから指示したという有権者がほとんどだろう。民自党候補でなくなって有権者が支持してくれるだろうか。飛び出したのは早計にだったかもしれないがもう後には引けない。第一、自分達を端に追いやった民自党がこの先もバックアップしてくれるとは限らないのだから。
「次の選挙ではこの4名が中心となって政党を立ち上げる。そして、今一緒に戦ってくれる仲間を集めている。少なくとも10名ぐらいは立候補できる予定だ」
「おぉ10名」
会田の顔が少し明るくなる。
「それぐらい集まれば一風吹かせられますね」
田辺が初めて口を開く。
「選挙はまだ先だと思うが、世間にはかなり解散風が吹いている。いつ解散があってもいいように、それぞれ準備を進めておいて欲しい」
そう言うと渦川はビールの入ったグラスを上に掲げる。3名もそれを真似た。
「うっずかわ、うっずかわ」
たった3名の大合唱であるが料亭の外まで聞こえている。居合わせた客も声の方を向く。この狂気じみた感じは確かにクーデターのそれに近いかもしれない。
次の日、スポーツ誌に「渦川立つ」の見出しが躍る中、渦川を筆頭とする4名の議員が民自党に離党届を提出した。
さて、もともと民自党内に人望があった渦川であるが、離党のような暴挙に賛同したのはさすがに少数であった。渦川の義理堅い性格から阿相首相に宣言してからの離党となったせいもあり、渦川が呼び掛ける前から民自党内には渦川の行動に賛同しないよう警告が発せられていた。それでも3名の阿相政権に不満を持っている民自党の議員が従った。渦川を含めて4名である。
一人は同じ滋賀県に選挙区を持つ当選回数3回の会田敬一。厚生労働省出身で渦川が大臣だったときにはよく支えてくれた人物だ。しかし、それだけに渦川の降格とともに、民自党内での立場も不利なものとなっていたので不満を募らせていた。
もう一人は前澤卓、こちらも当選回数が2回の若手で埼玉県が選挙区である。前澤は1期目は大人しかったのだが、2期目に入って突如、言動が乱れるようになり民自党執行部に不評を買っていた。
3人目は田辺正勝。彼にいたっては今回初当選だ。民自党の支持に乗って当選しただけであるので、今のまま次の選挙に勝つのは苦しいと思われる。会田に誘われてなんとなくついてきてしまった。選挙区は大阪である。
そんな感じで3名皆、当選回数が1回と2回と3回なので結局集まったのは、よく言えば新進気鋭な若手、悪く言えば経験が少ない若輩だということになる。もっと中堅どころにも賛同者はいたのだが、離党してまで渦川に従うのかと言われると首を横に振るばかりである。3人の中で辛うじてまともで、次も自分の力で当選できるのは会田くらいだろう。
料亭夕凪のVIPルームにその3名が揃ったところで渦川が口を開いた。
「東南アジアの国でクーデターがあっただろ」
去年、東南アジアのある国で軍主導によるクーデターが起こり、汚職をした首相を追い出し軍政を敷いている。
「自分たちがやろうとしているのはそれと同じだ」
「軍のクーデターと同じですか?」
そんな大規模な反乱なのか?とかそんなに暴力的なことなのか?など渦川以外の3名がそれぞれに疑問を浮かべた顔をする。3名がちょっと訝し気な感じになったので、渦川も言葉を考える。
「俺が同じだと言ったのは規模のことじゃない。政権の行いを正すのに手段を選ばなかったという点だ」
渦川がちょっと苦しそうなので会田がフォローを入れた。
「確かに離党というのは最終手段と言っても過言ではないかもしれません。しかし、私はもともと渦川先生についていくと決めていました」
「そもそも今の阿相政権はなんだ。外には弱腰で、内にはごまかしばかりだ」
前澤が叫ぶ。
「その通りだ。結局やっていることは今までの利権を守ることと、その分配の調整だけだ。だが、そこで甘い汁を吸おうとする輩が多いから、世論に支持されたいない割には政権は堅固だ」
渦川がそう言うと3名は押し黙る。もともと民自党の公認候補であったから指示したという有権者がほとんどだろう。民自党候補でなくなって有権者が支持してくれるだろうか。飛び出したのは早計にだったかもしれないがもう後には引けない。第一、自分達を端に追いやった民自党がこの先もバックアップしてくれるとは限らないのだから。
「次の選挙ではこの4名が中心となって政党を立ち上げる。そして、今一緒に戦ってくれる仲間を集めている。少なくとも10名ぐらいは立候補できる予定だ」
「おぉ10名」
会田の顔が少し明るくなる。
「それぐらい集まれば一風吹かせられますね」
田辺が初めて口を開く。
「選挙はまだ先だと思うが、世間にはかなり解散風が吹いている。いつ解散があってもいいように、それぞれ準備を進めておいて欲しい」
そう言うと渦川はビールの入ったグラスを上に掲げる。3名もそれを真似た。
「うっずかわ、うっずかわ」
たった3名の大合唱であるが料亭の外まで聞こえている。居合わせた客も声の方を向く。この狂気じみた感じは確かにクーデターのそれに近いかもしれない。
次の日、スポーツ誌に「渦川立つ」の見出しが躍る中、渦川を筆頭とする4名の議員が民自党に離党届を提出した。
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