会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第2巻 そして解散へ

遅れてきたホームドア

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 渦川が離党し騒ぎが大きくなり始めたころ、珍しく俺にまともな電話があった。どこでどう電話番号を調べたのか、電話の主は安藤という人で、安藤建設という輸送用機器を取り扱っている会社の社長だそうだ。

「はい。古味ですがどのようなご用件でしょうか?」
 無所属の国会議員の俺がどこかの会社に仕事を出すようなことはないし、当然リベートなどもらったことはない。

「あれですよ。あれ、古味さんって桃山鉄道に行ってホームドアの話をされたでしょ。その件です」
 どうやら輸送用機器を扱っている関係で安藤建設では、最近はホームドアの研究・開発にも着手しているらしい。
「ひどいもんですよ。うちとしても実際製造するとなると多額の費用がかかるので、ある程度見通しを立てて損をしないよう話をしておこうと思ったのですが、ホームドアの話なら国会議員の古味って人にした。うちにはいらないって断られまして・・・」
 あの時の副社長かな?あの人ならそれくらい言って追い返しそうだな。
「最近の国会議員は営業もやっているんですか?」
 安藤社長がとぼけて聞いてくる。もちろん俺は営業をかけに桃山鉄道に乗り込んだわけではなく、もう辞めてしまったが国土交通副大臣だった渦川の代理でホームドアの設置を働きかけに行ったのだ。ということを説明した。
「そうだったんですか。渦川”元”副大臣の代理だったんですか?古味さんも民自党でしたっけ?確か無所属でしたよね?」
 もう、それも一から説明しないといけないのか。。。
「ホームドアの件で電話ということですよね。私に何か聞きたいことがあるんでしょうか?」
 説明は面倒なので相手の用件の話に戻した。
「そうですね。桃山鉄道からどんな話があったのか聞きたかったのですが、どうしてホームドアの設置に消極的なのかとか、どうすれば売り込めるかとか何かヒントになるような情報はありませんか?」
 どうして俺にそこまで聞きたがるのだろうと考えている。俺はこのとき民自党の大物にせかされて安藤社長がホームドアを焦っていることを知らない。しかし、もう渦川は国土交通副大臣を辞めてしまっているし、俺一人が情報を持っていても、次の選挙もおぼつかない状態では、多分、無駄になるだけだろうと桃山鉄道の副社長にされた話を安藤社長に話すことにした。
「なるほど、桃山鉄道の車両には3つドアと4つドアがあって、車両をどちらかに合わせないとホームドアを設置できない。それでしぶっているというわけですか」
「らしいです。そう言われたことは渦川元副大臣に報告しているので、国交省の方にでも問い合わせた方がいいのではないでしょうか?」
 もっとも、渦川がその情報を省内に連携していればの話だが、辞職したような状態ではそれは望めないかもしれない。
「その問題であれば、弊社で開発したホームドアの中に対応できるものがあります。最近の政局は流動的でどうなるかわかりませんが、古味さんも一度、見に来てもらえませんか?」
 明日どうなるかわからない身分の俺でよければと言いたかったが、せっかくの好意なので見せてもらうことにした。

 その桃山鉄道の実験中のホームドアとはある私鉄の駅に設置されているらしかった。その駅の約束の場所に行くと、安藤社長が部下と一緒に俺のことを迎えた。
「私が安藤です」
 名刺を渡されたので、自分もいつ使わなくなるかわからない国会議員の名刺を返す。
「最近はどの鉄道会社も安全対策としてホームドアの検討をしているそうです。もちろんお役所からの催促もありますが。。。」
「ただそれだけに会社間の競争も激しくなっています」
 そうだったのか。その割に自分が使っていた駅ではホームドアが設置されていないのはなぜだろう。やっぱり一つ一つの駅に設置していくのは大変だということか。

「これがドア数に縛られないホームドアです」
 駅のホームに出たところで、安藤社長の指す方を見てみると、普段見ているホームドアとは違った形式のホームドアがあった。俺が普段見慣れているのは、ステンレス製で左右に開くタイプだったが、そこで見たのはドアの部分がロープになっており、上下へ昇降するものだった。
「なるほど。これならドア数が違う車両にも対応できそうですね」
 そして、桃山鉄道もいいと言うかもしれない。
「まあ、まだ実験段階ですので完全ではないですが」
 いいものを見せてくれた安藤社長に礼を言うと来た電車に乗って、その駅を後にした。

 電車の中で揺られながら考える。安藤社長が見せてくれた、上下へ昇降させるホームドアというのは、なかなかいいアイデアだと思う。もし、渦川が副大臣のままでいてくれたなら桃山鉄道の話を大きく進めることができたかもしれない。そう考えると、多少なりとも渦川の辞任をざまあみろと思って見ていた自分の心を後悔した。
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