数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

文字の大きさ
1 / 65
第一章『雷の可能性』

プロローグ『選んだモノ』

しおりを挟む
魔法とは、あらゆる物質、現象、奇跡を起こすものだ。
初めに『魔法』を見つけた大賢者は自然からそれを学んだと言う。
例えば、山火事。
例えば、水害。
例えば、地震。
それらから無限の魔法を生み出した。
大賢者がもたらしたそれは、世界を劇的に変え、次第にそれは世界の根幹となっていった。
それはもちろん。
5000年が経った今でも変わらない。

§

「アダム、君はもう何を選ぶか決めた?」

「まだなんだよね。フールは?」

「ボクはやっぱり炎かなぁ。風でもいいんだけど・・・」

今日は『大賢祭』と呼ばれる日。
1年に1度の『契約の日』だ。
この世の子供は全て、この日に一生をかけて極める属性を選ぶ。
もちろんそれは、僕や親友のフールも変わらない。
僕達は今年で12歳になる。
そして12と言うのは、賢者が魔法の研究を始めた年齢だと言われている。 
だから、子供たちは皆、12で魔法を選ぶ。 
選んだ魔法の属性を司る精霊と契約し、極めるための研究を始めるのだ。

そろそろ、選択の時が始まる。
この祭りでは中央の『祭壇』に今年12歳になる子供を集め、そこで精霊との契約を果たすのを見守る。
その際に、心の内で属性を念じ、選べばその属性の自分に合った精霊が契約をしてくれると言う。
契約が終われば、その属性を研究している人やギルド、機関の所へ行き、共に研究をするのだ。
魔法ではなく、剣などもあるが。

「炎かぁ。英雄と言えば!って感じだね」

「そりゃあ、憧れ、だからね」

フールの夢は『英雄』だ。
魔物や魔王、悪魔と言った人類の敵が多いご時世では、冒険者やハンターと言った『戦闘職』が非常に重宝される。 
もちろん、商人や騎士なども重宝されるが、やはり冒険者の人気はとても高い。
ハンターと言うのは簡単に言えば傭兵であり、冒険者は『組合』と呼ばれる非団体組織なのだ。
まぁ要は、雇われるか依頼されるかの違いだ。
そこまで相違はない。


「アダム・・・また、会おうね」

「うん。一旦お別れだけど、また会えるよ」  

この祭りの後、僕らはお別れになる。
研究するにしても、冒険者になるにしても、僕らは別々に生きようと決めたのだ。
お互い頂点を目指すために。
『英雄』になるために。

『さぁさぁさぁさぁ!!!契約の時は来たれり!!!将来有望な諸君!!!こちらへ!!』

始まった。
その祭りが。

「じゃあね」
「またね」

そして僕らは、祭壇へと登る──。

§

そこは、広い空間だ。
見渡す限りの空間。
地平の先は見えず、色は白の一色だが、不思議と目がチカチカするようなことは無かった。
さっきまでの喧騒は消え、ただ、静寂が僕を支配していた。
暫くそのまま見渡していると、

『汝、我が果てを見た者か?』

声が聞こえた。
腹の底が震えるような声。
地の底から。
いや、天上の上から聞こえるような声。
見上げると、そこには。

『神』が居た。

『汝、夢を見たるや此処へ?』

「・・・はい」

難しい言葉遣いだが、分からない訳では無い。
言いたいことは分かる。
夢を叶えるために、ここへ来たのか。
その答えは、決まっていた。

『我は王なり。神なり。精霊なり。汝、我に何を望むや?』

目の前の存在が言う。
とてつもなくデカい。
子供の僕から見ても、デカい。
人型ではあるが、その顔は魔法陣の書かれた布で隠れている。
白い服だ。
白い法着だ。

「僕は・・・」

僕は、何を望む?
僕は、何が望みだ?
みんなと仲良くなりたい。
みんなと強くなりたい。
・・・誰よりも、そう、誰よりも。
強く、在りたい。

『・・・汝、聞き届けたり。我が力を与えよう』

そう言った途端、僕の体が眩く輝く。
いや、激しく、だ。
バチバチと、パリパリと音がする。
これは、知っている。
これは、あの──

『我は最強の破壊。我は最高の速さ。我は最悪の輝き。汝は、その最強への道を見た者』

ブルりと震えた。
僕がこの世で1番初めに見た『最強』。
僕がこれまでもこれからもそれ以上を見れないであろう『最速』。

『行け。汝はもはや、敵は無し』

そうして、僕の意識は──
元の世界へ、戻っていった。

§

『彼岸の者よ。これで良いのか』

「あぁ、ありがとうゼウス」

白い、真っ白い男。
髪も、肌も、服も、雰囲気も。
しかし、その瞳には。
雷を、携えていた。

『汝の忘れ形見。興味深い』

「俺の息子だぞ?ありゃあ化けるよな!まぁ、あとはアレに任せよう。お前もついてってやれよ」

『分かっている。されど今しばらく、汝との・・・友との別れを、惜しませてくれ』

「・・・変わったなぁ、お前も」

そこはしばらく、談笑の場所。
かつての『英雄』と『精霊王』の別れの場。
そうして、英雄は。
次なる世界へ、歩んで行く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...