71 / 94
第2巻 そして解散へ
[永田町戦国絵馬]風雲児古味良一①
しおりを挟む
さてここは下総の国の片田舎。漁師が大勢で網を引いている。今日は大漁だったらしくみな大声ではしゃいでいる。
そんな様子をじっと見ている若者がいた。
「良一。お前ももういい年なんだ、少しは漁の仕方でも覚えたらどうだ」
そう言って父親らしい男は様子を見ていたが、いっこうに漁に出る気配はない。ただ海を見ながらどこで拾ったのか兵法書などを読んでいた。
「親父おれに兵がいたら城の一つぐらいと取れると思うか?」
と言ったか言わないうちにモリが良一の身体を横切り壁に突き刺さった。とっさに横にずれなかったら、串刺しになっていたかもしれない。
「これくらいで死ぬおめえが城取りなんてできるわけがあるまい。少しは妹の恵を見習え。この無駄飯ぐらいが」
次の日。父親が今日こそ漁に連れて行くと良一の寝床をひっくり返したところ布団の中身は枕と着物で作った身代わり人形であった。
「どこに行き負ったあの不良は」
こんどは容赦なくモリが人形を突き刺し床まで貫いた。
古味は引き留める下の妹の由香に別れを告げ家出をしてしまったのだ。
さてと言うも取りあえず家を飛び出した良一だが、この先の当てがあるわけでもない。適当な宿に泊まりながらどうするか考えていると、隣の部屋に顔を編み笠で隠した女が入って行くのが見えた。顔を隠してはいたが、ふと少し見えた女の顔がどう見てもそこらの町娘とは違う。もしかしたらどこかの貴婦人かと顔を確かめようと部屋を覗いたとたん投げ飛ばされた。
「あっ」
「どこの手のものか」
腕は完全に締め付けられ身動きは取れない。なんとか誤解を解こうと自分は漁師のせがれだとか、必死に説明する。
「それならばもう行きなさい。次はありませぬぞ」
そう言われたがどうしても気になって仕方がない良一は懲りもせず、次の日も部屋を覗いてみるとすでに女は出立した後であった。自分が寝ていて気付かなかったところを見ると、朝日が昇る前に出立したに違いないと少し部屋の中をうろうろしていると、あの女のものらしい手紙が落ちていた。なんの手紙かわからないが、差出人の名前に渦川俊郎と書いてあった。
どうやらあの女はどこかの武家の密使かなんかだったのかもしれない。こんなものうっかり落とすなんてなんてそそっかしいんだと思ったが、まだ近くにいるかもしれないので遠くに行ってしまう前に急いで追いかけることにした。
宿の主が彼女の行き先を知らないか尋ねてみると、あの山道を今朝方歩いて行ったらしい。俺は息も切れ切れに走って追いかけて行った。
しばらく山道を進んでいくと向こうからなにやら争う声が聞こえる。
「お嬢さんそんなに急いでどこに行くんだい。身ぐるみ置いて行ってもらおうか」
「山賊ごときが手を出したら容赦しませんよ」
「へっへっへ。そうは行かないんだ。なんと言ってもあんたはあの渦川の密使だからな」
「どうしてそれを・・・」
そういうと男数人が一斉に襲い掛かった。だが、その女は忍者なのかすごい身のこなしで男どもの攻撃をかわす。またたくまに2、3人倒される。
「この野郎」
怒った子分の一人がめちゃくちゃに獲物を振り回し襲い掛かる。女はかわしはしたが足元を取られバランスを崩す。
「あっ」
その隙をついてすかさず身体を抑え込もうとするが、何やら大きな声を上げながら向かってくるものがいる。良一であった。
「なんだおまえ」
びっくりして顔を良一に向けたとたん、女の持っていたクナイが男どもに突き刺さる。
「うおっ」
それと同時に女は逃げ出し、俺も女を追いかけて行った。
「はあはあはあ」
山道を抜けたところに丁度川があったのでもう襲ってこないだろうと二人で休憩を取ることにした。
「助けてくれたことには感謝します。しかし、どうして追ってきたのですか?」
「これっ」
俺は彼女が部屋に忘れていた手紙を渡す。
「あっ」
野党に取られないよう肌身離さずいたはずの手紙がないことに気が付いた。
「ありがとうございます」
今度は彼女も素直にお礼を言う。
いやっまさか女忍者とはな。俺は行く当てもない身の上なことを告げ彼女についていくことにした。
そんな様子をじっと見ている若者がいた。
「良一。お前ももういい年なんだ、少しは漁の仕方でも覚えたらどうだ」
