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第一章『雷の可能性』
三話『得体の知れない少年』
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「初めまして、アダムです。孤児上がりなので姓はありません。アダムと呼んでください」
「あぁ、俺はマテアだ。よろしく」
僕とマテアさんは握手を交わす。
後ろのパーティーメンバーは紹介しないようだ。
まぁ、興味無いけど。
「で、消滅した村の詳細でしたか?」
「いや、違和感やいつもと違う感じがあれば・・・と思ったのだが・・・君は自分で消滅させたと言っていたな」
ぴくりと左後ろにいる魔法使いのような男が動く。
魔眼でも発動させてるのかなぁ。
でも何も見えないと思うけど・・・
案の定、首を傾げてこちらを見ている。
「はい。何故かみんな信じてくれませんけど・・・僕がやったんですよ」
隣からまたか・・・と言うような視線がする。
アンナさんだ。
全く・・・僕がこの街に来てからの仲だけど、この人は僕を子供扱いしすぎじゃないだろうか。
・・・まぁ、子供だけどさ。
それなりとまでは行かなくても、そこそこ強いと思うよ?僕・・・。
そう見えないようにしてるけども。
「どうやったか聞いてもいいかい?」
魔法使いのような男が言う。
物腰が柔らかい。
好印象だ。
「雷魔法の落雷で──」
「馬鹿な!そんなわけが無い!!」
そうして声を上げたのは、紅の刃の面々でもなく、さらに後ろで体を縮こませていた男だった。
「あれは・・・!あれは落雷の威力ではなかった・・・!数百メートル離れた俺たちにもその衝撃が伝わったんだ・・・!雷潰しでもなければ・・・!」
「それこそありえません。彼からは魔力を感じない」
「俺は見たんだ!!そいつがアレをやったのを!!」
・・・うーん。
責められているのか褒められているのか貶されているのかわからないな。
でも落雷だよ?あれ。
てゆーか雷魔法に詳しいなこの人。
そこそこ魔法オタクっぽいぞ。
間違ってるけど。
「まぁ、はい。使った魔法は落雷ですが、その通りです」
「・・・そうか」
あまり信じてないな・・・。
まぁいいけど。
凡その場所を教えてから僕は解放された。
なぜ、僕の魔力が見えないのか。
それは単純に、この指輪と首輪が原因だ。
僕の武器はこの拳。
そして手甲だ。
今は指輪に擬態している。
そして、この首輪。
魔力を隠す能力がある。
僕がダンジョンで新層を見つけた時にあった宝物庫に入ってたものだ。
その時の功績でレベル上がったんだよなあ。
指輪・・・というか手甲もその時に見つけたもので、この手甲には僕の精霊が宿っている。
魔具、と言うより、神具に近かった。
『ゼウス』
それが、僕の精霊だ。
§
「・・・アンナのヤツめ・・・何が跡形もなく・・・だ」
あの後少しだけ準備してから2日かけて村の跡地に向かった。
結果からいえば、確かに村は存在していなかった。
どころか。
焦げたクレーターが出来ていた。
そしてそこには、青い稲妻と魔力の残滓が。
「・・・ほんとに、あの少年がやったのかね」
魔法使いの男が言う。
見た感じではそんなことはなかった。
ただの少年。
コツコツ少しだけ強い魔物と戦ったのか・・・程度の少年。
だがそうだった。
彼は、レベル5だ。
紅い刃の最高レベルは4。
Aランクなのは『パーティー全体で』なのだ。
「・・・しかしまぁ、王都だしな。他にも、化け物はいる」
Sクラスだって2人居るのだ。
パーティーで数えればAもいくつもある。
レベル5も決して少なくない。
まだあの少年とは、決まっていない。
筈だが・・・
「・・・あの少年は一切の魔力を感じなかった。魔眼でも見てもその深淵は除けなかった」
つまり、だ。
何らかの方法で魔力を隠し、魔眼をも回避した、と。
おかしな話だ。
あの少年にそこまでの力があるとは思えない。
あの首輪はただのアクセサリーだと思ったが・・・
指輪にも何かあるのだろうか?
