5 / 65
第一章『雷の可能性』
四話『試練』
しおりを挟む
僕は今、目の前にいる巨漢に脅されている。
パワハラと言うやつだろうか。
めちゃくちゃ睨まれてる。
僕は緊張のあまり目の前のジュースと饅頭を食べた。
うまい。
王都特産の饅頭はやっぱり美味しいなあ。
「・・・はぁ・・・・・・アダム。今回はこれだ」
ため息混じりに紙を渡される。
やはり試練か。
僕はたまーに、半年に1回くらい試練を受けさせられる。
そう。
レベルが上がるための試練だ。
そして今回の試練は・・・。
「・・・白狼の城、ですか」
「辞めるか?」
「いえ、遠いなと思って」
「・・・そうだな。遠いな」
白狼の城の最上層。
そこには白狼と呼ばれる化け物がいる。
そいつの調査、と書いてある。
なんの調査か分からないが、まぁこの人の事だ。
僕のことを贔屓してくれているのだろう。
ちなみに、白狼の城はダンジョンではない。
どちらかと言うと『跡地』だ。
「期限は・・・」
「1週間は欲しいですね」
「・・・わかった。それでいい」
「はい。ありがとうございます」
微妙そうな顔だ。
遅いかな・・・?
§
僕は冒険の準備を済ませ、門を出た。
と言っても、食料とかそれくらいだけど。
しばらく歩いてから首輪を外す。
その瞬間、身体中から稲妻が飛び出る。
これは僕の魔力が収まらず、飛び出してきているのだ。
コントロールはできるが、ずっとやっていると疲れる。
だから、この『吸魔の首輪』をしているのだ。
この首輪は魔力貯蔵庫みたいなもので、無限とは行かないが、それなりに貯めてくれる。
貯めている間は魔力が漏れ出ないから楽なのだ。
魔力がすごいことがバレたら面倒なことになるかもしれない、と言われたことがあり、これを使っているのだ。
魔力を使う時はこの中のやつを使っている。
首輪を皮袋の中にしまい、少しくすんだ黄金の靴を履く。
スレイプニルの靴と言われる速度補助と攻撃力アップの魔具だ。
これらもまた、ダンジョンで拾ったもの。
指輪を元の形にする。
両の手にある指輪は形を変え、指先は鋭く。
肘の下まで覆う。
常に青白い光を放ち、指を向ければそちらへ雷が飛ぶ。
まだ、ゼウスのように白い雷は出せない。
そこまで『理解』できていないのだと思う。
スレイプニルの靴も膝下まで覆っている。
これらの凄いところは、一切の動きを阻害しないことだ。
何もつけてない時よりも楽まである。
ギュチギュチと感触を確かめ、最後に鎖を体に巻き付ける。
これも魔具であり、これはただ、遠距離道具(仮)と言ったものだ。
伸びはしないが、魔力で自在に動く。
日常生活でもお世話になっているものだ。
これに雷を溜めて薙ぐことで広範囲攻撃にも転じることが出来る。
中々便利。
「さて、と」
『汝よ。後方の不躾な人間はどうする?』
ゼウスだ。
僕は常にゼウスと会話ができる。
けっこう仲良くなったつもりだ。
しかし、ゼウスの声は僕以外には聞こえない。
頭の中で話してるような感じだ。
「・・・いいよ。どうせ、着いて来れない」
追われるのは慣れている。
この姿だって、傍から見れば近距離戦闘職にしか見えないだろうしね。
『了承した。力を使うか?』
「警戒だけお願い」
『承わった』
雷魔法は微弱な電磁波も感知できる。
そういう僕も魔法を使わなくても感じることができるようになった。
人間が発する電磁波も感じる。
気配察知というか、気配を消してもこれはわかる。
生きてる人間なら、どこにいても分かるのだ。
だから割と、隠密に向いているのかもしれない。
「久々の遠出だ」
僕は両手に魔力を込める。
その魔力を次第に手から腕。
腕から上半身。
上半身から全身と魔力を込める。
バチバチと体を金色の雷がおおった。
よし。
「『ギア8』と。白狼の城まではー・・・2時間くらいかな」
白狼の城はここから隣国の境界線上にある。
それなりに遠い。
さて。
「お土産は何がいいかな」
出発だ。
§
ヌエと呼ばれている。
ギルドマスターの腹心として、奴隷の頃に拾われた。
それなりに良くしてもらっている。
ここまで育てて貰えたし、奴隷の地位さえ開放された。
だが、私はここまでの恩義を忘れず、仕えていた。
主も許してくれていた。
そして、今回もそう。
主からの頼みだ。
断るはずもない。
アダム少年は主のお気に入りだ。
心配するのは無理もないだろう。
さらには期待したことをそれなりにやってのけるのだ。
だから、この監視はただの過保護・・・そう思っていた。
いきなり首輪を外したと思えば、その魔力を見た瞬間に一瞬意識が飛んだ。
あれは、見たことがない。
直視するのが難しいほどの魔力だ。
遠くからでもわかるほどの強大な魔力。
だが、その奥底が一切見えない。
さらに、脈動している。
心臓のように。
生きている・・・そんな感想を抱いた。
そして皮袋から取り出した数々の防具。
いつの間にか手甲?をしている。
最後に鎖を巻き付けたと思った瞬間。
「──消えた・・・?」
バチバチと魔力が揺れた瞬間。
彼はもうそこにはいなかった。
馬鹿な──目は離していなかった。
慌てて追いかける。
目的地はわかっている。
ならば、追いかけるのみ。
だが、私にはどうしても。
追いかけるのが無駄に思えてしまった。
パワハラと言うやつだろうか。
めちゃくちゃ睨まれてる。
僕は緊張のあまり目の前のジュースと饅頭を食べた。
うまい。
王都特産の饅頭はやっぱり美味しいなあ。
「・・・はぁ・・・・・・アダム。今回はこれだ」
ため息混じりに紙を渡される。
やはり試練か。
僕はたまーに、半年に1回くらい試練を受けさせられる。
そう。
レベルが上がるための試練だ。
そして今回の試練は・・・。
「・・・白狼の城、ですか」
「辞めるか?」
「いえ、遠いなと思って」
「・・・そうだな。遠いな」
白狼の城の最上層。
そこには白狼と呼ばれる化け物がいる。
そいつの調査、と書いてある。
なんの調査か分からないが、まぁこの人の事だ。
僕のことを贔屓してくれているのだろう。
ちなみに、白狼の城はダンジョンではない。
どちらかと言うと『跡地』だ。
「期限は・・・」
「1週間は欲しいですね」
「・・・わかった。それでいい」
「はい。ありがとうございます」
微妙そうな顔だ。
遅いかな・・・?
