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第2巻 そして解散へ
[永田町戦国絵馬]肥前の国の一揆
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「注進!注進!」
早馬が元春のいる御所に駆け込む。どうやら肥前国の守護がよこしたもののようだ。
「肥前の国の一揆。思いのほか激しく早急に手を打たなければ大変なことになります」
早馬を受け、寝所に駆け込んできた木宮の声に元春ははっと目を覚ます。ふと気がつくと身体はびっしょり汗で濡れていた。幼い頃大名の渦川に預けた娘の順子の夢を見たのであった。娘の夢でうなされるなど自分も老いたなと思ったが、今は目の前の危機に対処しなければならない。
「不定の輩は今の守護を追い出し、水本上親を肥前の国主にしようと企てているよし。同様の動きは他の地方にも広まりつつあります。」
「浪人と農民ごときになんたるざまだ。狭間はまだ手を打ってないのか」
もともと肥前は都より遠い僻地。逆らわなければよいと適当な人物しか配置していなかったのだが、そのつけがここにきて回ってきたようだ。
今はまだ真夜中であったが狭間はたたき起こされすぐに将軍元春の寝所に向かった。
「一揆の勢い思いのほか強く、何人か人物を考えましたが今だ結論には至らぬありさま」
狭間は大きく頭を垂れる。
「もうよい。そなたらで早う決めて、早う討伐に向かわせよ」
側近達の体たらくに元春は諦め顔で再び寝所に引きこもってしまった。
「狭間よ。この者ではどうだろう」
木宮が立石と書かれた札を狭間に渡す。失敗したときのことを考えると元春に自信をもって勧めれるわけではなかったが、立石は家柄もよく高い官位にあり、地方の統治に実績がある一門の武将であった。普通に考えれば十分な人選であろう。
「はっ十分でございます」
狭間は早速早馬を飛ばし、一揆討伐の命を下したのであった。
さて、ここは上親の陣営。農民が勝手に集まった烏合の衆は、この後どうするかなど決めることはできない。とりあえず城の米蔵でも襲おうかと騒いでいると大規模な討伐軍が編成されたと農民が一人駆け込んできた。
「誰や。誰が来よった」
さすがにこのままほっておかれるとは上親も考えていない。農民たちに担がれ、ここまで勢いで出てきてしまったが、担ぎあげる農民たちの熱気に引いては自分がどうにかされそうだという危機感がある。
上親達の討伐に向かってくるのは立石健一という一門の武将らしい。農民たちの間でもぽつぽつと名前を知っているものが出てくる。だが、戦などしたことのない農民達にはそれでも恐れるに十分であった。
「だめだ勝てっこないよ」
不安が不安を呼びそれぞれの心の中で大きくなってくる。一人が叫びだすと、つられるように大勢が騒ぎ出した。
「ええい。騒ぐな。騒ぐな」
「わいに任せ」
「まっ任せって。上親さんも戦ったことないでしょう」
勝手に担ぎ上げておいて農民たちも無責任なものだ。だが、ここで下手に引いては自分の首を差し出して許しを請おうとするものも現れるかもしれない。
「わいは、京に行ったことがある」
農民たちの視線が集まる。
「そこでわいは京の遊んでばかりの兵たちに一喝入れったったことがある。あいつらわいの剣幕に尻尾を巻いて逃げていきよったんや」
「ええっそれはすげえ」
上親は本当に都に行ったことがあったが、実は御所に入り込もうとしてたたき出されただけであった。
「そんなんやから安心せい。わいが先頭に立って戦えば、都の弱っちい兵どもなど雑魚当然や」
上親のはったりがきいたのか、農民たちが落ち着きを取り戻す。
「そうだよな。俺たちだって覚悟して旗揚げしたんだ。一戦して都の奴らをあっと言わせてやろう」
そう言うと農民たちが勝鬨を上げながら上親を胴上げしだした。
「こっこの勢いや。この勢いさえあれば天下にわいらの力を示すことができるんや」
早馬が元春のいる御所に駆け込む。どうやら肥前国の守護がよこしたもののようだ。
「肥前の国の一揆。思いのほか激しく早急に手を打たなければ大変なことになります」
早馬を受け、寝所に駆け込んできた木宮の声に元春ははっと目を覚ます。ふと気がつくと身体はびっしょり汗で濡れていた。幼い頃大名の渦川に預けた娘の順子の夢を見たのであった。娘の夢でうなされるなど自分も老いたなと思ったが、今は目の前の危機に対処しなければならない。
「不定の輩は今の守護を追い出し、水本上親を肥前の国主にしようと企てているよし。同様の動きは他の地方にも広まりつつあります。」
「浪人と農民ごときになんたるざまだ。狭間はまだ手を打ってないのか」
もともと肥前は都より遠い僻地。逆らわなければよいと適当な人物しか配置していなかったのだが、そのつけがここにきて回ってきたようだ。
今はまだ真夜中であったが狭間はたたき起こされすぐに将軍元春の寝所に向かった。
「一揆の勢い思いのほか強く、何人か人物を考えましたが今だ結論には至らぬありさま」
狭間は大きく頭を垂れる。
「もうよい。そなたらで早う決めて、早う討伐に向かわせよ」
側近達の体たらくに元春は諦め顔で再び寝所に引きこもってしまった。
「狭間よ。この者ではどうだろう」
木宮が立石と書かれた札を狭間に渡す。失敗したときのことを考えると元春に自信をもって勧めれるわけではなかったが、立石は家柄もよく高い官位にあり、地方の統治に実績がある一門の武将であった。普通に考えれば十分な人選であろう。
「はっ十分でございます」
狭間は早速早馬を飛ばし、一揆討伐の命を下したのであった。
さて、ここは上親の陣営。農民が勝手に集まった烏合の衆は、この後どうするかなど決めることはできない。とりあえず城の米蔵でも襲おうかと騒いでいると大規模な討伐軍が編成されたと農民が一人駆け込んできた。
「誰や。誰が来よった」
さすがにこのままほっておかれるとは上親も考えていない。農民たちに担がれ、ここまで勢いで出てきてしまったが、担ぎあげる農民たちの熱気に引いては自分がどうにかされそうだという危機感がある。
上親達の討伐に向かってくるのは立石健一という一門の武将らしい。農民たちの間でもぽつぽつと名前を知っているものが出てくる。だが、戦などしたことのない農民達にはそれでも恐れるに十分であった。
「だめだ勝てっこないよ」
不安が不安を呼びそれぞれの心の中で大きくなってくる。一人が叫びだすと、つられるように大勢が騒ぎ出した。
「ええい。騒ぐな。騒ぐな」
「わいに任せ」
「まっ任せって。上親さんも戦ったことないでしょう」
勝手に担ぎ上げておいて農民たちも無責任なものだ。だが、ここで下手に引いては自分の首を差し出して許しを請おうとするものも現れるかもしれない。
「わいは、京に行ったことがある」
農民たちの視線が集まる。
「そこでわいは京の遊んでばかりの兵たちに一喝入れったったことがある。あいつらわいの剣幕に尻尾を巻いて逃げていきよったんや」
「ええっそれはすげえ」
上親は本当に都に行ったことがあったが、実は御所に入り込もうとしてたたき出されただけであった。
「そんなんやから安心せい。わいが先頭に立って戦えば、都の弱っちい兵どもなど雑魚当然や」
上親のはったりがきいたのか、農民たちが落ち着きを取り戻す。
「そうだよな。俺たちだって覚悟して旗揚げしたんだ。一戦して都の奴らをあっと言わせてやろう」
そう言うと農民たちが勝鬨を上げながら上親を胴上げしだした。
「こっこの勢いや。この勢いさえあれば天下にわいらの力を示すことができるんや」
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