数ある魔法の中から雷魔法を選んだのは間違いだったかもしれない。

最強願望者

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第一章『雷の可能性』

六話『化け物と化け物』

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僕は詰め寄った。
その名は・・・
皇魔騎士団とは!

「仲間はどうした!!副団長・・・フールは無事なのか!?」

死んだと断定した。
なぜなら、この状況だから。
それが焦りを助長させる。

「──お、落ち着いてよ。私は魔術耐性が高くて、魔法陣に巻き込まれなかっただけ。下の方でみんな戦っている・・・はず」

「・・・・・・よかった・・・」

フール。
唯一の幼なじみ。
お互いに親を知らず、お互いを友として、家族として過ごしていた。
僕の最愛で、僕の・・・。
大切な、人。

「・・・あなた、フール様の何?」

「・・・(無視)」

「うっそ!?まだ無視!?」

無事ならいい。
僕らはまだ会えない。
・・・そういう、約束なんだ。
ただの口約束だけど、それでも。
決意の現れでも、あるから。
それに、この約束を決めたのはフールだしね。
僕はそれを尊重したい。

「きゃっ・・・」

「そこで待ってればフール達も来るだろ。それに、君ならここの雑魚くらいなんともないはずだ」

「・・・ま、まぁ、そうだけど・・・」

雷で壁を作り、進行方向を塞いだ。
そして僕は、振り向かずに先へ進んだ。
何故フールがここへ・・・?
いや、それはいい。
急いで行かなければ。
鉢合わせは、したくない。

§

「白狼の城、ですか?」

法皇に跪きながら、ボクは聞いた。
何故だろうか。
確かに、ボクは強くなったし、その辺のダンジョンならば苦労はしない。
だけどそれは、パーティーあっての安心感のおかげだ。
ヒーラー、タンク、アタッカー、キャスター。
それらに加えて自分なのだ。
バランスのいいパーティーというのは、安定感があり、安心して戦えるのだ。
白狼の城は推奨レベル6。
パーティーの平均レベルは既に7だ。
平均を下げているのも、ボクだが。
今更感が否めない。

「うむ。君はよく戦っている。そこで、君の力試しとして白狼の城へ行ってきて欲しい。無事に帰れた暁には、レベルは7になる」

「願ってもいない話ですが・・・ボク1人で、でしょうか?」

「ワタシもそこまで鬼ではない。パーティーは連れて行っても良い。しかし、戦闘は君だけだ。それは、団長君もわかっているだろうがね」

横に跪いている団長に目をやる。
長く金色の髪が眩しい。
彼女はこの国で最強の存在。
ボクの何倍も強い。
だが処女だ。 
年齢は──睨まれてしまった。

「お任せ下さい。彼女は立派に果たしてくれるでしょう」

「うむ。間違っても『調査』ではないぞ」

「はっ」

一礼してから部屋を出る。
ボクに課されたのは白狼の討伐か。
・・・まぁ、何とかなるかな。
それに、こんな所で足踏みをしていられない。

ボクは英雄になるのだから。

「団長」

「みなまで言うな。大丈夫だ。君なら勝てる」

切れ長の目が少し優しげになる。
この人はボクに甘い。
それはボクが処女だからとかじゃなくて、強さに貪欲だからだ。

ボクは・・・アダムを守らなくちゃいけない。
守れるようにならなくちゃいけない。
いつか再会した時に、共に戦えるように。
誰よりも強く。ならなくちゃいけない。

「・・・出発は明日だ。少し休むといい」

「はい」

待ってて、アダム。
ボクは・・・だけは。
貴方を、裏切らないから。
もう少しだけ、待っていて。

§

『あの小娘。それなりの魔力ではあったな』

「魔法耐性が高いとか言ってたくせに、僕の魔法は効いてたみたいだね」

『汝のは我が力と同等。当たり前だ』

まぁ分かってたけどね。
僕の魔力は生きていると称してもいい。
脈動してるし、成長もする。
普通の魔力じゃない。
そしておかしなことに、雷以外の素質もある。
それはゼウスに言われた事だったけど。
まぁ今は雷だ。
これを極めるまで他のは知らない。
合成魔法とかいうのは・・・そのうち、ね。

「そろそろかな」

目の前の黒い骸骨騎士を砕いて階段を登る。
僕の体には触れられていない。
・・・まぁ、雑魚なら余裕かな。

だけど──

「ゼウス」

『わかっている。やるぞ』

登りきった先の、大きな扉。
魔力を込めれば開くものだ。
僕は魔力を込め、扉を
そして、そこには。

『来たか。忘れ形見』

大きな、狼がいた。

§

咆哮が響く。
城に。
周囲の森に。
そして、僕の魂に。
その声は遠吠えではなかった。
甲高く、細い咆哮・・・。
まるで、狐のような・・・。

「・・・・・・妖術かな」

ぴくりと、大きな体が揺れる。
・・・当たりか。
少し変だとは思っていた。
いくら長生きした狼だとして、ゼウスが諦めるほどの結界を張る狼は神よりも存在が高いことになってしまう。
だが、狐なら。
・・・目の前のように、十三尾の神狐なら。
それも成せるだろう。
妖狐という存在は知っている。
姿形を偽る異形。
しかしそれは、美しく気高い狐だった。

『よもや、一目でわかるとは。流石と言うべきか。人の子よ』

さっきまでの雑魚とは違う。
違すぎる。
さっきまでがレベル6なら、この神狐は、9にも届き得る。
この違和感・・・そうか。

「・・・ここは元々、君の物じゃないね」

『その通りだ。ここは魔王の根城であった。そして今や、我が寝床』

「・・・なるほど、住み着いた感じかな」

魔王を殺したとは言っていない。
住み着いた・・・封印された?
この結界ですら別の存在が?
有り得なくはない。
この狐の仕業でも、おかしくは無い。

『そんなことはどうでも良かろう?さぁ、やろうか。挑戦者よ』

「・・・調査のはずだったけど」

血が滾る。
ダメだ。これは。
抑えられない。
戦い・・・てぇ。

『・・・なぜ、笑う』

「楽しくて仕方ねぇんだよ」

笑みが、隠せない。
発達した犬歯をむき出して、僕は目の前の好敵手大親友を睨みつけた。

『・・・ふっ。化け物か』

「てめぇにゃ言われたくねぇよ」

化け物め。
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