そう言って父親らしい男は様子を見ていたが、いっこうに漁に出る気配はない。ただ海を見ながらどこで拾ったのか兵法書などを読んでいた。
「親父おれに兵がいたら城の一つぐらいと取れると思うか?」
と言ったか言わないうちにモリが良一の身体を横切り壁に突き刺さった。とっさに横にずれなかったら、串刺しになっていたかもしれない。
「これくらいで死ぬおめえが城取りなんてできるわけがあるまい。少しは妹の恵を見習え。この無駄飯ぐらいが」
次の日。父親が今日こそ漁に連れて行くと良一の寝床をひっくり返したところ布団の中身は枕と着物で作った身代わり人形であった。
「どこに行き負ったあの不良は」
こんどは容赦なくモリが人形を突き刺し床まで貫いた。
古味は引き留める下の妹の由香に別れを告げ家出をしてしまったのだ。
さてと言うも取りあえず家を飛び出した良一だが、この先の当てがあるわけでもない。適当な宿に泊まりながらどうするか考えていると、隣の部屋に顔を編み笠で隠した女が入って行くのが見えた。顔を隠してはいたが、ふと少し見えた女の顔がどう見てもそこらの町娘とは違う。もしかしたらどこかの貴婦人かと顔を確かめようと部屋を覗いたとたん投げ飛ばされた。
「あっ」
「どこの手のものか」
腕は完全に締め付けられ身動きは取れない。なんとか誤解を解こうと自分は漁師のせがれだとか、必死に説明する。
「それならばもう行きなさい。次はありませぬぞ」
そう言われたがどうしても気になって仕方がない良一は懲りもせず、次の日も部屋を覗いてみるとすでに女は出立した後であった。自分が寝ていて気付かなかったところを見ると、朝日が昇る前に出立したに違いないと少し部屋の中をうろうろしていると、あの女のものらしい手紙が落ちていた。なんの手紙かわからないが、差出人の名前に渦川俊郎と書いてあった。
どうやらあの女はどこかの武家の密使かなんかだったのかもしれない。こんなものうっかり落とすなんてなんてそそっかしいんだと思ったが、まだ近くにいるかもしれないので遠くに行ってしまう前に急いで追いかけることにした。
宿の主が彼女の行き先を知らないか尋ねてみると、あの山道を今朝方歩いて行ったらしい。俺は息も切れ切れに走って追いかけて行った。
しばらく山道を進んでいくと向こうからなにやら争う声が聞こえる。
「お嬢さんそんなに急いでどこに行くんだい。身ぐるみ置いて行ってもらおうか」
「山賊ごときが手を出したら容赦しませんよ」
「へっへっへ。そうは行かないんだ。なんと言ってもあんたはあの渦川の密使だからな」
「どうしてそれを・・・」
そういうと男数人が一斉に襲い掛かった。だが、その女は忍者なのかすごい身のこなしで男どもの攻撃をかわす。またたくまに2、3人倒される。
「この野郎」
怒った子分の一人がめちゃくちゃに獲物を振り回し襲い掛かる。女はかわしはしたが足元を取られバランスを崩す。
「あっ」
その隙をついてすかさず身体を抑え込もうとするが、何やら大きな声を上げながら向かってくるものがいる。良一であった。
「なんだおまえ」
びっくりして顔を良一に向けたとたん、女の持っていたクナイが男どもに突き刺さる。
「うおっ」
それと同時に女は逃げ出し、俺も女を追いかけて行った。
「はあはあはあ」
山道を抜けたところに丁度川があったのでもう襲ってこないだろうと二人で休憩を取ることにした。
「助けてくれたことには感謝します。しかし、どうして追ってきたのですか?」
「これっ」
俺は彼女が部屋に忘れていた手紙を渡す。
「あっ」
野党に取られないよう肌身離さずいたはずの手紙がないことに気が付いた。
「ありがとうございます」
今度は彼女も素直にお礼を言う。
いやっまさか女忍者とはな。俺は行く当てもない身の上なことを告げ彼女についていくことにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密
まさき
青春
俺は今、東大院生の実験対象になっている。
ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。
「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる