数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第一章『雷の可能性』

四話『試練』

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僕は今、目の前にいる巨漢に脅されている。
パワハラと言うやつだろうか。
めちゃくちゃ睨まれてる。 
僕は緊張のあまり目の前のジュースと饅頭を食べた。
うまい。
王都特産の饅頭はやっぱり美味しいなあ。

「・・・はぁ・・・・・・アダム。今回はこれだ」

ため息混じりに紙を渡される。
やはり試練か。
僕はたまーに、半年に1回くらい試練を受けさせられる。
そう。
レベルが上がるための試練だ。
そして今回の試練は・・・。

「・・・白狼の城、ですか」

「辞めるか?」

「いえ、遠いなと思って」

「・・・そうだな。遠いな」

白狼の城の最上層。
そこには白狼と呼ばれる化け物がいる。
そいつの調査、と書いてある。
なんの調査か分からないが、まぁこの人の事だ。
僕のことを贔屓してくれているのだろう。
ちなみに、白狼の城はダンジョンではない。
どちらかと言うと『跡地』だ。

「期限は・・・」

「1週間は欲しいですね」

「・・・わかった。それでいい」

「はい。ありがとうございます」

微妙そうな顔だ。
遅いかな・・・?

§

僕は冒険の準備を済ませ、門を出た。
と言っても、食料とかそれくらいだけど。
しばらく歩いてから首輪を外す。
その瞬間、身体中から稲妻が飛び出る。
これは僕の魔力が収まらず、飛び出してきているのだ。
コントロールはできるが、ずっとやっていると疲れる。
だから、この『吸魔の首輪』をしているのだ。
この首輪は魔力貯蔵庫みたいなもので、無限とは行かないが、それなりに貯めてくれる。
貯めている間は魔力が漏れ出ないから楽なのだ。
魔力がすごいことがバレたら面倒なことになるかもしれない、と言われたことがあり、これを使っているのだ。
魔力を使う時はこの中のやつを使っている。
首輪を皮袋の中にしまい、少しくすんだ黄金の靴を履く。
スレイプニルの靴と言われる速度補助と攻撃力アップの魔具だ。
これらもまた、ダンジョンで拾ったもの。
指輪を元の形にする。
両の手にある指輪は形を変え、指先は鋭く。
肘の下まで覆う。 
常に青白い光を放ち、指を向ければそちらへ雷が飛ぶ。
まだ、ゼウスのように白い雷は出せない。
そこまで『理解』できていないのだと思う。
スレイプニルの靴も膝下まで覆っている。
これらの凄いところは、一切の動きを阻害しないことだ。
何もつけてない時よりも楽まである。
ギュチギュチと感触を確かめ、最後に鎖を体に巻き付ける。
これも魔具であり、これはただ、遠距離道具(仮)と言ったものだ。
伸びはしないが、魔力で自在に動く。
日常生活でもお世話になっているものだ。
これに雷を溜めて薙ぐことで広範囲攻撃にも転じることが出来る。
中々便利。

「さて、と」

『汝よ。後方の不躾な人間はどうする?』

ゼウスだ。
僕は常にゼウスと会話ができる。
けっこう仲良くなったつもりだ。
しかし、ゼウスの声は僕以外には聞こえない。
頭の中で話してるような感じだ。

「・・・いいよ。どうせ、着いて来れない」

追われるのは慣れている。
この姿だって、傍から見れば近距離戦闘職にしか見えないだろうしね。

『了承した。力を使うか?』

「警戒だけお願い」

『承わった』

雷魔法は微弱な電磁波も感知できる。
そういう僕も魔法を使わなくても感じることができるようになった。
人間が発する電磁波も感じる。
気配察知というか、気配を消してもこれはわかる。
生きてる人間なら、どこにいても分かるのだ。
だから割と、隠密に向いているのかもしれない。

「久々の遠出だ」

僕は両手に魔力を込める。
その魔力を次第に手から腕。
腕から上半身。
上半身から全身と魔力を込める。
バチバチと体を金色の雷がおおった。
よし。

「『ギア8』と。白狼の城まではー・・・2時間くらいかな」

白狼の城はここから隣国の境界線上にある。
それなりに遠い。
さて。

「お土産は何がいいかな」

出発だ。

§

ヌエと呼ばれている。
ギルドマスターの腹心として、奴隷の頃に拾われた。
それなりに良くしてもらっている。
ここまで育てて貰えたし、奴隷の地位さえ開放された。
だが、私はここまでの恩義を忘れず、仕えていた。
主も許してくれていた。
そして、今回もそう。
主からの頼みだ。
断るはずもない。
アダム少年は主のお気に入りだ。
心配するのは無理もないだろう。
さらには期待したことをそれなりにやってのけるのだ。
だから、この監視はただの過保護・・・そう思っていた。

いきなり首輪を外したと思えば、その魔力を見た瞬間に一瞬意識が飛んだ。
あれは、見たことがない。
直視するのが難しいほどの魔力だ。 
遠くからでもわかるほどの強大な魔力。
だが、その奥底が一切見えない。
さらに、脈動している。
心臓のように。
生きている・・・そんな感想を抱いた。
そして皮袋から取り出した数々の防具。
いつの間にか手甲?をしている。
最後に鎖を巻き付けたと思った瞬間。

「──消えた・・・?」

バチバチと魔力が揺れた瞬間。
彼はもうそこにはいなかった。
馬鹿な──目は離していなかった。
慌てて追いかける。
目的地はわかっている。
ならば、追いかけるのみ。
だが、私にはどうしても。
追いかけるのが無駄に思えてしまった。
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