§
僕は冒険の準備を済ませ、門を出た。
と言っても、食料とかそれくらいだけど。
しばらく歩いてから首輪を外す。
その瞬間、身体中から稲妻が飛び出る。
これは僕の魔力が収まらず、飛び出してきているのだ。
コントロールはできるが、ずっとやっていると疲れる。
だから、この『吸魔の首輪』をしているのだ。
この首輪は魔力貯蔵庫みたいなもので、無限とは行かないが、それなりに貯めてくれる。
貯めている間は魔力が漏れ出ないから楽なのだ。
魔力がすごいことがバレたら面倒なことになるかもしれない、と言われたことがあり、これを使っているのだ。
魔力を使う時はこの中のやつを使っている。
首輪を皮袋の中にしまい、少しくすんだ黄金の靴を履く。
スレイプニルの靴と言われる速度補助と攻撃力アップの魔具だ。
これらもまた、ダンジョンで拾ったもの。
指輪を元の形にする。
両の手にある指輪は形を変え、指先は鋭く。
肘の下まで覆う。
常に青白い光を放ち、指を向ければそちらへ雷が飛ぶ。
まだ、ゼウスのように白い雷は出せない。
そこまで『理解』できていないのだと思う。
スレイプニルの靴も膝下まで覆っている。
これらの凄いところは、一切の動きを阻害しないことだ。
何もつけてない時よりも楽まである。
ギュチギュチと感触を確かめ、最後に鎖を体に巻き付ける。
これも魔具であり、これはただ、遠距離道具(仮)と言ったものだ。
伸びはしないが、魔力で自在に動く。
日常生活でもお世話になっているものだ。
これに雷を溜めて薙ぐことで広範囲攻撃にも転じることが出来る。
中々便利。
「さて、と」
『汝よ。後方の不躾な人間はどうする?』
ゼウスだ。
僕は常にゼウスと会話ができる。
けっこう仲良くなったつもりだ。
しかし、ゼウスの声は僕以外には聞こえない。
頭の中で話してるような感じだ。
「・・・いいよ。どうせ、着いて来れない」
追われるのは慣れている。
この姿だって、傍から見れば近距離戦闘職にしか見えないだろうしね。
『了承した。力を使うか?』
「警戒だけお願い」
『承わった』
雷魔法は微弱な電磁波も感知できる。
そういう僕も魔法を使わなくても感じることができるようになった。
人間が発する電磁波も感じる。
気配察知というか、気配を消してもこれはわかる。
生きてる人間なら、どこにいても分かるのだ。
だから割と、隠密に向いているのかもしれない。
「久々の遠出だ」
僕は両手に魔力を込める。
その魔力を次第に手から腕。
腕から上半身。
上半身から全身と魔力を込める。
バチバチと体を金色の雷がおおった。
よし。
「『ギア8』と。白狼の城まではー・・・2時間くらいかな」
白狼の城はここから隣国の境界線上にある。
それなりに遠い。
さて。
「お土産は何がいいかな」
出発だ。
§
ヌエと呼ばれている。
ギルドマスターの腹心として、奴隷の頃に拾われた。
それなりに良くしてもらっている。
ここまで育てて貰えたし、奴隷の地位さえ開放された。
だが、私はここまでの恩義を忘れず、仕えていた。
主も許してくれていた。
そして、今回もそう。
主からの頼みだ。
断るはずもない。
アダム少年は主のお気に入りだ。
心配するのは無理もないだろう。
さらには期待したことをそれなりにやってのけるのだ。
だから、この監視はただの過保護・・・そう思っていた。
いきなり首輪を外したと思えば、その魔力を見た瞬間に一瞬意識が飛んだ。
あれは、見たことがない。
直視するのが難しいほどの魔力だ。
遠くからでもわかるほどの強大な魔力。
だが、その奥底が一切見えない。
さらに、脈動している。
心臓のように。
生きている・・・そんな感想を抱いた。
そして皮袋から取り出した数々の防具。
いつの間にか手甲?をしている。
最後に鎖を巻き付けたと思った瞬間。
「──消えた・・・?」
バチバチと魔力が揺れた瞬間。
彼はもうそこにはいなかった。
馬鹿な──目は離していなかった。
慌てて追いかける。
目的地はわかっている。
ならば、追いかけるのみ。
だが、私にはどうしても。
追いかけるのが無駄に思えてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる