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第一章『雷の可能性』
プロローグ『選んだモノ』
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魔法とは、あらゆる物質、現象、奇跡を起こすものだ。
初めに『魔法』を見つけた大賢者は自然からそれを学んだと言う。
例えば、山火事。
例えば、水害。
例えば、地震。
それらから無限の魔法を生み出した。
大賢者がもたらしたそれは、世界を劇的に変え、次第にそれは世界の根幹となっていった。
それはもちろん。
5000年が経った今でも変わらない。
§
「アダム、君はもう何を選ぶか決めた?」
「まだなんだよね。フールは?」
「ボクはやっぱり炎かなぁ。風でもいいんだけど・・・」
今日は『大賢祭』と呼ばれる日。
1年に1度の『契約の日』だ。
この世の子供は全て、この日に一生をかけて極める属性を選ぶ。
もちろんそれは、僕や親友のフールも変わらない。
僕達は今年で12歳になる。
そして12と言うのは、賢者が魔法の研究を始めた年齢だと言われている。
だから、子供たちは皆、12で魔法を選ぶ。
選んだ魔法の属性を司る精霊と契約し、極めるための研究を始めるのだ。
そろそろ、選択の時が始まる。
この祭りでは中央の『祭壇』に今年12歳になる子供を集め、そこで精霊との契約を果たすのを見守る。
その際に、心の内で属性を念じ、選べばその属性の自分に合った精霊が契約をしてくれると言う。
契約が終われば、その属性を研究している人やギルド、機関の所へ行き、共に研究をするのだ。
魔法ではなく、剣などもあるが。
「炎かぁ。英雄と言えば!って感じだね」
「そりゃあ、憧れ、だからね」
フールの夢は『英雄』だ。
魔物や魔王、悪魔と言った人類の敵が多いご時世では、冒険者やハンターと言った『戦闘職』が非常に重宝される。
もちろん、商人や騎士なども重宝されるが、やはり冒険者の人気はとても高い。
ハンターと言うのは簡単に言えば傭兵であり、冒険者は『組合』と呼ばれる非団体組織なのだ。
まぁ要は、雇われるか依頼されるかの違いだ。
そこまで相違はない。
「アダム・・・また、会おうね」
「うん。一旦お別れだけど、また会えるよ」
この祭りの後、僕らはお別れになる。
研究するにしても、冒険者になるにしても、僕らは別々に生きようと決めたのだ。
お互い頂点を目指すために。
『英雄』になるために。
『さぁさぁさぁさぁ!!!契約の時は来たれり!!!将来有望な諸君!!!こちらへ!!』
始まった。
その祭りが。
「じゃあね」
「またね」
そして僕らは、祭壇へと登る──。
§
そこは、広い空間だ。
見渡す限りの空間。
地平の先は見えず、色は白の一色だが、不思議と目がチカチカするようなことは無かった。
さっきまでの喧騒は消え、ただ、静寂が僕を支配していた。
暫くそのまま見渡していると、
『汝、我が夢を見た者か?』
声が聞こえた。
腹の底が震えるような声。
地の底から。
いや、天上の上から聞こえるような声。
見上げると、そこには。
『神』が居た。
『汝、夢を見たるや此処へ?』
「・・・はい」
難しい言葉遣いだが、分からない訳では無い。
言いたいことは分かる。
夢を叶えるために、ここへ来たのか。
その答えは、決まっていた。
『我は王なり。神なり。精霊なり。汝、我に何を望むや?』
目の前の存在が言う。
とてつもなくデカい。
子供の僕から見ても、デカい。
人型ではあるが、その顔は魔法陣の書かれた布で隠れている。
白い服だ。
白い法着だ。
「僕は・・・」
僕は、何を望む?
僕は、何が望みだ?