「・・・とりあえず報告だ。こう書いとけ」
§
『何らかの力により消滅した模様』
§
ギルドマスターは唸った。
あのパーティーはここ王都でもそこそこなの売れたパーティーだ。
それなりに信頼もある。
だからこそ、この報告は頭を悩ます種であった。
「・・・アダムが来た時は何事かと思ったが・・・まさか本当に奴が・・・?」
ここに来た時からの顔見知りであり、それなりに可愛がってきた。
成長も楽しみだったし、奴との会話もストレス解消に良かった。
だが、たまに嘘をつく時があった。
例えば、皇国の皇魔騎士団の副団長であるフールと幼なじみである、とか。
魔力がないのはこちらも把握しているのに『雷魔法』を使える、とか。
そして今回のことも、だ。
「・・・まさか、全部本当だったのか・・・?」
思い込みが激しい子だと思っていた。
しかし、実際にレベルもフールの一つ下だ。
ランクもBだ。
本当だとしてもおかしくは無い・・・
・・・しかし、だ。
それだと魔力がないことに説明がつかない。
そこは嘘をつけないのだ。
魔力測定器では奴の魔力は最低値以下だった。
「・・・何を隠している。アダム」
1人、頭を抱える。
・・・試すべき、か。
認定レベルを上げる名目で試してみるか。
過去にも何度か奴には試練を渡している。
例えば、サンダードラゴンの討伐だったり、ダンジョンの階層ボスの部位回収だったり。
そうしてレベルは5になっている。
実力は申し分ない。
奴は1人だと言っていたが、本当は仲間がいるのかもしれない。
少し気は進まないが・・・
「ヌエ。アダムを付けろ」
「・・・はっ」
どこからともなく、声が聞こえる。
そして、元々あるようでないような気配は完全に消えた。
「・・・さて、どれにしようか。怪我しなそうなのがいいなぁ」
「あぁ、俺はマテアだ。よろしく」
僕とマテアさんは握手を交わす。
後ろのパーティーメンバーは紹介しないようだ。
まぁ、興味無いけど。
「で、消滅した村の詳細でしたか?」
「いや、違和感やいつもと違う感じがあれば・・・と思ったのだが・・・君は自分で消滅させたと言っていたな」
ぴくりと左後ろにいる魔法使いのような男が動く。
魔眼でも発動させてるのかなぁ。
でも何も見えないと思うけど・・・
案の定、首を傾げてこちらを見ている。
「はい。何故かみんな信じてくれませんけど・・・僕がやったんですよ」
隣からまたか・・・と言うような視線がする。
アンナさんだ。
全く・・・僕がこの街に来てからの仲だけど、この人は僕を子供扱いしすぎじゃないだろうか。
・・・まぁ、子供だけどさ。
それなりとまでは行かなくても、そこそこ強いと思うよ?僕・・・。
そう見えないようにしてるけども。
「どうやったか聞いてもいいかい?」
魔法使いのような男が言う。
物腰が柔らかい。
好印象だ。
「雷魔法の落雷で──」
「馬鹿な!そんなわけが無い!!」
そうして声を上げたのは、紅の刃の面々でもなく、さらに後ろで体を縮こませていた男だった。
「あれは・・・!あれは落雷の威力ではなかった・・・!数百メートル離れた俺たちにもその衝撃が伝わったんだ・・・!雷潰しでもなければ・・・!」
「それこそありえません。彼からは魔力を感じない」
「俺は見たんだ!!そいつがアレをやったのを!!」
・・・うーん。
責められているのか褒められているのか貶されているのかわからないな。
でも落雷だよ?あれ。
てゆーか雷魔法に詳しいなこの人。
そこそこ魔法オタクっぽいぞ。
間違ってるけど。
「まぁ、はい。使った魔法は落雷ですが、その通りです」
「・・・そうか」
あまり信じてないな・・・。
まぁいいけど。
凡その場所を教えてから僕は解放された。
なぜ、僕の魔力が見えないのか。
それは単純に、この指輪と首輪が原因だ。
僕の武器はこの拳。
そして手甲だ。
今は指輪に擬態している。
そして、この首輪。
魔力を隠す能力がある。
僕がダンジョンで新層を見つけた時にあった宝物庫に入ってたものだ。
その時の功績でレベル上がったんだよなあ。
指輪・・・というか手甲もその時に見つけたもので、この手甲には僕の精霊が宿っている。
魔具、と言うより、神具に近かった。
『ゼウス』
それが、僕の精霊だ。
§
「・・・アンナのヤツめ・・・何が跡形もなく・・・だ」
あの後少しだけ準備してから2日かけて村の跡地に向かった。
結果からいえば、確かに村は存在していなかった。
どころか。
焦げたクレーターが出来ていた。
そしてそこには、青い稲妻と魔力の残滓が。
「・・・ほんとに、あの少年がやったのかね」
魔法使いの男が言う。
見た感じではそんなことはなかった。
ただの少年。
コツコツ少しだけ強い魔物と戦ったのか・・・程度の少年。
だがそうだった。
彼は、レベル5だ。
紅い刃の最高レベルは4。
Aランクなのは『パーティー全体で』なのだ。
「・・・しかしまぁ、王都だしな。他にも、化け物はいる」
Sクラスだって2人居るのだ。
パーティーで数えればAもいくつもある。
レベル5も決して少なくない。
まだあの少年とは、決まっていない。
筈だが・・・
「・・・あの少年は一切の魔力を感じなかった。魔眼でも見てもその深淵は除けなかった」
つまり、だ。
何らかの方法で魔力を隠し、魔眼をも回避した、と。
おかしな話だ。
あの少年にそこまでの力があるとは思えない。
あの首輪はただのアクセサリーだと思ったが・・・
指輪にも何かあるのだろうか?
「・・・とりあえず報告だ。こう書いとけ」
§
『何らかの力により消滅した模様』
§
ギルドマスターは唸った。
あのパーティーはここ王都でもそこそこなの売れたパーティーだ。
それなりに信頼もある。
だからこそ、この報告は頭を悩ます種であった。
「・・・アダムが来た時は何事かと思ったが・・・まさか本当に奴が・・・?」
ここに来た時からの顔見知りであり、それなりに可愛がってきた。
成長も楽しみだったし、奴との会話もストレス解消に良かった。
だが、たまに嘘をつく時があった。
例えば、皇国の皇魔騎士団の副団長であるフールと幼なじみである、とか。
魔力がないのはこちらも把握しているのに『雷魔法』を使える、とか。
そして今回のことも、だ。
「・・・まさか、全部本当だったのか・・・?」
思い込みが激しい子だと思っていた。
しかし、実際にレベルもフールの一つ下だ。
ランクもBだ。
本当だとしてもおかしくは無い・・・
・・・しかし、だ。
それだと魔力がないことに説明がつかない。
そこは嘘をつけないのだ。
魔力測定器では奴の魔力は最低値以下だった。
「・・・何を隠している。アダム」
1人、頭を抱える。
・・・試すべき、か。
認定レベルを上げる名目で試してみるか。
過去にも何度か奴には試練を渡している。
例えば、サンダードラゴンの討伐だったり、ダンジョンの階層ボスの部位回収だったり。
そうしてレベルは5になっている。
実力は申し分ない。
奴は1人だと言っていたが、本当は仲間がいるのかもしれない。
少し気は進まないが・・・
「ヌエ。アダムを付けろ」
「・・・はっ」
どこからともなく、声が聞こえる。
そして、元々あるようでないような気配は完全に消えた。
「・・・さて、どれにしようか。怪我しなそうなのがいいなぁ」
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