会社員だった俺が試しに選挙に出てみたら当選して総理大臣になってしまった件

もっちもっち

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第1巻 1期目 特別会

エクスチェンジ ルーム オブ 議員会館

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 今日は特別会最終日だ。首相指名選挙以外の議題はほぼ俺にとって興味を引く話題でなく座っているだけの状態だったと言っても過言ではなかった。
 この後、国会は1カ月の休会期間に入るので、俺にとってニート期間を除けば学生時代以来の長期休暇となる。この期間に意欲のある政治家は地元の支持者を巡り票固めや新たな支持者の開拓に努めるのだろうが、俺はどうやって過ごそうか悩んでいた。

 もう次のことは諦めてどこか遠くに旅行でも行こうか・・・

 そんなことを考えていると午前の審議が終わったころ国会の事務局の女性が声をかけてきた。

「古味先生。先日申し込んでいただいた議員会館の件ですが、部屋を確保できたので後で事務室に来ていただけますか」
 あーそうだ。自分に取って無用のものかもしれないがせっかくあるのに使わないのももったいないので申し込んでいたのだった。そのままお昼休みだったので俺は事務局に行った。

「じゃあこれが古味先生の部屋の鍵です」

 事務局の受付の女性から鍵を受け取ると言われた部屋に向かうことにした。俺が事務局を出ると、入れ替わりに渦川俊郎が事務局に入ってきた。俺からの因縁はあるが(現時点では向こうにも因縁があることは知らない)面識はないので、挨拶もせずに素通りしていった。

「ん?今の男は・・・」

 渦川の方もすれ違った相手が古味良一と気づいたようだが、用事があるのでこちらも素通りした。この時、渦川は奇しくも議員会館に関する用事で事務局に来ていたのだ。

「以前も話していましたが私の部屋が上の階過ぎるので、高齢の支持者が来たとき困るんですよ。なんとかなりませんか」
「そうは言っても空きがありませんし」
「今すれ違った若者は何の用事できてたんですか?」
 勘がいいというか、古味良一が議員会館に入館を許されて鍵を受け取っていったことを聞き出したようだ。

「だめだよあんな若造にそんないい部屋を渡しちゃ」
どこの部屋に入館するのかを聞き出すや否や大声でそう叫んで古味の後を追いかけて行った。

 事務局で渦川が自分のことを聞き出したのは知らず議員会館の俺の部屋に入った。今回、俺が自分の部屋と言い渡されたのは1階の玄関近くの部屋だった。別に来客の予定もないのでもっと奥の方でもいいとか、人通りが多くてうるさそうだなと考えていると、乱暴にドアを開けて渦川が入ってきた。

「なんなんです!」

 俺は突然の渦川の乱入に痴漢に叫ぶ女性がごとく渦川に叫んでいた。

「すまない。この部屋と私の部屋を交換してくれ」
 渦川は少し謝りながらも強引に議員会館の部屋の交換を要求してきた。

 この言葉を聞いて、俺は別にどうでもいいと思っていたこの部屋が急に惜しくなった。

 まず、有名な政治家とはいえ自己紹介もなしに人の部屋に入ってきた渦川の態度が許せなかったし、初対面の相手に部屋を交換しろとはどういうことだろう。俺は民自党の議員でもないのだ。

「お断りします」
はっきりと断ると。

「君は国会議員になったばかりでここのことを何も知らないんだな。世間一般の会社と同じで年長者には譲るものだよ」
「同じ選挙で選ばれた国会議員同士に年功序列があるとは知りませんでした」

 ーこれだから無所属の議員は・・・渦川は内心舌打ちしたが、これ以上強引に言っても譲らなそうなので説得を始めることにした。

「それならば聞くが君はこの部屋をどういう目的に使うんだね。聞くところによると無所属の君は別に後援会や支持団体があるわけでもない。来客もないのにこんな玄関に近い部屋は不要だろう」

 図星であったが俺も言い返した。
「不要も何もさっき事務局でこの部屋だって鍵を渡されたんですよ。議員同士で勝手に部屋の交換したりしていいんですか?」

「そういったことは後で私から事務局に話をしておく。とにかく私にはこの部屋が必要なんだ譲ってくれ」
多少のルール違反も自分で正当化する政治家らしいと言えばらしいのだが。。。

 さらに、理不尽な要求をしている自覚のある渦川はここからは懇願モードを織り交ぜてきた。

 まあ、これが同じ会社の中で別部署の部長の要求を突っぱねる平社員になっていたとしたらやっぱりクビだろう。相手は懇願しているわけだし、自分には言われる通りこの部屋にこだわる理由はないし、相手は大臣クラス(今回はどの省庁の大臣になったんだっけ?)の大物だ。シャクに障るがここは譲った方が敵対するよりはましかもしれない。

「じゃあ勝手にこの部屋使ってください」
俺はそう乱暴に言い放ち、鍵を渡すとこの男のいる部屋から出て行った。

 渦川は古味が出ていく様子を見て我ながら今までになく意固地になっていると感じていた。ポケットから煙草を取り出し火をつける。空き部屋に灰皿はなかったが、携帯用の灰皿を持っていた。

 とにかく勝手な言い分だが、古味に譲らせたことから渦川には少し優越感が戻っていた。それは秋屋誠二から受けた屈辱への返答でもあった。

「俺はホームドアはやらないよ。踏み切りだって事故は起こるからね」
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