みんなと仲良くなりたい。
みんなと強くなりたい。
・・・誰よりも、そう、誰よりも。
強く、在りたい。
『・・・汝、聞き届けたり。我が力を与えよう』
そう言った途端、僕の体が眩く輝く。
いや、激しく、だ。
バチバチと、パリパリと音がする。
これは、知っている。
これは、あの──
『我は最強の破壊。我は最高の速さ。我は最悪の輝き。汝は、その最強への道を見た者』
ブルりと震えた。
僕がこの世で1番初めに見た『最強』。
僕がこれまでもこれからもそれ以上を見れないであろう『最速』。
『行け。汝はもはや、敵は無し』
そうして、僕の意識は──
元の世界へ、戻っていった。
§
『彼岸の者よ。これで良いのか』
「あぁ、ありがとうゼウス」
白い、真っ白い男。
髪も、肌も、服も、雰囲気も。
しかし、その瞳には。
雷を、携えていた。
『汝の忘れ形見。興味深い』
「俺の息子だぞ?ありゃあ化けるよな!まぁ、あとはアレに任せよう。お前もついてってやれよ」
『分かっている。されど今しばらく、汝との・・・友との別れを、惜しませてくれ』
「・・・変わったなぁ、お前も」
そこはしばらく、談笑の場所。
かつての『英雄』と『精霊王』の別れの場。
そうして、英雄は。
次なる世界へ、歩んで行く。
初めに『魔法』を見つけた大賢者は自然からそれを学んだと言う。
例えば、山火事。
例えば、水害。
例えば、地震。
それらから無限の魔法を生み出した。
大賢者がもたらしたそれは、世界を劇的に変え、次第にそれは世界の根幹となっていった。
それはもちろん。
5000年が経った今でも変わらない。
§
「アダム、君はもう何を選ぶか決めた?」
「まだなんだよね。フールは?」
「ボクはやっぱり炎かなぁ。風でもいいんだけど・・・」
今日は『大賢祭』と呼ばれる日。
1年に1度の『契約の日』だ。
この世の子供は全て、この日に一生をかけて極める属性を選ぶ。
もちろんそれは、僕や親友のフールも変わらない。
僕達は今年で12歳になる。
そして12と言うのは、賢者が魔法の研究を始めた年齢だと言われている。
だから、子供たちは皆、12で魔法を選ぶ。
選んだ魔法の属性を司る精霊と契約し、極めるための研究を始めるのだ。
そろそろ、選択の時が始まる。
この祭りでは中央の『祭壇』に今年12歳になる子供を集め、そこで精霊との契約を果たすのを見守る。
その際に、心の内で属性を念じ、選べばその属性の自分に合った精霊が契約をしてくれると言う。
契約が終われば、その属性を研究している人やギルド、機関の所へ行き、共に研究をするのだ。
魔法ではなく、剣などもあるが。
「炎かぁ。英雄と言えば!って感じだね」
「そりゃあ、憧れ、だからね」
フールの夢は『英雄』だ。
魔物や魔王、悪魔と言った人類の敵が多いご時世では、冒険者やハンターと言った『戦闘職』が非常に重宝される。
もちろん、商人や騎士なども重宝されるが、やはり冒険者の人気はとても高い。
ハンターと言うのは簡単に言えば傭兵であり、冒険者は『組合』と呼ばれる非団体組織なのだ。
まぁ要は、雇われるか依頼されるかの違いだ。
そこまで相違はない。
「アダム・・・また、会おうね」
「うん。一旦お別れだけど、また会えるよ」
この祭りの後、僕らはお別れになる。
研究するにしても、冒険者になるにしても、僕らは別々に生きようと決めたのだ。
お互い頂点を目指すために。
『英雄』になるために。
『さぁさぁさぁさぁ!!!契約の時は来たれり!!!将来有望な諸君!!!こちらへ!!』
始まった。
その祭りが。
「じゃあね」
「またね」
そして僕らは、祭壇へと登る──。
§
そこは、広い空間だ。
見渡す限りの空間。
地平の先は見えず、色は白の一色だが、不思議と目がチカチカするようなことは無かった。
さっきまでの喧騒は消え、ただ、静寂が僕を支配していた。
暫くそのまま見渡していると、
『汝、我が夢を見た者か?』
声が聞こえた。
腹の底が震えるような声。
地の底から。
いや、天上の上から聞こえるような声。
見上げると、そこには。
『神』が居た。
『汝、夢を見たるや此処へ?』
「・・・はい」
難しい言葉遣いだが、分からない訳では無い。
言いたいことは分かる。
夢を叶えるために、ここへ来たのか。
その答えは、決まっていた。
『我は王なり。神なり。精霊なり。汝、我に何を望むや?』
目の前の存在が言う。
とてつもなくデカい。
子供の僕から見ても、デカい。
人型ではあるが、その顔は魔法陣の書かれた布で隠れている。
白い服だ。
白い法着だ。
「僕は・・・」
僕は、何を望む?
僕は、何が望みだ?
みんなと仲良くなりたい。
みんなと強くなりたい。
・・・誰よりも、そう、誰よりも。
強く、在りたい。
『・・・汝、聞き届けたり。我が力を与えよう』
そう言った途端、僕の体が眩く輝く。
いや、激しく、だ。
バチバチと、パリパリと音がする。
これは、知っている。
これは、あの──
『我は最強の破壊。我は最高の速さ。我は最悪の輝き。汝は、その最強への道を見た者』
ブルりと震えた。
僕がこの世で1番初めに見た『最強』。
僕がこれまでもこれからもそれ以上を見れないであろう『最速』。
『行け。汝はもはや、敵は無し』
そうして、僕の意識は──
元の世界へ、戻っていった。
§
『彼岸の者よ。これで良いのか』
「あぁ、ありがとうゼウス」
白い、真っ白い男。
髪も、肌も、服も、雰囲気も。
しかし、その瞳には。
雷を、携えていた。
『汝の忘れ形見。興味深い』
「俺の息子だぞ?ありゃあ化けるよな!まぁ、あとはアレに任せよう。お前もついてってやれよ」
『分かっている。されど今しばらく、汝との・・・友との別れを、惜しませてくれ』
「・・・変わったなぁ、お前も」
そこはしばらく、談笑の場所。
かつての『英雄』と『精霊王』の別れの場。
そうして、英雄は。
次なる世界へ、歩んで行く。
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